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「馬喰一代」 [映画]

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〔1951年/日本〕


昭和5年。
北海道・北見高原に、
「北海の虎」と呼ばれる、馬喰・片山米太郎(三船敏郎)がいた。
米太郎は、馬を売った金を、
その日のうちに、博打で使い果たしてしまい、
乳飲み子の大平のミルクも買えない有り様だったが、
それでも、彼は彼なりに家族を愛していた。


そんなある日、体が弱かった女房が危篤になり、
「賭博と喧嘩だけはやめて」と言い残して死ぬ。
その言葉を胸に、
米太郎は男手一つで大平を育ててゆく。


そんな米太郎を見守るのが、
小料理屋の酌婦・ゆき(京マチ子)。
彼女は、米太郎に惚れていたが、
そんな事はおくびにも出さず、
彼を励まし続けるのだった。


小学六年生になった大平は成績優秀で、
札幌の中学に行きたいと考えるようになる。
しかし、大平を馬喰にするつもりの米太郎は、
進学に猛反対し・・・。





いい話だ。
全てのエピソードがいい。


登場した時、
博打と喧嘩が大好きだった馬喰・米太郎が、
妻の死によって、
生涯、それらをしないと誓い、守る。
その強い意志に感心する。


この映画には、
二回、大きな勝負のシーンがある。


まず一つは、
幼い息子・大平に三輪車をねだられながらも、
金がなく、
買ってやれない米太郎が、
近所の相撲大会の商品が三輪車だと知り、
出場する場面。


もう一つは、
中学に進学したい大平のために、
何とか学費を捻出するべく、
愛馬フシミを、
競馬に出場させるシーン。


フシミは、レースの直前に病気になり、
出場が危ぶまれていたのが、
なんとか回復する。


相撲も、競馬も、
あぁ、もう駄目か、
もはやこれまで・・・と思わせておいて、勝つ。
そのハラハラドキドキな演出が、
いかにも映画的な醍醐味で面白い。


それから、忘れちゃいけない、京マチ子さん演じるゆき。


ゆきはもう、それはそれは米太郎に惚れている。
けれど、鈍い米太郎は、
そんな事はつゆ知らず、
「嫁を探している。
 大平の勉強を見てやれる女がいいんだが」
などと言う。


なんて残酷な。
ゆきは、昔ながらの女で文字が読めない。
その時の京さんの表情が素晴らしい。
悲しくて、もどかしくて、
あー、米太郎の馬鹿ー!って感じ。


ゆきは、大平の学費のために、
高利貸しの六太郎(志村喬)の妾になる決心までするのだ。
素晴らしいまでの献身。
その六太郎も、
最初は嫌な奴だったけど、
意外といい人間で。
面白い映画だった。


評価 ★★★★☆





この作品で、
京マチ子さんの出演映画、100本中83本を観た事となりました。


(★は観た作品)


