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「いぬやしき」 [映画]

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〔2018年/日本〕


58歳のサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は、
会社では、うだつが上がらず、
家では、家族から疎まれ、
存在感ゼロの人生。


ある日、壱郎は、病院で、
ステージ4の癌と診断され、
家族に告げようとするが、
誰も彼の話を聞こうとはしない。


公園のベンチでうなだれていると、
空から謎の光が落ちてきて、
目を覚ますと、
外見はそのままだが、
体の中身が機械というサイボーグに変身していた。


その時、
同じく公園にいた高校生・獅子神皓(佐藤健)も
壱郎と同じようにサイボーグになるが、
その後の2人には決定的違いがあった。


壱郎は、その力を人助けに使い、
皓は、その力を人殺しに使ったのだ・・・。





試写会で観た。


「大勢の人を助けたからと、神様にでもなったつもりか」
「大勢の人を殺したからと、神様にでもなったつもりか」


この2つは
劇中でも、そのようなニュアンスのセリフがあったし、
私も、スクリーンを見つめながら、
それについて、ずっと考えていた。


人智を超えたパワーを身に付けた、
中年のおっさんと、
イケメン高校生。


粗筋だけ読むと、
ドタバタしたSFヒーローもの?と思うけれど、
全然違う。


全編通して、悲しみがある。
別に号泣するとか、そんな場面はないけど、
最初から最後まで、
うっすらと悲しみの膜で覆われているように感じる。


特に、佐藤健演じる皓。
彼は、複雑な家庭環境で育ち、
そのせいで、
母親をとても大切に思っている。


それが色々あって、
彼の怒りが頂点に達し、
殺人マシンになる。


彼の憎しみはハンパない。
世の中に対して。
全ての人間に対して。
そして、その憎しみを、
無差別殺人という形で表す。


それはもう、絶対にしてはいけない事だけど、
何とかならなかったのかという思いが
私の中にある。
まだ高校生なのに。
いや、高校生だからこそ、
怒りを制御できなかったのかもしれないが。


木梨憲武氏は、
誰もが知る、
とんねるずの片割れ。


でも、全然とんねるずのイメージはない。
すごく上手い。
こちらも、
佐藤健とは違った意味で、
悲しい男だ。


そんな彼がヒーローになる。
彼を毛嫌いしていた娘も、
見る目が変わる。


ただ、これは私の個人的考えだけど、
無差別殺人がいけないのは当然として、
木梨氏が、病気で亡くなろうとしている人を、
無差別に完治させるのも、
やっぱりダメなんじゃないか、って思う。
それは、医者が患者を治療するのとも全然意味が違う。


だって、それは自然じゃない。
そこは神様の領域だから。


評価 ★★★★☆

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