「破れ傘長庵」 [映画]
〔1963年/日本〕
江戸時代。
町医者・良伯のもとで、
見習いをしている長蔵(勝新太郎)は、
悪事に関しては、
妙な小賢しさと、嗅覚を持っていた。
彼は、良伯の養女・お加代(万里昌代)を
手籠めにし、
破門を命じられるが、
逆に、多額の口止め料を強請り、
姿を消す。
数年後。
浅草で、村井長庵なる人物が医者をしていた。
この長庵こそが、長蔵であった。
彼は医師免許を持たなかったが、
界隈では、そこそこ成功している。
長庵は懇意にしている芸者が、唐木屋の主人に身請けされると知るや、
主人を殺そうと考える。
また、通りを歩いていた若夫婦の妻・りよ(藤村志保)に
一目惚れし、
彼女を自分のものにするべく、近付く。
長庵は、
りよの夫を、
唐木屋主人の殺害犯に仕立て上げることに成功。
夫は打ち首に。
やったぜ! 邪魔者を2人同時に追い払った。
この世の女は全部俺のもの・・・
これは面白かった。
勝新太郎さんの当たり役、
「座頭市」の前作品である、
「不知火検校」と似たテイスト。
「不知火検校」がお好きな方なら、
きっと楽しめると思う。
勝さんの、
悪役っぷりが最高。
彼の悪事は、
その場の衝動的なものではなく、
将棋で言えば、
三手も四手も先を読んでの行動。
かといって、
難しい事をするわけではなく、
観ているこちらは、
彼は大体何を企んでいるのか分かるので、
きたぞ、きたぞ、きたぞ、きたー!
って感じで答え合わせができて、
スッキリする(笑)。
本当なら憎いはずの長庵を、
そこまで憎めないのは、
勝さんの愛嬌のあるキャラクターのおかげかと思う。
これを、
同じ大映の田宮二郎さんが演じていたらどうだろう。
もっと、とても冷たい印象になっていたのではないかしら。
やはり「座頭市」にしても、
この映画にしても、
勝さんで良かった。
逆に、田宮さんの「白い巨塔」の財前を、
勝さんが演じていたら、
全く違う作品になっていただろうと思うし。
ラストは、勧善懲悪。
彼は、
気に入った女を、
全部手に入れてきた気になっているけれど、
女が、そういつも言いなりになると思ったら大間違いよ。
万里昌代さんも、藤村志保さんも、
カッコ良かった。
評価 ★★★★☆