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「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」 [映画]

Killingo KennethChamberlain.jpg
〔2019年/アメリカ〕


2011年、ニューヨーク。
双極性障害を患う、
一人暮らしの老人・ケネス・チェンバレンは、
早朝、誤って、
医療用通報装置を作動させてしまう。


センターからの通報を受け、
安否確認の為、3人の警察官が
ケネスのアパートにやって来る。


ケネスはドア越しに、
通報は間違いだったと伝えるも、
一応、顔を見せてくれと言う、
警察官の言葉に耳を貸さず、
頑なにドアを開けない。


麻薬を隠し持っているのではないか、
誰かを監禁しているのではないか、
警察官は不審に思い、
ドアを開けさせるため、
その行動は次第にエスカレートしてゆき・・・。





権利に対する考え方。
自由に対する考え方。
人種問題。
病気への理解。


などなど、国の違いや、
個人の考え方や、
経験値の差などを理解しないと、
この映画は難しい。


それに、解説する人の持って行き様で、
ある程度、
観た人の感想を誘導できる、
怖い映画でもあるように思う。
ケネスさんと、警察官、
両方の立場から、フラットな気持ちで観たい。


まず、警察官。
彼らの行動は、やり過ぎだ。
ケネスさんを理由に、
日頃のストレスを解消しているようにしか見えない。


しかし、彼らにも職務がある。
今まで、私たちは、
警察官や、役所の職員が、
ある家を訪ねて、
「異常なし」「問題なし」と判断した後で、
実はその家で、虐待や監禁があったという事件を
嫌と言うほど知っている。


そして、それが分かった時の、
世論の怒りは凄まじい。
なぜ気付かなかった、
プロだろう、
対応が甘いからだ、と。
万が一にも、そんな事を避けるために、
警察官は、する事をしているだけのようにも思える。
少なくとも、騒動の初期の段階においては。


一方、ケネスさんは、
双極性障害という病気だ。


警察官がドアをドンドンと叩き、
開けろ!と叫ばれると、
耳鳴りがして、
パニックになってしまう。
警察官の言われるままに、
ドアを開けたりしたら、
暴力を振るわれるに違いないという、
経験なのか、思い込みなのかは分からないけど、
そういう考えに至ってしまう。


観ている私は、
「ケネスさん、お願いです、
 ドアを開けてください。
 ほんの5分です。
 疚しい事が何もないなら、
 警察官は引き揚げます」
と心の底から思ったけれど、
これは実話なので、
結末ありきのストーリー。


そう、これは実話。
ラスト、ケネスさんは、
警察官に銃で撃たれて死ぬ。


あぁ、せめて殺さないでほしかった。
それなら、一人の老人と警察官の、
ちょっと大きないざこざで、
話しは終わったのに。


評価 ★★★★☆

nice!(129)  コメント(19) 

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コメント 19

トモミ

何とも重い内容ですね!双極性障害自体は極めてメジャーな疾患なのですが…

by トモミ (2023-09-19 13:46) 

kousaku

双方の思う事の酉違いがこのような結末に成るんでしょうね、それにしても銃を撃たなくても話ができると思うんですが国民性の違いなんですね。
by kousaku (2023-09-19 18:14) 

mitu

 一人の老人と警察官の、ちょっと大きないざこざで終わってほしかったですね・・・恐ろしくて悲しい社会ですね・・・。
 モーガン・フリーマンさんという役者さん
映画「最高の人生の見つけ方」に出演されていた俳優さんですよね^^
by mitu (2023-09-19 18:45) 

向日葵

え!?
銃で殺されちゃうなんて!!
by 向日葵 (2023-09-20 02:37) 

よしあき・ギャラリー

モーガン・フリーマンは、はまり役のようですね。^^
by よしあき・ギャラリー (2023-09-20 06:22) 

Rinko

どちらかに偏るのを自制してモノゴトをフラットに見る事は、いろいろな場面で必要だな。。。と感じています。
あまりにも悲しい最後。これが実話だと思うと本当にやりきれないですね。
by Rinko (2023-09-20 08:02) 

お散歩爺

医療用通報装置を誤動作させて・・それがドラマの始まりですね。
by お散歩爺 (2023-09-20 08:03) 

青山実花

トモミさん
コメントありがとうございます。

アパートのドアの、向こうとこちらだけの映画なのに、
とても重く、最後まで緊張感でいっぱいでした。

病気もあり、さらに高齢という事で、
トラブルが大きくなっていったのかもしれませんね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:50) 

青山実花

kousakuさん
コメントありがとうございます。

本当ですね。
両方を観ている観客は、
どちらの立場も分かるのですが、
ドアを挟んだそれぞれは、
自分の事で精一杯ですものね。

丸腰の相手に銃を向けるのは、
日本では考えられないですね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:50) 

青山実花

mituさん
コメントありがとうございます。

そうなんです。
銃さえなかったら、
ドアは壊れても、
どちらが修理代を持つか、
くらいの揉め事で済んだはずですよね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:51) 

青山実花

向日葵さん
コメントありがとうございます。

日本人の感覚からすると、
ショックな結末ですよね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:51) 

青山実花

よしあき・ギャラリーさん
コメントありがとうございます。

ケネスさんを演じたのは、
フランキー・フェイソンという俳優さんのようです。
モーガン・フリーマンは、
製作総指揮のようですね^^

by 青山実花 (2023-09-20 20:52) 

青山実花

Rinkoさん
コメントありがとうございます。

私も、人様の揉め事を見た時は、
できるだけ公平な目で判断したいですし、
自分に嫌な事があった時も、
自分に非は0%なのだろうか、と考えるようにしています。
(なーんて、一応「つもり」です^^;)

