「牝犬」 [映画]
〔1951年/日本〕
保険会社に勤める堀江(志村喬)は、
真面目を絵に描いたような男で、
仕事は皆勤賞、
病弱な妻や、年頃の娘にも、
厳しい態度で接してきた。
ある日、堀江は、
部下が入り浸っているというレビュー劇場に、
部下を迎えにいったところ、
踊り子のエミー(京マチ子)と、
成り行きで関係を持ってしまう。
翌年。
堀江は、会社から横領した金でエミーとバーを経営し、
一緒に暮らしていた。
エミーの虜になった堀江は、
妻子も、会社も捨て、
エミーとの生活を選んだのだ。
浮気者のエミーは、
朝帰りを繰り返し、
堀江は嫉妬に苦しむが、
それでも別れられず、彼女のすがりつく日々。
ある日、店の楽団に、
新人のサックス奏者・白川(根上淳)が入団してきた。
若く美しい白川を
エミーはあの手この手で誘惑するが、
まるで相手にされず、
次第に彼女は、
本気で彼に恋するようになる・・・。
これぞ、
「ザ・京マチ子映画」。
その魅力的な肉体で、
男を誘惑し、
男が本気になっても、
自分は夢中にならず、
常に浮気を繰り返す女。
実際の京マチ子さんは、
そういった女性ではなかったと思うけど、
そういう役が似合い過ぎていて、
それが、
京さんのイメージそのものになっていった気がする。
この映画の志村喬さんも、
そんな京さんの毒気に惑わされ、
今まで築き上げてきたもの全てを捨てて、
京さんに走る。
その場面の切り替わりが素晴らしい。
2人がお布団に倒れ込んだ、と思ったら、
次の場面では、
2人がバーを経営している。
観ているこちらは、
「え!?」と驚く、という仕掛け。
志村さんは、
朝帰りしてきた京さんの汗を拭いてやったり、
ご機嫌とりに必死。
京さんは実に面倒くさそうなんだけど、
それが、志村さんの不安を煽り、
さらにすがりつく、という悪循環。
そんな京さんが、
初めて男に惚れる。
それがサックス奏者の根上淳さん。
根上さんにとって、
京さんのバーで演奏することは、
人生の通過点に過ぎず、
そんな場所で終わる男じゃない。
だから、どんなに誘惑されても乗らない。
女に現を抜かしている場合じゃないのだ。
つまり、志村さんにしても、京さんにしても、
相手に冷たくされればされるほど、
夢中になるのは同じって事なのね。
異性にモテたかったら、
追い回すだけが能じゃないかも(笑)。
それから、志村さんに捨てられた娘役を、
久我美子さんが演じていて、
なんと彼女は、旅回りのストリッパーになっている。
あの清純で気品あるお嬢様・久我美子さんが、
そのような役をするのも驚きだし、
父との再会の場面は、
観ているこちらも、本当にショックで。
誰一人、幸せにならない、この映画。
せめて、根上さんだけは、
この修羅の家から逃げ出して、と、
彼の乗った列車が動き出すまで、
「早く早く」と、手に汗握るような思いで観ていた。
ラストは、ああなるしかなかったんだろうな、という終わり。
評価 ★★★★☆
この作品で、
京マチ子さんの出演映画、100本中85本を観た事となりました。
(★は観た作品)
★化粧 (1984)
★男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (1976)
妖婆 (1976)
★金環蝕 (1975)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
★華麗なる一族 (1974)
★玄海遊侠伝 破れかぶれ (1970)
★千羽鶴 (1969)
★小さい逃亡者 (1966)
★沈丁花 (1966)
★他人の顔 (1966)
★甘い汗 (1964)
★現代インチキ物語 ど狸 (1964)
★女系家族 (1963)
★女の一生 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★黒蜥蜴 (1962)
★釈迦 (1961)
小太刀を使う女 (1961)
★女の勲章 (1961)
★濡れ髪牡丹 (1961)
★婚期 (1961)
★お傳地獄 (1960)
★顔 (1960)
★足にさわった女 (1960)
★三人の顔役 (1960)
★ぼんち (1960)
★流転の王妃 (1960)
★女経 (1960)
★浮草 (1959)
★鍵 (1959)
★次郎長富士 (1959)
★夜の闘魚 (1959)
★女と海賊 (1959)
★細雪 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
★赤線の灯は消えず (1958)
★大阪の女 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
★母 (1958)
★悲しみは女だけに (1958)
★有楽町で逢いましょう (1958)
★穴 (1957)
★夜の蝶 (1957)
★地獄花 (1957)
