「彼らが本気で編むときは、」

〔2017年/日本〕


小学5年生のトモ（柿原りんか）は、
シングルマザーの母親が男と出て行ってしまったせいで、
母の弟・マキオ（桐谷健太）の
世話になる事になった。


マキオの家に行くと、
同居人が増えていた。
その人、リンコ（生田斗真）は、
トランスジェンダーで、
男に生まれたけれど、
心は女で、
今は手術して、
体も女になったのだと、トモに話してくれる。


ちょっと不思議な3人の生活が始まった。
リンコはトモに、
とっても優しくて、
トモもリンコを大好きになった。


リンコはマキオに、
トモを、正式に自分たちの子供として
引き取れないだろうか、と相談するが・・・。





トランスジェンダーとか、
ちょっと今、話題になりそうな題材を取り入れて、
惹き付けようとか、
全然そんなんじゃなくて、
人間同士の愛情や優しさに、
心洗われる。


生田斗真が、
こんなにできる子とは。
彼は、元男で、今は女という、
ちょっと難しい役を
まったく違和感なく演じている。
観ているうちに、私は彼が生田斗真だなんて、
すぐに忘れてしまった。
彼はリンコさんだった。
完全にリンコさんだった。


リンコさんの恋人で同棲相手のマキオは、
介護施設で、きめ細やかに働くリンコさんを見て、
大好きになった。
リンコさんが、男とか女とか、
そんな事は関係なく、
「人間・リンコ」に惚れたんだ。


リンコさんには、もう一人、
めっちゃ強い味方がいる。
それは、リンコさんのお母さん。


幼い頃から、自分の性別に悩んでいたリンコさんを、
一度だって、嘆いたり、叱ったりする事なく、
むしろ、女の子用の下着を用意してくれたり、
ありのままの息子を受け入れようという様子が素晴らしい。


このお母さん、
「あんた、もしもリンコを傷つけるような事があったら、
　私が絶対許さないよ！」
と、初めて会う小学生のトモ相手に、凄んで見せた。
あぁ、これぞ母の鑑。
幼い頃から、ずっと、
人に傷つけられてきたリンコさんを知っている母だからこそ、
そんな風に言えるんだ。


母と言えば、
この映画には、
他にも、何人かの母が出てくる。


トモの面倒をみようとしない、
ネグレクトの母。


トモの母の母。


トモのクラスメイトの男の子の母。


どの母も、いい意味でも悪い意味でも、
重要な役だ。


この映画の肝は、
母性なのだろうと思う。


評価　★★★★☆
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