★化粧 (1984)
★男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (1976)
 妖婆 (1976)
★金環蝕 (1975)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
★華麗なる一族 (1974)
★玄海遊侠伝 破れかぶれ (1970)
★千羽鶴 (1969)
★小さい逃亡者 (1966)
★沈丁花 (1966)
★他人の顔 (1966)
★甘い汗 (1964)
★現代インチキ物語 ど狸 (1964)
★女系家族 (1963)
★女の一生 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★黒蜥蜴 (1962)
★釈迦 (1961)
 小太刀を使う女 (1961)
★女の勲章 (1961)
★濡れ髪牡丹 (1961)
★婚期 (1961)
★お傳地獄 (1960)
★顔 (1960)
★足にさわった女 (1960)
★三人の顔役 (1960)
★ぼんち (1960)
★流転の王妃 (1960)
★女経 (1960)
★浮草 (1959)
★鍵 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★夜の闘魚 (1959)
★女と海賊 (1959)
★細雪 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
★赤線の灯は消えず (1958)
★大阪の女 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★母 (1958)
★悲しみは女だけに (1958)
★有楽町で逢いましょう (1958)
★穴 (1957)
★夜の蝶 (1957)
★地獄花 (1957)
★女の肌 (1957)
★踊子 (1957)
★いとはん物語 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
★八月十五夜の茶屋 (1956)
★月形半平太 (1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新・平家物語 義仲をめぐる三人の女 (1956)
 新女性問答(1955)
★藤十郎の恋 (1955)
★楊貴妃 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
 春の渦巻 (1954)
 馬賊芸者 (1954)
★千姫 (1954)
★浅草の夜 (1954)
★春琴物語 (1954)
★愛染かつら (1954)
★或る女 (1954)
★地獄門 (1953)
★あに・いもうと (1953)
 黒豹 (1953)
★雨月物語 (1953)
★彼女の特ダネ (1952)
★大佛開眼 (1952)
★美女と盗賊 (1952)
★瀧の白糸 (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)
★浅草紅団 (1952)
★踊る京マチ子 歌う乙羽信子 (1952)
 恋の阿蘭蛇坂(1951)
 情炎の波止場(1951)
★馬喰一代 (1951)
★源氏物語 (1951)
 牝犬 (1951)
★自由学校 (1951)
★偽れる盛装 (1951)
 美貌の海(1950)
 復活(1950)
★火の鳥(1950)
★羅生門 (1950)
★浅草の肌 (1950)
 遙かなり母の国 (1950)
★続蛇姫道中 (1950)
★蛇姫道中 (1949)
 最後に笑う男(1949)
★痴人の愛 (1949)
 三つの真珠 (1949)
★地下街の弾痕 (1949)
★花くらべ狸御殿 (1949)
 天狗倒し(1944)
 団十郎三代 (1944)

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英ちゃん

馬喰と言えば、馬喰町(^▽^;)
by 英ちゃん (2021-02-20 01:16) 

青山実花

英ちゃんさん
コメントありがとうございます

確かに思い出しますね^^
馬喰町辺りで、
昔、馬が飼われていたのでしょうか。
by 青山実花 (2021-02-20 23:57) 

裏・市長

青山実花さんがマイヘイバリットムービーと
公言し、全バージョンを制覇した!とエラソーに
ぬかしていらっしゃった「無法松の一生」っぽい
テイストを感じますね。

しかし、この2人並んだ「濃い」絵面!!。
令和の日本映画では絶対に見られませんね!。

ちゅうか、この当時三船30代、京20代ぐらいちゃうのん?。
どんだけ老け…いえ、オトナやのん?!。

今、綾瀬はるかさん40代でも、アイドルっぽい
扱いされてますで。
こんな「濃い」ビジュアルのポスター、
イオンシネマではお目にかかれません!。

これぞ「昭和の邦画」!という感じです。

今の日本映画界に足りないのはこの「濃さ」では
ないでしょうか。これを武器にすれば世界を相手に
戦える気がするのですが…。

まぁ、ボクには無理な話です。
ボクは生まれた時から減塩しょうゆ顔と呼ばれ、
塩分を気にする庶民の味方ですから、
こんな濃いコテコテの映画には出られません。

ところで青山実花さんは、しょうゆかソースか
で分別すればどちらになるのでしょうか?。
皆さん気になるところだと思います。
ぜひ、教えてくださいませ。
by 裏・市長 (2021-03-07 01:34) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

「無法松」といい、「馬喰」といい、
昭和の男はいいですわね。

無知で、無教養、
そして、気が弱いくせに、
豪放磊落、

まるで、後期高齢者の、
裏・市長さんを見るようです。

裏・市長さんが子供だった、
80年前にはまだ、
この米太郎のような男が、
道をゴロゴロ歩いていたのでございましょう?

そして、大人になった今でも、
三船敏郎さんに憧れて、
道の真ん中を、
威張りくさって歩いているのでしょう?
老害とはこの事ですわね。


え?
裏・市長さんはしょうゆ顔なのですか?
普段から、色が黒いと書かれておりますが、
色の黒いしょうゆ顔なんですか?

黒人と黄色人種のハーフと聞いておりますが。

by 青山実花 (2022-10-05 18:05) 

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