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「本日ただいま誕生」 [映画]

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〔1979年/日本〕


戦時中、中国に抑留されていた、
大沢道雄(植木等)は、
凍傷で両足を失い、大変なショックを受ける。
さらに、日本に引き上げる途中で、
仲間の坂本(中村敦夫)や横田(川谷拓三)に
置き去りにされてしまう。


大平原で死にかけていた大沢だが、
親切な中国人に助けられ、
何とか帰国する。
義足を作り、
やっと歩けるようになった大沢は、
小さな商売を始める。


そんなある日、
自分を置き去りにした坂本と横田に、
バッタリ再会する。
土下座して許しを乞う2人に、
全てを水に流した大沢は、
3人で商売を始める。


最初は上手くいっていた商売だが、
次第に立ち行かなくなり、倒産。
さらに、妻も出てゆき、
人生のどん底にいる大沢は死のうとするが、
それもできず、
頭を剃り、僧侶になろうと決意する。


托鉢行脚しながら、
旅先で様々な人と交流した大沢は・・・。





植木等さんの、シリアスな映画。


実在した、法永寺住職・故小沢道雄さんの、
戦後から僧侶になるまでの、
数奇な運命を描いた作品。


なんと、この映画、
1979年に製作されたはいいが、
ほんの少しの劇場で上映されただけで、
フィルムを紛失してしまい、
それが、2012年になって、
渡辺プロダクションの倉庫で、
30数年ぶりに見つかったのだそうだ。


植木さんは、
この映画の完成を、
殊の外望んだそうだ。
大変に内容の濃い物語なので、
きっと思い入れも大きかったのではないでしょうか。


戦時中、異国で両足を切断するという、
大変な悲劇に見舞われた上に、
大平原に、生きたまま置き去りにされるという、
その残酷なシーンから、
映画に釘付けになってしまう。


人間の置き去りなど、
絶対にあってはならない事だけれど、
戦争は、人間の気持ちを狂わせてしまうのだろう。
悲劇としかいいようがない。


置き去りにした者にしても、
その後を、平気の平左で生きていたわけではないらしい事は、
再会した時の様子から想像できる。
大沢を誘って、
商売を始めた事も、
「全ては彼のためだった」というセリフもある。


大沢は、懸命に生きるけれど、
人生、なかなか上手くはいかず、
不幸な事の方が多いように見受けられる。


悲しかったのは、
貧しい暮らしに耐え切れなくなった妻が、
突然、出ていってしまった事。
貧しさは、2人で乗り越えていけると思って
観ていたので、ショック。


でも、妻は妻で苦しんだ。
せっかく妊娠したというのに、
食べていけないという理由で、
大沢に無断で堕胎したりしている。
貧しくなかったら、産んでいただろうに、
辛い場面だった。


クレージーキャッツのメンバーが、
それぞれ数秒間だけ顔を見せる。
本当に仲がいいんだなぁと、
微笑ましい気持ちになった。
私の一番好きな石橋エータローさんが
すでに脱退したあとなのが残念だけど。


評価 ★★★★☆

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