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「焼肉ドラゴン」 [映画]

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〔2018年/日本〕


昭和44年。
日本が高度成長期の真っ只中にいる頃、
その波に取り残されたような、
在日朝鮮人の集落があった。


その中の一軒で、
焼肉屋を営む家族。
今日は次女の梨花(井上真央)と
婚約者・哲男(大泉洋)の入籍の祝いの準備で
忙しい。


しかし、梨花と哲男の結婚生活は
長くは続かなかった。
実は哲男は、梨花の姉・静花(真木よう子)に
心底惚れていたのだが、
プロポーズを断られたため、
梨花と一緒になったのだ。


そんな中、
末っ子で、長男の時生は、
失語症に苦しんでいた。
彼は、有名私立中学に合格したはいいが、
激しいいじめにあい、
言葉を発せなくなってしまったのだ・・・。





試写会で観た。


もう全く、期待を裏切られた。
いい意味で。


予告を観た時、私は、
在日朝鮮人の集落で、
そこに住む人々が、
ドタバタドタバタする日常を描くだけの、
物語だと思っていたから、
思っていたより、
考えさせられる内容だな、って。


なにせ、まず、
井上真央と大泉洋の関係からして、
シャレにならない。
二人は一応、結婚はしたけれど、
色々あって、大喧嘩となり、
大泉は、皆の前で、
自分は本当は、
真木よう子が好きなのだと宣言する。


井上真央は、普段とても気が強いという役どころなので、
余計に惨めさが増す。
(彼女は彼女で、色々あるけど、
 それとこれとは別問題)
大泉も、真木よう子に振られたのなら、
他で彼女を探せばいいのに、
なぜ、妹に手を出す。
世界が狭いにもほどがある。


それから、もっと衝撃なのが、
いじめられていた末っ子の運命。
これはもう、言葉にならない。


もし、コメディ映画でも見て、
スッキリしたいと思われるかたがいたとしたら、
この映画はおすすめできない。
もちろん、笑いの場面も沢山あるけど、
想像より、どんよりした気持ちになるであろう。


それから、
この時代にあったと言われる、
「在日朝鮮人の帰還事業」について
知らないかたが観たら、
「な、なんで!?」と驚くであろう気がする。
ちょっとでも、その事を知ってから観た方が、
より、理解できるかもしれない。


私は、いっとき、
梁石日さんの小説を夢中になって読んでいた時期があって、
だから、この映画のような
世界観は初めてではないので、


この時代、このような集落では、
日本人の想像を絶するような出来事が、
日々あったであろうことは
何となく分かる。
日本人の、一般的な常識では理解できない、
治外法権的世界。


梁石日さんの「血と骨」を
もう一度読みたくなる。


評価 ★★★☆☆

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