「別れも愉し」 [映画]
〔1945年/日本〕
船乗りの若原雅夫と、女医の村田知英子は、
結婚して3年足らずの夫婦だったが、
若原がずっと航海に出ているため、
ここ2年、会っていない。
そんなある日、突然、若原から、
「一時帰国できそうだから、
4、5時間、家に寄る」という手紙が届いた。
心浮き立つ村田は、
その日、若原の妹・月丘夢路と一緒に、
ご馳走を作り、彼を待つが、
勤務先の病院から、
緊急の呼び出しがかかる。
患者の妊婦が急に産気づき、
難産になりそうだから、
すぐ来てほしいと・・・。
この映画、
公開されたのが、
1945年9月13日。
つまりは、戦争が終わって、
まだ1ヶ月も経っていない時の映画。
なんと、撮影中に終戦を迎えたそうで、
若原雅夫さんの役は、
軍人から船乗りに、
急遽変更されたのだそうだ。
あぁ、戦争が終わって本当に良かったなぁ。
だって、これがまだ戦争中に公開されたとしたら、
「軍人は、戦地で必死に頑張っているのだから、
銃後の女は、しっかり国を守るように」
みたいな、
変なメッセージ性の強い作品になった気がする。
それに、一時帰国を終えて、
夫が戻っていく先が、
船と、戦地とでは、
全然イメージが違う。
もちろん、船乗りも危険な仕事なんだろうけど、
戦地に戻るよりは、ずっといい。
映画の内容は、
夫婦の細やかな愛情が描かれていて素敵。
航海の途中、
4、5時間だけ、
家に帰る時間が取れたのに、
女医の妻は、
患者の出産で病院へ。
人生には、
「こんな時に限って」という出来事が、
多々あるけれど、
この映画もまさにそうで、
観ているこちらまでガックリくる。
それでも、なんとか出産を終え、
夫と妻は、
ほんの短い時間ではあるが、
温かい語らいの時間を持つことができる。
すごくいい場面。
妻が、仕事を持つか持たないかは、
その家庭の自由だけど、
この映画の場合、
仕事があって良かったなぁと思う。
夫が不在の一人の日々、
毎日を家で過ごすより、
仕事があった方が気が紛れるし、
夫も、その方が安心なのではないかと思うから。
評価 ★★★☆☆