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「尼くずれ」 [映画]

amakuzure.jpg
〔1968年/日本〕


京都の尼寺・専修庵には、
庵主の善信、
智英、
春光、
香妙の
四人の尼が暮らしている。


春光(安田道代)は、
赤ん坊の頃、捨てられていたのを善信に拾われ、
今に至っている。
彼女は、
「尼であっても、世の中を知らなくては駄目だ」という考えで、
車の免許を取ったり、
ゴーゴー喫茶に行ったりする。


春光は、
ヤクザに追われている若い女・幾子を助ける。
幾子はトルコで働いているが、
売春しろと強要されたと言う。
春光は、困ったときは、
いつでも尼寺に来いと言い残す。


ある日、春光は智英から
迫られる。
女しかいない尼寺で、
智英は自分の肉体を持て余しているようだ。


また、最年少の香妙は、
森の中で出会った男と関係し、
夢中になってしまう。
その男こそ、
幾子を操るヤクザ・五郎だった・・・。





「尼」の映画、と聞いただけで、
おそらく、多くの方は、
エロ方面を想像されたのではないかという気がする(笑)。


何で「尼」というと、
そうなるんだろうなぁ。
人は、禁欲的であればあるほど、
内の押さえつけられた、
欲望を想像するのであろうか。


それとも、
尼=男知らず
という図式に
興奮するのか。


この映画も、
まぁ、ご想像通り(笑)。


一度知ってしまった男に夢中になったり、
同性愛的行動に出たりと、
とりあえず、ご期待通りの場面が用意されている(笑)。


ちょっと違うのは、
安田道代演じる主人公が、
とってもアクティブだって事。


彼女は、
寺が金銭的に困っていると知ると、
写真館でヌードを撮って、
金を得たり、
ヤクザの事務所に乗り込んでいったり、
尼とは思えない行動力。


さらには、トルコ嬢たちを助けるために、
ヤクザの組長と一夜を共にするという、
大胆な行動に。


でも、大丈夫(何が?(笑))。
すんでの所で、
ある事件が起こり、
彼女の貞操は守られるから。


トルコといえば、
昔のトルコ風呂(今のソープランドよね)は、
本番行為がなかったと聞いてはいたけど、
本当だったのね、と、
変なところで、事実確認。


一体いつから、
今のような形になったのだろう。


いや、それは私の間違いね(笑)。
ソープランドとは、
女の子と会話をしに来た客が、
その場で恋愛関係に発展するんですものね(笑)。
あの空間は、あくまでも、出会いの場を提供しているだけで。


評価 ★★★☆☆

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「或る女」 [映画]

aruonna.jpg
〔1954年/日本〕


明治時代。
早月葉子(京マチ子)は、
母親の反対を押し切って、
作家・木部と結婚するが、
生活力のない彼に失望、
妊娠しているにもかかわらず、
実家に帰る。


妊娠している女が離婚するというショックから、
母は他界。
その後、出産した葉子は、
子どもを婆やに預け、
アメリカで暮らす木村(船越英二)と結婚するため、
船に乗る。


しかし、船の中で、
事務長の倉地(森雅之)と激しい恋に落ちた葉子は、
アメリカに下船せず、
Uターン、
日本で倉地と同棲するようになる。


妹の愛子(若尾文子)を引き取り、
生活も落ち着くかに思われたが、
病魔が葉子を蝕み・・・。





京マチ子さんといえば、
私の中で、
激しい女というイメージなのだけれど、


この映画、
そんな京さんにピッタリの内容。


自由奔放で、
男を振り回すだけ振り回し、
そして、精神に異常をきたし・・・
いえ、これはあくまでも映画の話で、
実際の京さんは、
きっと真っ当な方なのでしょうけれど。


ただ、
物事には必ず、裏と表がある。
彼女は男を振り回しているけれど、
振り回されている面が多分にある。


妹役の、若尾文子さんから、
京さんは言われてしまう。
「お姉さまは、なぜ、男性がいないと駄目なの。
 ご自身の手で、幸せを掴もうとはなさらないの」と。


確かにね。
本当に自由な人は、
他人の人生を変えてしまうほどに、
他人に深入りしないだろうし、
他人にも、自分の人生を邪魔させないだろう。


明治時代のお話だから、
それは仕方のない面もある。


京さんは、
父親の言いなりだった母のようにはなりたくないと
言いながらも、
仕事をするわけではなく、
経済的自立など、概念もないようだ。
女は養ってもらって当たり前の時代だったのだろう。


特別面白い映画とは思わないけど、
一箇所、「あ」と思った場面があった。


それは、京さんと森雅之さんが、
旅行に出た先の海岸で、
京さんの元の夫と偶然出会ったシーン。


あまりいい別れ方ではなかったので、
その再会は気まずいのだけれど、
どこか感慨深いものがあって。


原作は有島武郎。
そして、有島さんの息子で、
名優の森雅之さんが準主役。


壮絶な死を遂げた父・有島武郎が描いた小説の人物を
息子が演じるって
面白い。
森さんご自身も、
父に負けず、色々あったようだけど、
どのようなお気持ちで演じられていたのだろう。
小説家や俳優の、あとになって伝説のようになるエピソード、
好きだなぁ(笑)。


評価 ★★★☆☆





この作品で、
若尾文子さんの出演映画、160本中115本を観た事となりました。


(★は観た作品)


