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「幻の馬」 [映画]

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〔1955年/日本〕


現在、神保町シアターで上映されている映画のテーマ、
「川本三郎編 東北映画紀行」。
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八戸に住む小学生、次郎。
彼の母は幼い頃に亡くなり、
父、姉(若尾文子)、兄の4人暮らしの、
元気な男の子だ。


家は、競走馬を育てる仕事をしており、
今日、まさに仔馬が生まれようとしていた。


生まれ落ちた仔馬の名前を“タケル”に決めていた次郎は、
それを父に認められ、決定する。
名付け親になった次郎は、
タケルを殊の外、可愛がるのだった。


タケルはすくすくと成長してゆくが、
山で草を食べている最中、山火事が発生、
タケルを助けようとした父親が死んでしまう。


兄弟だけの暮らしになったある日、
タケルは東京に買われてゆく事になった。
生れた時から、競走馬になる事がタケルの運命であり、
それは仕方のない事だった。
次郎は淋しさをこらえる。


中山競馬場に出場したタケルだが、
あまりの喧騒に、山火事を思い出し、
コースを外れてしまう。
さらに厩舎の裏が火事になったショックで、
餌も食べなくなってしまった。


東京に駆けつける、姉と次郎。
タケルはダービーまでに元気を取り戻せるのか・・・。





一応、主役は若尾文子さんで、
名前も一番最初に出てくるが、
これはどう観ても、次郎とタケルの物語であろう。


次郎役の少年が元気で可愛いし、
タケルのつやつやとした毛並、
無駄のない体付きは、
馬の美しさをあらためて思い出させてくれる。


登場人物はいい人ばかり。
父親が亡くなって、
若尾さんが金に困っていると、
援助しようと申し出てくれる、次郎の友人の父。


いつもの若尾映画なら、
ここで何か交換条件を持ち出される所であろうが、
(金を出す代わりに愛人になれとか言われるのかと思って、一瞬焦った(笑))
そのような事もなく、
とにかく真っ直ぐに事が運ぶ。
今回、若尾さんは、
男女関係で問題も起こさず、
ドロドロとした人間関係もない。
若尾映画を見慣れた目には、ちょっと物足りないくらい(笑)。


山火事の場面が、
合成っぽくなく、
本当に山林が燃えているようで、
結構迫力があった。
あれはどうやって撮ったのだろう。


名前は失念してしまったが、
ある外国の映画監督が、
近所で山火事が起こった際、
これはいつか映画に使えると思い、
カメラをまわして撮り続けていた、という話を何かで読んだ事がある。


それを思い出したが、
この映画は、そんな事でもないだろうし。


評価 ★★★☆☆

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コメント 2

やましふ

通りすがりの者です。
「幻の馬」の撮影は青森県で歴史ある盛田牧場という場所で行われたのですが、火事のシーンは、燃え広がらないよう配慮の上で本当に牧場敷地内の木立を燃やしていて、放牧地にいた仔馬がその様子に驚いて転倒し、命を落としたという話が残されています。その仔馬は当時最高の血統を持っていた牝馬で、大変に惜しまれたということです。その仔馬の兄ヒカルメイジが1957年の日本ダービーを、弟のコマツヒカリが1961年の日本ダービーを勝っていますから、どれほどの馬であったでしょうか。今ならそんな大事な馬の近くで人為的に火事を起こすなど考えられませんが、そういう時代だったのですね。

ご存じかも知れませんが、この映画は大映社長の永田雅一の愛馬である「幻の馬」トキノミノルをモデルに作られました。私のような競馬ファンにとっては、当時の競馬の様子を見られるという点でも貴重な映画です。
by やましふ (2011-11-18 14:43) 

青山実花

やましふさん

ご丁寧なコメント、本当にありがとうございます。
この映画をより深く理解でき、感謝しております。

火事の場面は、やはり合成ではなかったのですね。
とてもリアルで、怖いくらいに感じられたので、
もしかしたらと思ったのです。
そんな優秀な血統の仔馬が死んでしまったのは、
本当に惜しい事ですね。
CGの無かった時代、
映画にリアリティを出す為にした事なのでしょうが。

大映の社長さんの愛馬の物語というのは、
観終わって、調べて知りました。
私は競馬の事はよく知りませんが、
たしかに当時の中山競馬場が観られる、
貴重な映像なのでしょうね。

こんな拙いブログですが、
これからも覗いてみて下さいね。
そして、私の知らない事を、
どしどし教えて下さい。


by 青山実花 (2011-11-19 20:52) 

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