★女の肌 (1957)
★踊子 (1957)
★いとはん物語 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
★八月十五夜の茶屋 (1956)
★月形半平太 (1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新・平家物語 義仲をめぐる三人の女 (1956)
新女性問答(1955)
★藤十郎の恋 (1955)
★楊貴妃 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
春の渦巻 (1954)
馬賊芸者 (1954)
★千姫 (1954)
★浅草の夜 (1954)
★春琴物語 (1954)
★愛染かつら (1954)
★或る女 (1954)
★地獄門 (1953)
★あに・いもうと (1953)
黒豹 (1953)
★雨月物語 (1953)
★彼女の特ダネ (1952)
★大佛開眼 (1952)
★美女と盗賊 (1952)
★瀧の白糸 (1952)
★長崎の歌は忘れじ (1952)
★浅草紅団 (1952)
★踊る京マチ子 歌う乙羽信子 (1952)
恋の阿蘭蛇坂(1951)
情炎の波止場(1951)
★馬喰一代 (1951)
★源氏物語 (1951)
★牝犬 (1951)
★自由学校 (1951)
★偽れる盛装 (1951)
美貌の海(1950)
復活(1950)
★火の鳥(1950)
★羅生門 (1950)
★浅草の肌 (1950)
遙かなり母の国 (1950)
★続蛇姫道中 (1950)
★蛇姫道中 (1949)
★最後に笑う男(1949)
★痴人の愛 (1949)
三つの真珠 (1949)
★地下街の弾痕 (1949)
★花くらべ狸御殿 (1949)
天狗倒し(1944)
団十郎三代 (1944)
100本中、85本!
凄いです♬
by ぼの (2021-08-12 01:03)
京マチ子と云えば美人のスターでしたね、大映映画の看板スターでしたが結構嫌な役もやっているんですね。
by kousaku (2021-08-12 08:02)
すごいポスター!。
この一枚で映画のすべてが把握できる!。
もう、映画本編を見なくても大丈夫。
見ずに帰ろう。
えっ!劇場で見たんか!なんぼ志村喬好きよ?!。
こんな顔して、このジジイ、愛人の数だけは
森繁久彌に負けてないらしいぞ。
角川博の元嫁も「めかけ」でしたと告白するほどだ。
それも未成年の時の話やで、今なら条例で逮捕やで。
しかしすごいタイトル。
「京マチ子の牝犬」!!!!!!!!!!!!!。
「京マチ子の」!!!!!!!!!!!、
「牝犬」!!!!!!!!!!!!!!。
京マチ子「が」牝犬ではなく、
京マチ子「の」牝犬なのだ!。
つまり京マチ子さんは牝犬ではない、
京マチ子さんは牝犬を演じているだけですよと
主張しているのだ。
昔はポスターの名前の順序だけでも、
ひと悶着あって当たり前だったらしいから、
これもふた悶着ぐらいあったのだろう。
京マチ子「で」牝犬。
京マチ子「と」牝犬。
京マチ子「なら」牝犬。
京マチ子「みたいな」牝犬。
京マチ子「も」牝犬…。
「も」にしてしまうと、若尾文子が
しゃしゃり出て来てダブル主演になるから
自粛したのだろうな、きっと。
自粛が求められる世の中だもの。
by 裏・市長 (2021-08-13 20:16)
ぼのさん
コメントありがとうございます。
ここまでは何とか辿り着いたのですが、
この先どこまで行けるかが問題です^^;
by 青山実花 (2021-08-14 10:11)
kousakuさん
コメントありがとうございます。
大映映画の看板中の看板だったようですね^^
このような役がハマってしまうもの凄いですね。
by 青山実花 (2021-08-14 10:12)
裏・市長さん
コメントありがとうございます。
しかしすごいタイトル。
「裏・市長の牡犬」!!!!!!!!!!!!!。
「裏・市長の」!!!!!!!!!!!、
「牡犬」!!!!!!!!!!!!!!。
この、「裏・市長の牡犬」は、
近日公開の映画らしいですが、
大変な内容らしいですね。
なんでも、
名優・裏・市長が演じる、
牡犬のような男が、
その肉体を武器に、
ホストになろうとするも、
86歳という年齢がネックとなり、
面接試験に不合格。
腹を立てた裏・市長は、
そこらにある店の装飾品に、
片っ端から噛みつき、
通報され、逮捕されるという、
痛快娯楽時代劇との噂、
公開される前から、話題沸騰のようです。
なぜ男は、
年を取ると、
人の物を噛むのですか?
会社で、女子社員の、
ボールペンや、消しゴムや、金メダルや、
マウスや、キーボードまで、
口に入れるのですか?
頭おかしいんですか?
牡犬のような真似はやめてもらえませんか?
by 青山実花 (2021-08-14 10:13)