どちらも、もう少し、
対応のしようがあったのではないかと
考えてしまいますね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:52) 

青山実花

お散歩爺さん
コメントありがとうございます。

どんなに大きな揉め事も、
きっかけは、
意外と些細な事なのですよね。

by 青山実花 (2023-09-20 20:52) 

suzu*

警察のいきすぎと、誤って逮捕して
実は何もなかったとしても
その後の謝罪も保証もしない…
アレって一体なんなんでしょうね?
この映画のラスト、悲しすぎますね…
by suzu* (2023-09-21 07:14) 

青山実花

suzu*さん
コメントありがとうございます。

警察が謝らないって、
よく聞きますね。
そういう決まりなのか、
プライドで謝れないのか。
この映画の警察官たちも、
特に罪に問われるような事は
なかったようです。
by 青山実花 (2023-09-22 21:33) 

tommy88

じゅう、じゆう。
銃を持つ者の高揚と自制心、そのバランスを制御するのはその人。
だからバカには銃を持たせたくない、きちがいに(ぴー)刃物。
跳弾が怖くて、射撃訓練はあっても実射経験がない日本の警官、臆病。
臆病さ故に射殺が少なく、かの国では臆病さがゆえに射殺する。
ギリギリまで発砲を控える日本国警官、殺らなければ殺られる米国警官。
カメラを付けていても過剰反応で簡単に射殺する国は怖い。
射殺しなければもっと怖いと思っている国はもっと怖い。
国境を越えたカナダではアメリカ的過剰反応はない。
いつからアメリカではそんな過剰反応をしているのか。
そういう疑問は愚で、あの国は開拓時代から殺られる前に撃つ。
死者がこれ以上増えないよう戦争を辞めさせるために原爆を落とした。
兵士数万人の命を救うためにどれだけの広島、長崎の民を殺したか。
戦争を早く集結させるための快挙と、アメリカでは教育されていた。
米国政府の嘘で米国民はずーっと原爆は正しかったなどと狂っていた。
まるで今の中国や韓国、北朝鮮にロシアと同じであるのが笑止千万。
アメリカっておかしいんだと言えないから中国にも言えないのです。
全く独立出来ていない国、戦争反対、憲法9条だけで国が守れるなんて。
世界から孤立した平和主義と平和ボケでやって行けるのはなぜか。
それは怒ったらすぐに発砲するヤクザ米国が後見人だから。
おかしなことはタダさなきゃ、私も被爆地出身ですと公然と嘘の岸田。
岸田ソーリは東京生まれの東京育ち、広島出身の父の実家に帰省してただけ。
そんなお方が、どういう理由で「私は広島出身」と言えるのかしら。
私の親が広島出身で、だったらわかるけど。
私だって徳島出身と胸を張れるなら子どもの頃、母と「帰省」していたし。
世界に向けて誤魔化しの嘘、好感を持たれるような嘘を平気で言える脳。
国民が撃ち殺されないように手を打ってほしいのですけどね。
冷静に引き金が引けるのは、別班かゴルゴ13ぐらいです。
だいたいは頭の中が真っ白か、恐怖で引き金を引いています。
実話の映画化は、恐怖が同調したとき怖くなります。
ポケモンカフェがいちばんイイやと思える瞬間です。

by tommy88 (2023-09-24 10:51) 

yokomi

なんとも悲しい映画ですね(>_<) アメリカに正当防衛なんで無いのでしょうね。やられる前に、やる。開拓という侵略時代の遺産を引き摺り、銃の製造販売業界からも票を頂いているようでは、警官はいつまで経っても先に撃ちたくなるのでしょう(>_<)
当地では、やや昔、「異常なし」「問題なし」と判断した後で、火事を出してしまった消防に勤めている方の家が、何時間後かに再度燃えてしまいました(>_<) 判断したのは当然消防でしたが(>_<)
by yokomi (2023-09-30 23:59) 

裏・市長

黒いですね。



今日の青山実花さんは社会派ですね。
確かに立場が変われば、正義も変わるのです。
どちらにも「正義」はあるのです。

最近、大和高田市の隣、橿原市
(秋篠宮ご夫妻ご愛用の地)でも、シンママの
連れ子を虐待させた事件が起こりました。

いま、市の対応、児童相談所の対応、
警察の対応に問題がなかったのかと、
第三者委員会が設置され、喧々諤々やっています。

今回の件では、加害者の男が
シンママの住居に転がり込んではいた
ものの住民票を移しておらず、
「家族として」の扱いがされなかったため、
市がこの男を除外して、事情を聴取しなかった。

そして事件が起きた・・・という流れです。

ここでもふたつの見方が出てきます。

家族ではない者に事情聴取を行うと、
プライバシーの侵害だ、人権侵害だとの見方。

なぜ、同居している男に対して、
踏み込んで調査しなかったのかという見方。

もし、事件が起こらなければ、
警察が、行政が「行き過ぎ」として叩かれたでしょう。

踏み込まなかったために今、
警察が、行政がなにをしていたんだと、
叩かれています。

結局、世間とは勝手なもので、
結果を見て、判断をしているだけです。

結果が違えば叩く先を変えればいいだけの
簡単なお仕事です。

この作品もドアの向こうの人物の肌が、
黒くなければ、展開もまた変わっていたのでは
ないでしょうか・・・。

以前、黒人を奴隷として扱っていた時代の
ドキュメンタリーを見ましたが、
人間という意識はゼロですね。

アメリカには、
それがまだ根強く残っている気がします。

肌が黒いというだけで、自分より下に見る・・・、
裏・市長だというだけで、あいつは下心があると言う
決めつけ・・・。悲しいことです。
by 裏・市長 (2023-10-04 02:21) 

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