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「あん」 [映画]

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〔2015年/日本〕


小さなどら焼き店の店主・千太郎(永瀬正敏)の所に、
アルバイト募集の貼り紙を見た
老女・徳江(樹木希林)が、
「働かせてほしい」とやって来る。


最初は断った千太郎だが、
その後、徳江が持ってきた餡を食べ、
その美味しさに驚いた彼は、
採用を決める。


徳江の餡で作ったどら焼きは、
たちまち評判になり、
店には行列ができるまでになる。


ところが、徳江がハンセン病患者だとの
噂が広まり、
客足はパッタリ途絶えてしまう・・・。





この映画はもう、
ハンセン病が、とか、
差別が、とか以前に、
樹木希林さんの演技に圧倒されてしまう。


いや、圧倒なんていうと、
凄い迫力のようなイメージを与えてしまいそうだけど、
そうではなく、
なんだろう、言葉には言い表せないような
演技力というか、
あー、上手く書けない自分がもどかしい。


実際、食べたわけでもないのに、
映画を観ているだけで、
樹木希林さん演じる徳江さんの作った餡は
絶対美味しい、って、
分かる。


小豆に対する愛情。
心を込めて作る工程。
仕事ってこういう事だって、
教えられる。


永瀬正敏が、
今までどら焼きの餡は、
一斗缶に入った、
どこかの食品工場で作った物を使用していたと知った時、
徳江さんも驚いてたけど、
私も驚いた。


そっか、食べ物って、
店頭で作っているように見えるものでも、
そんな風なからくりがあるのね、って。
つまりは、永瀬正敏が作っているのは、
どら焼きの「皮」だけだって事で。


徳江さんが幼い頃、
ハンセン病の療養所に入った時、
母親がブラウスを持たせてくれたという
逸話には涙が出た。


それから、
療養所で、
徳江さんと姉妹のようにして過ごしている、
市原悦子さん演じる佳子さんの存在が、
私にはとても嬉しかった。


徳江さんに、
そんな親しい友達がいる事、
親にも会えないような、
隔離された一生だけど、
佳子さんがいてくれて本当に良かった、
佳子さん、ありがとうって。


自分の運命を受け入れ、
決して不満を言う事なく、
淡々と生きる。
私がそうありたいと思いながら、
中々できない事を、
徳江さんは体現してくれている。


観てよかった。
いい映画だった。


評価 ★★★★☆

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