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「マタギ」 [映画]

matagi.jpg
〔1982年/日本〕


マタギ(熊猟師)の関口平蔵(西村晃)は、
7年前、巨大な熊に襲われて以来、
いつかそいつを仕留めると、心に決めていたが、
そんな大きな熊がいるのかと、
半信半疑に思っている者がいるのも事実。


平蔵の家族は、
冬になると都会に出稼ぎに行く息子・岩吉(山田吾一)と、
孫の太郎(安保吉人)の3人。
太郎は厳しくも優しい平蔵が大好きだ。


平蔵の飼い犬が5匹の子供を産んだ。
犬は、マタギにとって、
なくてはならないパートナー。
5匹の中で一番体が小さい犬・シロを、
大人たちは、「使い物にならない」と見捨てたが、
太郎は特別シロを可愛がり、
勝手に訓練する。


それを見ていた平蔵は、
シロのマタギ犬としての才能に気付き、
今度熊狩りに行くときは、
シロを伴っていこうと決める。


真冬のある日、
村の娘が熊に襲われ死んだ。
「あいつだ、あいつがやったんだ」
平蔵は今度こそ巨大熊を仕留めてやると、
シロを連れて狩りに出た。
太郎は、その後ろを密かに付いてゆき・・・。





これは想像していたのと違った。
なかなか面白かった。


まず私は、
この物語を、勝手に明治時代あたりの話だろうと思い込んでいた。
なので、現代劇と知った時は、
ちょっと意外な気がして。


それから、西村晃演じるマタギの爺さんが、
もっと偏屈で、人の言う事を聞かないタイプの人間なのかと
イメージしていたけれど、
決してそのような事はなく、
孫を可愛がり、
村人との協調性もある、
真っ当な人だと分かってホッとした。
別に私がホッとしても仕方ないんだけど(笑)。


熊狩りがメインだと思っていたけれど、
それも違っていた。
主人公は平蔵というより、
孫の太郎なんじゃないかと思わせる場面も多く、
少年の成長物語でもある。


太郎は、平蔵や父の姿を見て、
自然の厳しさや、働く事の尊さを学んでゆく。


小さな犬・シロを太郎が躾けてゆく場面も、
本人は真剣だけれど、
実はとってもコミカルで笑える。
シロが、強いんだか、ヘタレなんだかよく分からず(笑)、
でもそれが可愛くて、
「頑張れ」と、思わず声を掛けたくなってしまう。


村の学校の雰囲気もいい。
ある日、太郎は、
友達3人と、理由は分からないけど、立たされている。


そんな時、窓の外に見えたのが、
出稼ぎから帰った父の姿。
すると先生は、
「荷物を持ってやれ」と、太郎に言い、
太郎は駆け出す。
クラスメイトたちも、
「ズルい」などと言う子は一人もおらず、
「当然」といった顔をしている。
雪深い東北で、
大人だけでなく、子供たちまでが、
互いの事情を理解し、助け合っている様子が見て取れる、
温かく、良い場面だった。


そして、クライマックスの、
平蔵と巨大熊との対峙。


平蔵は、
かつて自分に怪我を負わせた熊を
決して憎んではいない。
むしろ、尊敬と畏敬の念を抱いている。
だから映画が安っぽくならない。
観ている側が、動物パニック映画を期待していたとしたら、
そこは外れてしまうだろうけど、
この映画に限っては、
そんな風に作られなかった事が良かったのだと思う。


評価 ★★★★☆

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コメント 16

green_blue_sky

勝手なイメージは私もそう思います(^_^;)
そうなんだと思ってみてみたいですが、借りないと見れなさそうな映画。
動画の見放題やレンタルだと、観れるものがまだまだ少ない。
by green_blue_sky (2016-09-30 12:25) 

hatumi30331

見てないと思う。
この雨、WOWOWで、見た映画、面白かったよ。
「ヴィンセントが教えてくれた事」面白かった。

男性ストリッパーの映画・・・2作目の「マジックマイクXXL」
これは私の個人的好み。ストレス発散に!(笑)

「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」ちょと古いけど・・・・
笑いながら・・・ちょっと恐いような?これって・・・あるかも?
ウソ!?いえいえ・・・日本だって・・・・って話し。

映画は面白いね。 ハズレもあるけど、とりあえず観てる!へへ;
by hatumi30331 (2016-09-30 14:47) 

薔薇少女

>クライマックスの、
平蔵と巨大熊との対峙
老人と海 を連想してしまいます!

>太郎は、平蔵や父の姿を見て、
自然の厳しさや、働く事の尊さを学んでゆく。
自分ちが商売や農業等でもしていない限り、父親が働いてる姿を見る事は少ないですね!
イクメンとか持て囃されてるけど、ブラック企業で休みも満足に
取らせて貰えなくて、朝から夜中まで、安月給で働いている
父親(我が息子)も沢山居るんだよね!
そんな父親は家では子供の面倒も見たくとも見れないという
現実が有ります。
私の父親は80歳まで、汗みどろになって働いていました!
自分の道楽など、何一つせず、ひたすら働いて働いて、家族の団欒など
皆無でした。
終には、住み慣れた地を離れ、東北震災の1か月後に逝ってしまいました!
私はそんな父の事をずっと嫌っていました。
どうして自分の父親は汚い作業着ばかり来ているんだろうとか、
読み書きも満足に出来なかったし、恥ずかしくてなりませんでした!
所が私に息子が出来た時から、もの凄く可愛がってくれて、
それまで、まともに話す事が無かったのだけれど、孫である息子を通じて
母より話す様になりました。
最期の8年間、宮城へ行ってしまってからは、電話をしてくるのは
父からばかりでした。
父に戦争へ行った時の事、父の親の事、色々な父自身の事、
聞いて置けば良かった、もっと聞いてあげれば良かったと、
後悔するばかりです!
情けない事に、
働く事が尊く思える様になったのは、父が亡くなってからでした!
本文と反れてしまってゴメンなさい・・・
by 薔薇少女 (2016-09-30 17:26) 

