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「四畳半物語 娼婦しの」 [映画]

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〔1966年/日本〕


しの(三田佳子)は、
待合「立花」の抱え娼婦。


しのの情夫・竜吉(露口茂)は、
しのを「立花」に売った男で、
自分は車夫になり、
せっせと客を、しののところに運んでいた。


ある日、客の一人・吉岡糺(田村高廣)が、
しのに、友禅の紙入れをくれた。
しかし、これは、元々はしのの物だった。
竜吉に取り上げられたものを、
吉岡が掏ったのだ。


それがきっかけとなって、
しのは竜吉には内緒で、
吉岡と会うようになった。
会えば会うほど、
吉岡に惹かれる心を止める事ができない
しのだったが・・・。





永井荷風の原作、
「四畳半襖の下張」の映画化。


「四畳半襖の下張」と聞くと、
原作を読んでいなくても、
猥褻裁判を思い出すかたも
多いであろう。


あらゆるエロ動画や写真が、
普通に見られる、今のような時代からすると、
きっと、この小説の性描写は、
笑っちゃうくらい、
どうってことないものではないかと想像する。


でも、勿体ないな。
そんな部分にばかり気を取られていると、
内容の素晴らしさや、
登場人物の心の機微などが、
そっちのけになってしまう。


「チャタレイ夫人」もそうだけど、
基本はちゃんとした、
物語なのに。


この映画も、
公開当時、
R-18(旧成人映画)指定だったそうだ。


三田佳子さん演じるしの、いい女だなぁ。
田村高廣さん演じる吉岡に、
寄せる思いがいい。
実は、「しの」という名前は、
彼女の本名。
源氏名は「しげ」。


ある日、しげは、
田村高廣さんに自分の本名がしのである事を教え、
これからは、そう呼んでくださいね、と。


あぁ、なんだか、分かるな。
自分の特別な人に、
源氏名や、芸名や、筆名や、ハンドルネームでなく、
本名を呼んでほしいって気持ち。
あなたは特別な人なのよ、と言いたい気持ちと、
その人の中で、特別な自分でありたいという気持ちと。


娼館で下働きしていた、
まだ少女の野川由美子さんが、
無理矢理客を取らされ、


純粋だった彼女が、
どんどん変わっていく様子も凄い。


野川さん、好きだな。
映画もいいし、
唐沢版「白い巨塔」での、
鵜飼教授夫人の役も、
強烈なイメージで残っている。
すごく骨太な女性という感じ。


評価 ★★★☆☆

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