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「さとにきたらええやん」 [映画]

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〔2015年/日本〕


試写会で観た。


日雇い労働者の町として知られる、
大阪市西成区釜ヶ崎。
この町で38年続く、「こどもの里」。
皆から「さと」と呼ばれるこの家にカメラが入り、
その生活を撮影したドキュメンタリー。


この「さと」は、
様々な理由で家に帰れない子や、
学校帰りに遊びにくる子、
そして、親たちも悩みを相談できる、
憩いの家のような役割を果たしている。


館長の荘保共子さんは、
ここに来る人々を全て受け止め、
サポートしてくれる、みんなのお母さん。


私の究極の意見を言えば、
このような施設が全く必要がなくなるような、
全ての子供が幸せになれる社会が理想なのだけれど、
そんなのは当然綺麗事で、
有り得るはずもなく、
困っている人々の拠り所として、
「さと」はそこに存在する。


さらに、この手の映像を見る度に
子供の「今」をサポートすることも大事だけれど、
負の連鎖を断ち切る事が、
とても重要ではないかと、いつも思っていた。


兄弟でいざこざがあると、すぐ手が出てしまう、
中学生の少年・ジョウ君を、
「さと」の男性は、
厳しく叱る。


「家族が気に入らない時は殴ってもいいのだと、
君は教わったかもしれないけど、
それは大きな間違いだ。
どんな時でも、如何なる時でも、
絶対に暴力を振るってはいけない」と。
 

プロでもない私が、
余計な事を言うのは違うかもしれないけど、
こういった言い聞かせは、
とてもとても大切なのではないかと、そんな気がする。
このジョウ君だって、
大人になり、いつか結婚するかもしれない。
彼が家族を作った時は、
家族を殴る夫でなく、
家族を幸せにする夫になってほしい。


高校を卒業し、
介護施設に就職が決まったまゆみちゃんは、
お給料の入る通帳を母親に渡さない方がいいと、
荘保さんから進言される。
これもある種の連鎖だ。
どんなに頑張って働いても、
その報酬が右から左に流れてしまっては、
何の意味もないし、
空しくなった少女が転落する可能性だってある。
彼女は真面目で優しい子だ。
その優しさが仇にならないように注意する、
それも「さと」の役目なのだろう。


「さと」で起こる事の多くが、
難しい問題だし、
きっとカメラには映らない、
様々な事情もあるだろう。
いつも映画を観ると、
なんだか茶化したくなってしまう私だけれど、
この映画は茶化せなかった。
いや、製作者側や、
出てくる子供たちは、
私が思うよりずっと強いのだとは分かっているけれど。


評価 ★★★☆☆

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