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「永遠の人」 [映画]

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〔1961年/日本〕


阿蘇の農村に、
大地主の息子・小清水平兵衛(仲代達矢)が
戦地から負傷して帰ってきた。
平兵衛は、幼馴染のさだ子(高峰秀子)が
美しく成長している事に驚くが、
さだ子は、同じく幼馴染の隆(佐田啓二)と恋仲で、
隆の復員を待ちわびていると知る。


さだ子を自分のものにしたいと考えた平兵衛は、
ある日、彼女の家に押し込み、
凌辱する。
さだ子は、汚れてしまった自分の体を思い、
自殺するも死にきれず、
泣く泣く平兵衛の家に嫁ぐ。


12年後。
3人の子供を生んださだ子だったが、
平兵衛への憎しみは消えず、
家庭の中は、およそ平和とは遠い状態だった。
特に、凌辱された際にできた
長男・栄一(田村正和)を、
さだ子はどうしても愛する事ができず、
そのせいか、栄一は学校で問題ばかり起こす。


自分の出生の秘密を知った栄一は自死し、
平兵衛とさだ子の仲は、
ますます険悪になってゆく。
数年後、
隆の息子と、さだ子の娘が恋仲になり、
2人を大阪に駆け落ちさせたさだ子に、
平兵衛は怒り狂い・・・。





私は女だから、
女としての感想しか持てないけど、


この平兵衛って男は、
頭がおかしいんじゃないだろうか。


自分が凌辱した女と、
無理矢理結婚したって、
和気藹々とした、笑顔の絶えない家庭なんて
築けるわけがないのは、
最初から、分かっているではないか。


一度も自分に心を開こうとしないさだ子に苛立ち、
当り散らしたって、
全ての出来事の発端は自分。
後悔して苦しむしかない。


自分が手に入れたい女がいたら、
それなりの手順ってものがあるだろう。
当たって当たって、
それでも砕けてしまったら、
諦めるしかないのに、
大地主の息子という立場を利用して、
他人を自在に操ろうとするなど、
言語道断。


高峰秀子さん演じるさだ子の、
平兵衛に対する憎しみの強さったら、
それはもう、尋常ではないくらい。
その演技には身震いしてしまう。


そして、可哀相なのは子供たち。
こんな夫婦の間に生まれなかったら、
特に長男は、
もっと素直な、いい子になっていただろうに、
完全に親の犠牲になっている。


そして、さだ子は、
大人になった次男に、
あるショックな事を言われる。
でも私だったら、
泣いて言い返しそう。
「お前に何が分かる」って。
そんな事を言うくせに、
金の無心だけはしてくるとは、
自分勝手にもほどがある、って。


私個人としては、
さだ子の娘と、隆の息子が
駆け落ちした場面は、
さだ子の夢を子どもたちが叶えてくれたような気がして、
なんだかとっても嬉しかったのよ。
自分の夢の道具に、
子供を使ってはいけないのは分かっているけど、
この場合、別にさだ子が仕向けて
そうなったわけではないし。


ラストは多少、救われるような描き方だけれど、
それは登場人物たちが、
年を重ね、
人を許すという事でしか、
自分を救う方法が無いという事か。


評価 ★★★★☆

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コメント 12

ヤマカゼ

悲しい映画ですね。現実にも子供を虐待死させてしまうニュースもよく流れているし人間関係がそうそう上手くいくのも今の社会では難しいそうですね。
by ヤマカゼ (2019-05-08 12:36) 

mitu

田村正和さん、悲しい役をされていたのですね
古畑任三郎のイメージしかありませんでしたが(^^ゞ
by mitu (2019-05-09 10:27) 

サンフランシスコ人

仲代達矢主演の『人間の條件』.......全部をインディアナ大学で上映.....

http://cinema.indiana.edu/upcoming-films/screening/2019-spring-program-saturday-may-11-1200pm

Event

The Human Condition.

