◆雨滴は続く◆ [本]
これは・・・
大どんでん返し・・・。
それも、小説本体ではなく、
「特別寄稿」での。
軽くショックを受けて、
電車の中で読んでいたのに、
涙出た。
2022年に急死した、
西村賢太の遺作で、未完。
本作の、
文藝春秋社のキャッチコピーは、
【芥川賞受賞”前夜”の知られざる姿を描いた最後の長編】。
相変わらずの西村賢太節が
延々と続くこの本は、
賢太自身だと思われる、
主人公・北町貫多の、
芥川賞受賞前の、
しょーもない日常が描かれる。
同人誌に、細々と小説を発表していた、
北町貫多は、
自身の作品が商業誌に載せられる事が決まるという、
喜びに加えて、
タダで性交できる女がほしいと渇望する彼は、
おゆうという源氏名のデリヘル嬢と懇意になり、
プライベートで会うようになる。
ところが、おゆうもその気になりかけた頃、
ある新聞社の新入社員・葛山久子に一目惚れした貫多は、
おゆうの事など、
もうどーでもよくなり、
彼女からのメールや電話を無視。
しかし、当然の事ながら、
久子から相手にされるはずもなく、
それが分かると、
またおゆうに連絡をする。
2人の女の間を、
その時の自己都合で行ったり来たりするという、
その浅ましい心理が、
実に巧みに描かれていて、
時折、声を上げて笑ってしまう。
そんなこんなの話が、
546ページに渡って描かれる。
そして、
なんと、
この小説のヒロインともいえる、葛山久子が、
巻末に、
「特別寄稿」している。
その内容が、冒頭に書いた、大どんでん返しというわけで。
「特別寄稿」を読み始めてすぐ、
え・・・嘘でしょ・・・、と思い、
読み終えて、
自分の読み違えかと、もう一度読んだ。
素晴らしい「特別寄稿」。
私が今まで思い描いてきた、
西村賢太像は、
完全に覆された。
この「特別寄稿」を以て、
この未完の長編は、
完成したと思う。
賢太の小説、
もっともっと読みたかったよ。
作品は、ほぼ全部読んでいるから、
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2011-12-27
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2012-04-02
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https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2012-05-08
https://aomikamica.blog.ss-blog.jp/2013-10-02
勝手に、
他人とは思っていないの、私。