「散り行く花」 [映画]
〔1919年/アメリカ〕
中国人青年のチェン・ハン(リチャード・バーセルメス)は、
仏教の教えを説く為、イギリスに行くが夢破れ、
今はロンドンの貧民窟で、しがない商店主をしている。
近所に住む少女ルーシー(リリアン・ギッシュ)は、
大変に愛らしい娘であったが、
家ではボクサーの父親から、
激しい暴力を受けていた。
ある日また、父親から殴られたルーシーは、
耐え切れずに逃げ出し、
ハンの家の前で倒れる。
以前からルーシーの美しさに焦がれていたハンは、
彼女を匿い、介抱する。
ところが、ルーシーがハンの家にいると知った父親の友人が、
父親に密告。
父親はハンの家に乗り込み、
ルーシーを力ずくで連れ帰る。
怒りに燃える父親から、
また殴られるルーシー。
彼女はどうなってしまうのか。
そしてハンは・・・。
D・W・グリフィス監督が、
92年も前に撮ったサイレント映画。
健気なルーシーが、
父親から理由も無く殴られる様子が、
可哀相で可哀相でたまらない。
最近やっと、家庭内暴力や子供への虐待は、
犯罪だと認識されてきたが、
92年も前では、そこまで重くは思われていなかったのだろう。
ルーシーの居所をわざわざ父親に密告する友人などは、
まるで楽しんでいるみたいだ。
父親はルーシーを殴るだけでなく、
笑えと強要する。
そんな状態で笑えるはずもないのに、
笑わなければ殴られるルーシーは、
自分の口角を指で押し上げて、
無理に笑い顔を作る。
観ていられないほど辛い。
ルーシーが小部屋に逃げ込むと、
父親は斧でドアを叩き壊して、
彼女を引きずり出そうとする。
それは、「シャイニング」でのジャック・ニコルソンの、
あの場面の原型のようで、
こちらまで恐怖で震えるような思いだ。
リチャード・バーセルメスは明らかに白人だが、
中国人でも全く違和感がなかった。
映画は彼が中国で暮らす所から始まるのだが、
そこに映る中国の街並みなどは、
本当に中国で撮影されたのだろうか。
もしそうだとしたら、
昔の中国を見る事ができる映像としても、
とても貴重な映画だと思うのだけれど。
評価 ★★★★☆
青山さんの感想だけで、胸が痛くなる内容ですが、
サイレント映画は好きなので、観てみたいです。
とても古い作品なのですね。
普通の映画にはない良さがあると思うのですが、サイレントって
もう作られなのかな・・
by yonta* (2011-12-24 00:39)
yonta*さん
子供や弱者への虐待は、
古い童話などでも無数にあるので、
良くない事との認識はあったのでしょうが、
今よりは見過ごされていたのかもしれませんね。
今サイレント映画が作られたら面白いですね。
有名なスターが表情だけで演技する。
演技力が試されるかもしれません(笑)。
by 青山実花 (2011-12-26 13:08)