「川のある下町の話」

〔1955年/日本〕


ある大学病院のインターン・義三（根上淳）は、
川に落ちた幼い子供・和男を助け、
それがきっかけで、
和男の姉・ふさ子（有馬稲子）と知り合う。


ふさ子は両親を亡くし、
和男を育てながら懸命に生きる、
健気な娘で、
義三は、そんなふさ子に強く惹かれる。


義三の伯父は、
街に病院を建て、
義三をそこの院長にし、
ゆくゆくは、娘・桃子（川上康子）と
義三を結婚させようと思っており、
桃子も、その気になっていた。


そんな中、和男が肺炎に罹り、
看病の甲斐なく、死んでしまう。
天涯孤独になったふさ子は、
義三のアパートに泊まるが、
それを桃子に咎められ、
アパートを飛び出し・・・。





このタイトルから、
川のある下町で暮らす、
市井の人々の、
のんきな暮らしを描いた話かと思っていたけれど、


川端康成さん原作の話が、
そう一筋縄でいくわけもなく、
大変に重く、暗い。


これでもかと言わんばかりに、
主人公のふさ子に降りかかる不幸な運命。


たった一人の肉親である、弟を亡くし、
住んでいるバラックは、
病院建設の為に追われ、
パチンコ屋の二階に住み込めば、
店員の男に凌辱されそうになり、
必死で逃げだせば、
アメリカ兵たちが乗る車に連れ込まれそうになり、
そして、
義三のアパートに置いておいた、
立ち退き料の現金は、
同じ下宿の男に盗まれ・・・と、
もう散々だ。


あまりに悲しい事の連続に、
とにかく、ラスト、
ふさ子が幸せになれるかどうか、
先に知っておきたい衝動に駆られ、
DVDを早送りしたい気持ちを、必死に抑えた。


ところで、この映画、
山本富士子さんが出ているので、
てっきり主役かと思ったら、
彼女は、
根上淳さんに片想いをする、
同じインターン仲間の役。


根上さんは、
同僚としての気安さから、
山本さんに、自分の恋愛を相談するのだけれど、
山本さんにしたら、それはあまりにショックな事で、
「残酷ですわ」と。
多分、根上さんは、
なぜ、そんな事を言われるのか、
分からないようだけど。


ただ、私から見ると、
山本さんは医者の卵で、
これから、いくらでも活躍できそうだ。
「あなたは、他の場所・他の人で、
　幸せになれそうなのだから、
　根上さんは、ふさ子に譲ってあげてほしい」と
思う気持ちが止められない。


根上さんは、
山本さん、有馬さん、川上康子さんの3人から
惚れられ、モテモテである(笑)。


暗い話だけれど、
希望の持てるラストで、本当に良かった。


評価　★★★★☆

コメント 8

有馬稲子さんが主役で山本富士子さんが助演ですか…
映画は大映の様ですけど、有馬稲子さんはその後は松竹所属だった様に思います。当時は五社協定があって映画会社に縛られていたので、有馬稲子と山本富士子の共演というのは珍しいです。
by 扶侶夢 (2023-04-04 03:06) 

扶侶夢さん
コメントありがとうございます。

私も山本富士子さんがこのような役で、
驚きました。
お客様の有馬稲子さんを
丁重にお出迎えしたという感じでしょうか＾＾；
大映の俳優さんのみなら、
山本さんが有馬さんの役をして、
山本さんの役はもう少し格下（？）の
女優さんが演じていたように思います。
by 青山実花 (2023-04-04 07:06) 

1955年ですか！全く詳しくはないのですが、日本映画が光り輝いていた時代ですよね？

by トモミ (2023-04-04 08:31) 

トモミさん
コメントありがとうございます。

1950年代60年代は
映画が全盛期だったようですね。
そしてそんな古い映画を
今になって夢中で観ています＾＾
by 青山実花 (2023-04-04 17:25) 

3人から惚れられモテモテ....なんて生まれ変わっても無理(^_^;)　いつか見たい気はしますが、積ん読や買って見ていないDVDも有り(>_<)
by yokomi (2023-04-06 17:06) 

yokomiさん
コメントありがとうございます。

いえいえ、口には出されていなくても、
モテているかもしれません＾＾

私も読んでいない本、
観てないDVDが沢山あります＾＾；
by 青山実花 (2023-04-07 22:18) 

あ！青山実花さんもご覧になったのですね！
「川のある下町の話」

実はボクも見たんですよ、最近。
DVDソフトをお貸しいただいて見ました。
私が根っからの根上淳ファンだと知った方が、
この非情な根上淳は見ておいたほうがいいよ、
と貸してくれたのです。

青山実花さんはこの映画がハッピーターンだと
書いておられますが、この映画には続編が
ありまして、DVDのボーナストラックに
特別収録されておりました。

「シン・川のある下町の話」

笑顔で終わった前作のラストですが、
あれからふさ子をさらに悲劇が襲います。

義三の両親が2人の仲を徹底的に反対したのです。

当然です。
この当時の日本ではキチガイ病院に入院していた、
そんな人間を喜んで医師の嫁に迎える家庭は
なかったでしょう・・・。

もう、目をそむけたくなるような展開が続き、
ついに、ふさ子は自らの肉体を改造手術し、
ダイエイオーグとしてよみがえったのです。

ふさ子は幸せを求めてはいけないのか、
ふさ子が目指す幸せとはなんだ？、
どうすれば、ふさ子は幸せになれる？

ふさ子はただ、人並みの幸せを求めただけ
だったのに・・・。

「シン・橋のある下町の話」、
ぜひ、青山実花さんもご覧ください。

人間のしあわせってなんだろう・・・。
深く考えさせられる一作でした。

by 裏・市長 (2023-04-08 23:35) 

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

えー！？
裏・市長さんも、
この映画、御覧になったのですか？

そんなにペギー葉山さんの旦那様が好きなんですか？
何か、彼に特別な感情があるのですか？
親子として、入籍したいんですか？
ペギー葉山さんはどうなるのですか？


実はわたくしも、
「シン・川のある下町の話」観ております。

それから、さらにその続編の、
「続・シン・川のある下町の話」と、
さらにそのまた続きの、
「続・シン・川のある下町の話　PART1」
「続・シン・川のある下町の話　PART2」

そして、その2年後に作られた、
「続・シン・川のある下町の話　PART1　前編」
「続・シン・川のある下町の話　PART2　後編」

も観ております。

「続・シン・川のある下町の話　PART2　後編」では、
死んだはずの和男が生き返り、
宇宙人に連れていかれ、
宇宙船の中で、
性転換手術を受けるのです。

地球に戻っていると、
星屑スキャットと、八方不美人の両方から
スカウトされ、
掛け持ちで所属、
大人気となり、
ジョイントライブのチケットは、
ファンクラブの会員でも、
取れないんだとか。

人間のしあわせってなんだろう・・・。
深く考えさせられる一作でした。

by 青山実花 (2023-08-16 18:32)