「砂の女」 [映画]

〔1964年/日本〕
真夏のある日、
教師・岡田英次は、砂地で生息する昆虫を採取するため、
砂丘にやって来る。
夜になったが、周辺に宿はなく、
すると住人から、一晩泊まる家くらいなら紹介すると言われ、
喜んで付いてゆく。
その家は、砂地の穴の底にあり、
女・岸田今日子が一人で住んでいた。
翌日、家を出た岡田は、
昨日使った縄梯子が無い事に気付く。
その集落は、砂の害に悩まされ、
岸田の家が防砂林のような役目を果たしており、
岡田は、砂掻きの担い手として、
騙されて連れて来られたのだ。
砂の崖は、どんなに足掻いてもよじ登る事ができず、
岡田は、完全な蟻地獄にハマってしまった自分に気付く。
何とかして逃げ出す方法を模索する岡田だが・・・。
以前、安部公房の原作の粗筋を知った時、
「こんな話が小説として成り立つのか」と思い、読んでみた。
なるほど、小説に出来る事は分かったが、
今度は、それが映画化されている事に驚いた。
こんな内容をどうやって撮影するのかと。
けれど、観てみると、
ちゃんとした映画になっていた。
砂丘の穴の中にある家。
そこで暮らす女。
蟻地獄にハマってしまった男。
それだけの話を聞いただけでは、
飽きてしまいそうな気がするが、
意外とそうでもない。
流れる水を眺めていると、
思いの外、時間が経つのが早いものだが、
それと似た感じなのかもしれない。
蟻地獄にハマってしまった当初の岡田英次の焦りと恐怖は、
自分が実際その場にいるような気持ちにさせられて、
物凄く怖い。
だって、蟻地獄に自分がハマるなんて、
想像した事がある人なんて、殆どいないだろう。
一度は、岡田は逃げ出す事に成功するのだが、
集落の男たちに追われ、
連れ戻される。
物凄い絶望感。
その集落の男どもの野卑で下品な事ったら。
最悪。
ラストはちょっと考えさせられる。
自分だったら、と思わずにはいられない。
評価 ★★★☆☆
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