SSブログ

「くじらびと」 [映画]

kujirabito.jpg
〔2021年/日本〕


試写会で観た。


銛1本でマッコウクジラを突いて、
捕獲するという漁法が行われている、
インドネシアのレンバタ島・ラマレラ村の人々の生活を
3年に渡って撮影したドキュメンタリー。


鯨漁というだけで、
世界には一部、
目くじら立てて批難する人々がおられると
聞くけれど、
この映画を観ていると、
ラマレラ島の皆様は、
鯨を愛し、
鯨を畏れ、
鯨と共に生きていると感じられ、
無駄な殺生をしているわけじゃあるまいし、
誰に批難される事があろう、と思う。


ラマレラ島では、
農作物が育たないため、
鯨は大切な食料であり、
市場で物々交換をするためのものでもある、
命綱だ。


彼らが捕獲する鯨は、
年に10頭ほどで、
その解体作業には目を見張る。


とにかく、
鯨の体の骨以外は、何一つ無駄にはしない。
そして、体の各部位は、
「ここは乗組員」
「ここは土地の主」など、
分配する人間が全て決まっているという。
それは揉め事を起こさないための掟であり、
素晴らしい生活の知恵だと思う。


食事の前には神様に祈りを捧げ、
ありがたくいただく。
見習わないといけない部分が沢山ある。


彼らの船が、またすごい。
全ては手作りで、
村の人々が全員で、
その作業を行う。


漁の時は、
船は女人禁制だけれど、
完成した船の試運転の時は、
女も乗せてもらえる。


私も普段は、女が不当に差別されたりする世界は、
嫌だなと思っているけれど、
捕鯨の時の船に女が乗れない、というのは、
全く女性差別とは思わない。
男と女の体力は、
明らかに違うし、
映画を観ていると、
やはり捕鯨は男性がしてこそ、と感じる。


それでも、試運転の時は
女が乗れるというのが凄く好き。
これは、女を不浄のものとして、
船に乗せないのではないという、
気持ちの現れのように思える。
もしも、この先、女の子で、
「私も捕鯨がしたい」という子が現れたら、
その時は乗せてあげてほしい、とも思う。


ただ、こういった人々の生活にも、
少しずつ、
現代の考え方が入り込んできているんだな、
と思われる場面があった。


10歳ほどの少年が、
「大人になったら鯨捕りになりたい」と言ったのに対して、
両親が、ほんのかすかに微妙な表情で、
「学校に行かないと」言った場面。


100年後、この村はどうなっているのだろう。


評価 ★★★☆☆

nice!(144)  コメント(12) 
共通テーマ:映画