「残菊物語」 [映画]

〔1963年/日本〕
明治時代。
歌舞伎役者・尾上菊之助(市川猿之助)は、
五代目・菊五郎(嵐寛寿郎)の養子として、
絶大な人気を誇ってはいたが、
陰で人は、彼を大根役者だと笑っている。
それに薄々気付いている菊之助は苛立ち、
弟の若い乳母・お徳(岡田茉莉子)に、
自分の演技について、忌憚のない意見を言ってほしいと訴え、
お得は正直な感想を伝えた。
お徳に全幅の信頼を寄せた菊之助は、
遊びをすっぱり止め、
懸命に芸の稽古をするようになった。
さらに2人は、互いに仄かな恋心を寄せるようになる。
しかし、菊之助の母は、
お徳が歌舞伎の家柄に相応しくないと、
菊之助に内緒で、
彼女に暇を出してしまう。
驚いた菊之助は、
そんな家がほとほと嫌になり、
大阪に出奔、
大阪歌舞伎の舞台に立つようになる。
1年後、大阪にお徳がやってきた。
2人は夫婦として暮らすようになるが、
座長の死をきっかけに、
旅芸人の一座に入るしかなくなった菊之助は、
次第にお徳に辛く当たるようになる・・・。
今まで3回映画化されている、
この「残菊物語」。
この、市川猿之助版で、
3本全部観た。
嬉しい。
ただ、残念なのは、
素晴らしかった前の2本、
花柳章太郎版と長谷川一夫版に比べて、
なんだか面白くない。
まぁ、それは仕方がないのかな。
特に1作目は、
溝口健二監督の最高傑作の一つと言われているそうで、
比較するほうが可哀想なのかも。
全く同じストーリーだというのに、
面白い、面白くないと差が出てしまうのは何故なのだろう。
ど素人の私には、
自分が感じた事だけが評価の全て。
なので、この映画になぜ心が動かないのかの
説明ができない。
もしかして、他のかたが観たら、
感動されるかもしれないし。
もちろん、悪い所ばかりではなく、
ラスト、
「お徳の所に行ってやれ」と言った、
菊之助の義父・嵐寛寿郎の男気演技などは、
凄いなぁと思いながら、見入ってしまう。
この場面は他の2作も同じだけれど、
観る者が心底ホッとできるシーン。
そんな風に許すのなら、
最初から菊之助とお徳を一緒にさせてやってよ、と思うけど、
それではこの悲恋の物語は成り立たないから仕方ない(笑)。
菊之助を演じた市川猿之助さんって、
香川照之さんのお父さんよね。
こんな風に若い頃の映像を見てみると、
やっぱり香川さんに似ている。
香川さんより、キリッとした感じかも。
評価 ★★★☆☆