向日葵

ワタクシも勝手に、時代物の偏屈爺さんのマタギの話と
決めつけていました。

こういう話なら、一度是非見てみたいものです。
by 向日葵 (2016-09-30 20:27) 

きよたん

熊に対しての畏敬の念 それでこそマタギ
良い映画なんですね
by きよたん (2016-09-30 22:29) 

裏・市長

「銀牙 流れ星銀」っぽい。
もっともこれは、話が進むごとにワンコメインに
なってゆくのだけれど。

今なら全部CGで表現できるな。
熊も犬も雪山でさえも。
それどころか西村晃さんでさえも。

それはもう「アニメ」じゃあないのか?と思ってしまうけど。
やはり実際に苦労して撮影した実景に、
CGは勝てんと思うのは昭和生まれの頭の固さか。

それよりも気になるのが、
なぜ、いま、この時期に青山さんがこの映画を
見ようと思ったのか?。

たまたまレンタル店で手に取って解説を読んで…とか、
実はクママニアとか、
マタギに転職を考えたとか。色々あるよね。
(3番目が有力)。

それを探るために、今度いっぺん
マタいで見るわ・・・。

by 裏・市長 (2016-10-01 09:36) 

青山実花

green_blue_skyさん
コメントありがとうございます

こういった映画は、
まだまだDVDがレンタル化されていないものが多く、
中々観る機会がないのですよね。
もっとどんどんDVDしてくれたらいいのにと
思います。
by 青山実花 (2016-10-01 20:43) 

青山実花

hatumi30331さん
コメントありがとうございます

「ヴィンセントが教えてくれた事」と
「マジックマイクXXL」は劇場で観ました。

「ヴィンセント~」はいい映画でしたね。
それから、「マジック~」シリーズ、
以前、私、女性ばかり10人くらいで、
広尾にあった外国人男性によるストリップに
行った事があるんですね(笑)。
それを思い出してしまうんです(馬鹿~)。

「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」は未見です。
今度観てみますね♪

by 青山実花 (2016-10-01 20:53) 

青山実花

薔薇少女さん
コメントありがとうございます

薔薇少女さんの息子さん、
私は素晴らしいと思います。
一生懸命働いている、立派な父親ですよ。

正直な意見を書かせていただけるなら、
私はイクメンという言葉にとても違和感を覚えますし、
某議員が育児休暇を取るという話の時は、
心底ゾッとしたものです。
(その後の女性問題なんてどーでもいいくらい)
子供の面倒を見るだけが、
いい父親だとは、私は全く思いません。

薔薇少女さんのお父様もご立派ですね。
80歳まで働かれるなど、なかなか出来ない事です。
若い頃は好きになれなかったお父様でも、
最期は薔薇少女さんと分かり合えたのですから、
きっと嬉しかったと思います。
素晴らしいお話ですね。

私はこの先にも、そのような時間は
決して持てないと思いますので、
とても羨ましいお話でもあります。

いつかお会いできた時、
色々お話しましょうね。

by 青山実花 (2016-10-01 21:25) 

青山実花

向日葵さん
コメントありがとうございます

やはりそう思いますよね。
偏屈爺さんの話なんじゃないかって(笑)。

機会がありましたら、
ぜひ観てほしい映画です。
by 青山実花 (2016-10-01 21:27) 

青山実花

きよたんさん
コメントありがとうございます

何らかの形で、
生き物の命を奪う職業であっても、
その生き物に対する畏敬の念は持ち続けなければいけないという
事なのでしょうね。
いい映画でした。
by 青山実花 (2016-10-01 21:30) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます

「銀牙 流れ星銀」はタイトルを聞いた事があるくらいです。
犬が主人公のお話なのでしょうか。

確かに「ジャングルブック」の例にあるように、
今や、景色も、動物もCGで描くことは簡単そうですね。
でも、例えば、
シロの訓練風景などは、
本物の犬だからこその味わいがありますよね。
私も頭の固い人間です(笑)。


レンタル店でこの映画を見つけ興味を持ち

借りて観たら、すっかりクママニアとなり

マタギに転職を考え中(←今ここ)

もし今年の冬にブログの更新が途絶えたら、
山にクマ撃ちに行ったと思ってください。
大物を仕留めたら、
クマ鍋をしますので、
その時はぜひ遊びに来てくださいね。

by 青山実花 (2016-10-01 21:57) 

空の下

早速のご訪問、niceありがとうございます。
こちらへのご挨拶を、と訪問する前に先を越されてしまいました。
また、よろしくお願いいたします。
by 空の下 (2016-10-02 00:22) 

BERA

私は反対に「おばあちゃんの家」の男版かと想像してしまいました。
祖父母と孫、というと
爺ちゃん子としては孫からの視点で見てしまうので
号泣してしまいそうな予感でいっぱいです。
見てみたいけど、ネット配信してるかしら。

by BERA (2016-10-02 10:52) 

青山実花

空の下さん
コメントありがとうございます

いえいえ、私への挨拶など、
気が向いた時で大丈夫です^^
こちらこそ、よろしくお願い致します。
by 青山実花 (2016-10-04 14:37) 

青山実花

BERAさん
コメントありがとうございます

なるほど、
その角度からの想像もありですね。

BERAさんはお祖父様から
可愛がられたご様子、
とても微笑ましく思います。

ネット配信されているかどうか、
ちょっと不明なのですが、
BERAさんがいつかこの映画と巡り合えることを
願っています。
by 青山実花 (2016-10-04 14:42) 

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