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「破戒」 [映画]

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〔1962年/日本〕


明治時代。
被差別部落出身の瀬川丑松(市川雷蔵)は、
出自を隠し、小学校の教員をしている。


丑松の父は、息子の将来を案じ、
部落出身という事を、
絶対、他人に知られてはいけないと戒めてきた。


そんな父が、ある日、牛の角に突かれて死んだ。
丑松は戒めを破り、
父の遺体に会いに行き、号泣する。


下宿に帰った丑松を、
同僚で親友の土屋銀之助(長門裕之)が慰めてくれた。
しかし、そんな土屋も、
丑松が部落出身だとは夢にも思っていない。


丑松は、部落解放の運動家・猪子蓮太郎(三國連太郎)に心酔し、
彼の著書を読み込んでいたが、
土屋は猪子を「危険な思想家」だと言い、
そのような書物は読まない方がいいと、
丑松に進言するのだった。


しかし、あれほど隠していた丑松の秘密が、
どこからともなく漏れ、
丑松は追い込まれてゆく・・・。





島崎藤村の原作を、
市川雷蔵主演で映画化。


不勉強でお恥ずかしい話しだけれど、
私は大人になるまで、
被差別部落について、特に考えた事がなかった。


そういった環境になかったというのが大きいけれど、
それに関する話を聞いてもピンとこず、
よく意味も分からなかった。
「肌で感じた事がない」というのが、
一番近い表現ではないかと思う。


今になって書物やネットで、
少し調べたりしているけれど、
この映画のような明治の時代、
差別は今よりもっともっと厳しかったのでは、と、
そんな気がする。


丑松は自分の出身を他人に知られる事を、
心の底から恐れている。
それは、その事が公になったが最後、
職を追われるからだ。
職を追われるという事は、
自分の食い扶持が脅かされるという事だ。


それが分かっていて、
誰が出身を口にできよう。
当時はまだ、
表立っての差別は恥ずかしいなどという概念は無く、
大人が普通に、大っぴらに差別を口にする。


丑松はなぜ、
職業に教師を選んだのだろう。
田舎町の教師といえば、
どうしても公人という印象が強いし、
目立ちやすい。
生徒がいれば、
その倍の数の親がいる。
それだけバレる確率も高くなる。


それから、
もし、自分の出自を絶対に隠したいと固く決心したなら、
もう絶対、それに関する場所や人や物には
近寄っては駄目だと思うんだけど。


極端な事をいえば、
親の葬儀にも出席しないくらいの覚悟がないと。
現に丑松は、
父の遺体に会いに行った時、
電車の中で目撃されてしまっている。
そういった小さな事から、
綻びが生じていくのに。


猪子蓮太郎に憧れる気持ちも分かるけど、
それもやっぱり隠した方がいいな。
下宿の本棚に、
猪子の本を並べるなど、
「お察しください」と言っているようなもの。
何かを隠すなら「これくらいは」というのはない。
100:0の覚悟で隠し通さねば。


とはいえ、
被差別部落の事を何も分かっていない私だから、
こんな感想もトンチンカンなのかもしれないな。
ラストが絶望的でなくて良かった。


評価 ★★★☆☆

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