SSブログ

「あのこと」 [映画]

anokoto.jpg
〔2021年/フランス〕


寮生活をしている、
女子大生のアンヌ(アナマリア・ヴァルトロメイ)は、
体調が優れず、
診察を受けた医師から、
妊娠を告げられる。


成績優秀なアンヌは、
まだまだ勉強したい事があり、
子供を産んでいる場合ではない。
彼女は、医師に堕胎してくれるよう仄めかすが、
医師は、
絶対無理だと突っぱねる。


寮の友人や、
遊び人の男友達に相談するも、
誰もが顔色を変え、
もう自分とは関わってくれるなと
言わんばかりの返答をされる。


ついに、
闇で堕胎してくれる女の情報を得たアンヌは、
そのアパートを訪ねるが・・・。





これはもう、
色々ショックすぎて、
言葉にならない。


私は、大抵の映画の、
どんな場面でも、
まぁ、観られるけれど、
痛い場面だけは本当に駄目。
あまりの痛みに、直視できなかった場面が2か所。
顔を背けて、
持っていたハンカチを握りしめて、
早く、それらの場面が終わってほしいと
時間が過ぎるのを待った。


最初、この映画の、
年代が分からなくて、
現代劇だと思っていたら、
主人公のアンヌは、
1940年生まれだとのセリフがあり、


つまり、この物語は、
1960年前後の出来事なのだと分かった。


1960年頃のフランスが、
堕胎がそれほどまでに
タブー視されていた事に驚く。


アンヌが妊娠している事を知った人々は、
一様に、同じ反応をする。
「自分は聞かなかった事にするから、
 もうその話題はしないでくれ」と。


医師たちも、反応は同じで、
「堕胎なんて、私は絶対しない。
 刑務所には入りたくないからね」と、
なんだかもう、
殺人より重い罪みたいな言い様。


もちろん、
お腹の赤ちゃんを中絶する事も、
殺人だといえば、
そうなのかもしれないけど、


あまりに厳しい罰則のせいで、
望まぬ妊娠をしてしまった女性が、
有り得ない方法で、
始末しようとしたり、
闇医者に頼ったりするのは、
本末転倒ではないかと思う。


原作は、
2022年に、
ノーベル文学賞を受賞した、
フランスの作家・アニー・エルノーさんの
自伝的小説だそうだ。


評価 ★★★★☆

nice!(134)  コメント(16) 
共通テーマ:映画