Date and time:
Sat, May 11, From 12–9:34 pm
Runtime:
9 hr 34 min
Cost:
$4
by サンフランシスコ人 (2019-05-10 01:36) 

向日葵

昔の映画なのに(だから、かな?)
壮絶ですね。。


登場人物がみんな可哀そう。。
by 向日葵 (2019-05-10 02:00) 

裏・市長

これな!田舎に行けばいくほど、
こんな風習があったらしいわ!。

もう無理やりにでも、先に手を付けたほうが勝ち!、
みたいな。周りもそれを許してたような。
それが「夜ばい」というヤツでしょう?。

昭和の時代、まだ平成初期はその名残があったらしいで!。

嫌よ嫌よも好きのうち、とか
断られても断られても、押しまくれ、
それが「男らしさ」だ!という風潮。

今でこそ、コメント欄に続けて3回連続で
書き込んだだけでストーカー扱いだもんな!。
かわいそうなオレ!!。

現・令和天皇だって皇太子時代は断られて断られて、
今なら絶対ストーカー認定されるようなことして、
嫁ゲットしたらしいで。いい時代やったな。

でも、そうやって強引に獲得した嫁でも、
自分にそっくりな子もお生まれになり、
実に絵にかいたような幸せな家庭を築いてらっしゃる。

やっぱり多少、強引であろうが半ば、人身売買・・・いや、
誘拐・・・いや、猛烈なアタックも結果よければすべて良し。

コメント欄がエロワードで埋め尽くされても、
20年後、30年後、笑い話になっていれば
よいと思いませんか?。めでたし、めでたし。
by 裏・市長 (2019-05-13 20:46) 

yonta

木下作品にフラメンコ、が印象的でした。
内なるメラメラをあらわしているのかしら。

さだ子夫婦と子どもたちを観てるのがつらくて、
お話がどこへ転がっていくのだろうと思っていたら、
大人になった次男から母へのあの一言!

私もハンマーで頭殴られたような…びっくりしました。
でもあれがこの作品のテーマというか、キモなのでしょうね。

観てしばらくすると内容忘れちゃう映画も多いですが、
この作品は強烈でした。忘れないです^^;
by yonta (2019-05-13 21:51) 

青山実花

ヤマカゼさん
コメントありがとうございます。

家族は、小さな社会ですし、
人間関係の基本なのに、
最初が上手くいかないと、駄目ですよね・・・。

by 青山実花 (2019-05-19 15:58) 

青山実花

mituさん
コメントありがとうございます。

田村正和さんは、お若い頃は、
悲しい役、情けない役、カッコ悪い役など、
今のイメージとは全然違う役をされていたようです。

by 青山実花 (2019-05-19 15:59) 

青山実花

サンフランシスコ人さん
コメントありがとうございます。

仲代達矢さんの演技は、
アメリカの方にも
よく理解していただけそうですね。

眼力が凄いですし^^

by 青山実花 (2019-05-19 15:59) 

青山実花

向日葵さん
コメントありがとうございます。

昔の映画だからでしょうね。
今の女性は、自分を凌辱した相手と結婚するなんて、
考えられませんもの。

by 青山実花 (2019-05-19 15:59) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

どうやら夜這いというのは、
ある程度、お互いの了承のもとにしていたという
説もあるようですが、

この映画の仲代達矢は、昼這いですからね。
最悪です。

裏・市長さんがストーカーかどうかは、
裏・市長さんがご判断する事ではなく、
わたくしと、コメントを読まれている世間の皆様が
判断する事でございます。

全国1,000人電話アンケートでも
実施いたしましょうか。


M子さんは、本当にお幸せなご家庭を築いておられますね。

好きでもないBONKURAと、
無理矢理結婚させられた挙句、
生まれた子供は、自分とは似ても似つかぬ3291子で、
ご挨拶もできず、
学校にも行かず、
ついには、摂食障害。

M子さんは、BONKURAを完全に避けるために、
昼夜逆転生活。
夜10時に起きて、朝10時に寝てるそうな。
お食事係の皆様が、
「全く、厨房が片付きゃしない」とブチブチわたくしに
電話してきて困っております。

あー、お幸せ、お幸せ。
可哀想。
もう解放して差し上げて。

by 青山実花 (2019-05-19 16:00) 

青山実花

yontaさん
コメントありがとうございます。

この映画の内なる炎、
大変なものでしたね。
怖ろしいようでした。

高峰さんも苦しい、
次男も苦しい、
なんかもう、解決なんてできるわけないし、
一体どうしたらいいものかと、途方に暮れちゃいましたね。

木下作品は凄いですね。
いずれ、全制覇してみたいです。

by 青山実花 (2019-05-19 16:00) 

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