SSブログ

「煙突の見える場所」 [映画]

entotsunomierubasho.jpg
〔1953年/日本〕


千住火力発電所の4本の煙突が見える貸し間で、
上原謙と田中絹代夫妻は暮らしている。
上原たちは階下で生活し、
そして二階は、2人の下宿人、
高峰秀子と芥川比呂志に貸している。


上原は初婚だが、
田中は、戦災で前夫と離れ離れになり、
死んだものと諦め、
上原と再婚したという経緯がある。


実は田中は、
上原に内緒で、競輪場で働いてる。
生活が苦しいせいもあるが、
早く自分たちの家が欲しいと願っているのだ。
そして、そのために、
まだ子供は持たないと決めている。


ところが、ある日帰宅すると、
家に見知らぬ赤ちゃんが置き去りにされており、
添えてあった手紙には、
「これは田中の子です」と書かれていた。
生きていた田中の前夫が、
彼女の住所を調べ、
置いていったらしいのだ・・・。





古い映画を観る時は、
その時代背景を考慮して、
現代の感覚に当てはめてはいけないと
思うようにはしているのだけれど、
これはどうにも理解に苦しむ。


家の中に赤ちゃんが置き去りにされていたら、
自分だったら、ひっくり返るくらい驚いて、
すぐに警察に通報すると思うのだけれど、
上原謙と田中絹代は、
そう驚く風でもなく、
また、警察にも通報しない。


でも、だからといって、
赤ちゃんを受け入れたわけでもなく、
上原は、ずっと不機嫌で、
田中も困り果てている。
手紙の入った封筒には、
戸籍謄本が同封されていたのだけれど、
それによると、前夫が生きているため、
二人は重婚という事になり、
それで罪になる事を上原は怖れる。


うーん、当時の警察や行政って、
そんなに冷たかったんだろうか。
2人とも、故意に重婚したわけではないし、
戦後の混乱のせいでそうなったのだから、
ちゃんと説明すれば、
分かってもらえる気もするのだけれど、
それもやっぱり現代の感覚なのかな。


それから、その後の上原の態度の情けなさったら。
赤ちゃんのせいでイライラして、
田中に当たりはするけれど、
だからといって、
なんの解決策も見い出そうとはしない。


悲観した田中が川に入水自殺を試みる時も、
その背中を見ながらも、
「ぼ、僕はどうすればいいんだ」って、観ているこっちがビックリだ。
そんなもん、後ろから飛びついて、
引き戻しなさいよ。


見るに見兼ねた下宿人の芥川比呂志が、
仕事を休んで、
田中の前夫を探してくれる。
それはもう、何日も掛かる、大変な労力なのだけれど、
なんと上原は、全てを芥川に丸投げで、
自分はパチンコしたりしている。
考えられん。


これって、上原が二枚目すぎるのもいけないのかも。
これが勝新太郎だったら?
由利徹だったら?
私はきっと、「しょうがないなぁ」と苦笑いで、
観ていた気がしないでもない。
ハンサムが邪魔になる事もあるのねぇ(笑)。


これ、上原と田中の立場が反対だったらどうだろう。
上原が再婚で、
死んだと思っていた妻が生きていて、
赤ちゃんを置いていったとしたら。
その方が自然よね。


千住火力発電所の4本の煙突の事は、
「こち亀」で題材にされていた事があったので知っていた。


漫画の中で、秋本治さんが図入りで、
とても丁寧に説明されていたのだけれど、
この煙突は、
見る場所によって、
1本に見えたり、2本に見えたり、3本に見えたりしたそうで、
人々から、「お化け煙突」と呼ばれていたそうだ。


この映画は、きっと、
煙突の下に住む市井の人々のドタバタを
描きたかったのかなぁとも思う。
上原謙の態度は嫌いだけど、
映画としては、そう悪くはない。


二階に下宿する
高峰秀子と芥川比呂志は、
仲は良いけれど、別に恋人同士というわけではない。
2人は、襖一枚隔てた部屋に住んでいて、
高峰はその襖に心張り棒をしたりしている。
そんなもん、芥川が襖を蹴破ろうと思ったら、
何の役にも立たないと思うのだけれど、
なんだか可愛くて、笑えたし、
そののんきな感じが羨ましくもあった。


上原夫妻自体が賃貸なのに、
この2人に安く貸しているのよ。
それって、又貸し?(笑)
大家さんは隣に住んでいるのだけれど、
何も言わないのが、またのんきでいい。
貧しかった昔は、
みんなが助け合っていたのかな。


評価 ★★★☆☆

nice!(26)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 26

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0