★春の雪 (2005)
★竹取物語 (1987)
★ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 (1975)
 幻の殺意 (1971)
★男はつらいよ 純情篇 (1971)
★スパルタ教育 くたばれ親父 (1970)
 座頭市と用心棒 (1970)
★天狗党 (1969)
★千羽鶴 (1969)
★濡れた二人 (1968)
★積木の箱 (1968)
★不信のとき (1968)
★鉄砲伝来記 (1968)
★華岡青洲の妻 (1967)
★砂糖菓子が壊れるとき (1967)
★妻二人 (1967)
★夜の罠 (1967)
★雪の喪章 (1967)
 処女受胎 (1966)
★赤い天使 (1966)
★雁 (1966)
★氷点 (1966)
★処女が見た (1966)
★刺青 (1966)
★妻の日の愛のかたみに (1965)
★不倫 (1965)
★清作の妻 (1965)
★帯をとく夏子 (1965)
 女めくら物語 (1965)
★波影 (1965)
★花実のない森 (1965)
 幸せなら手をたたこう (1964)
 悶え (1964)
★卍(まんじ) (1964)
★獣の戯れ (1964)
★傷だらけの山河 (1964)
★「女の小箱」より 夫が見た (1964)
★温泉女医 (1964)
★新・忍びの者 (1963)
★越前竹人形 (1963)
 女が愛して憎むとき (1963)
★わたしを深く埋めて (1963)
★女系家族 (1963)
 八月生れの女 (1963)
★雪之丞変化 (1963)
★しとやかな獣 (1962)
★秦・始皇帝 (1962)
★瘋癲老人日記 (1962)
★その夜は忘れない (1962)
★やっちゃ場の女 (1962)
★仲よし音頭 日本一だよ (1962)
★閉店時間 (1962)
★爛(ただれ) (1962)
★雁の寺 (1962)
★家庭の事情 (1962)
★妻は告白する (1961)
★新源氏物語 (1961)
★銀座のぼんぼん (1961)
★女は二度生まれる (1961)
★女の勲章 (1961)
★東京おにぎり娘 (1961)
★好色一代男 (1961)
★お嬢さん (1961)
★婚期 (1961)
★花くらべ狸道中 (1961)
★銀座っ子物語 (1961)
 素敵な野郎(1961)
 鎮花祭 (1960)
★偽大学生 (1960)
★安珍と清姫 (1960)
★勝利と敗北 (1960)
★ぼんち (1960)
★からっ風野郎 (1960)
★女は抵抗する (1960)
★女経(じょきょう) (1960)
★初春狸御殿 (1959)
★浮草 (1959)
 実は熟したり (1959)
★美貌に罪あり (1959)
 花の大障碍 (1959)
 次郎長富士 (1959)
★氾濫 (1959)
★山田長政 王者の剣 (1959)
★薔薇の木にバラの花咲く (1959)
★最高殊勲夫人 (1959)
★あなたと私の合言葉 さようなら、今日は (1959)
 新婚七つの楽しみ(1959)
★母(1958)
★娘の冒険 (1958)
★夜の素顔 (1958)
 嵐の講道館(1958)
★一粒の麦 (1958)
★息子の結婚 (1958)
★口笛を吹く渡り鳥 (1958)
 愛河 (1958)
★忠臣蔵 (1958)
 螢火 (1958)
 東京の瞳 (1958)
 妻こそわが命(1958)
★青空娘 (1957)
★夕凪 (1957)
★誘惑からの脱出 (1957)
★永すぎた春 (1957)
★朱雀門 (1957)
★慕情の河 (1957)
 続銀河の都 (1957)
★スタジオはてんやわんや (1957)
 銀河の都 (1957)
 君を愛す (1956)
★四十八歳の抵抗 (1956)
★日本橋 (1956)
★涙 (1956)
 スタジオは大騒ぎ (1956)
 あさ潮ゆう潮 (1956)
★滝の白糸 (1956)
★処刑の部屋 (1956)
★新婚日記 恥ずかしい夢(1956)
★新婚日記 嬉しい朝(1956)
★赤線地帯 (1956)
★虹いくたび (1956)
★新妻の寝ごと (1956)
★花嫁のため息 (1956)
 薔薇の絋道館 (1956)
★弾痕街 (1955)
 七人の兄いもうと (1955)
★珠はくだけず (1955)
★長崎の夜 (1955)
★幻の馬 (1955)
 娘の縁談 (1955)
★薔薇いくたびか (1955)
★月に飛ぶ雁 (1955)
 幸福を配達する娘 (1955)
★螢の光 (1955)
 勝敗(1954)
 荒城の月 (1954)
★月よりの使者 (1954)
 緑の仲間 (1954)
★浅草の夜 (1954)
 慕情 (1954)
★舞妓物語 (1954)
★酔いどれ二刀流 (1954)
★或る女 (1954)
★心の日月 (1954)
 十代の誘惑 (1953)
 無法者 (1953)
 続続十代の性典 (1953)
 春雪の門 (1953)
★祇園囃子 (1953)
 続十代の性典 (1953)
 チャタレー夫人は日本にもいた (1953)
 怒れ三平 (1953)
★十代の性典 (1953)
 彼女の特ダネ (1952)
 街の小天狗 (1952)
 秘密 (1952)
 明日は日曜日 (1952)
 花嫁花婿チャンバラ節(1952)
★母子鶴 (1952)
 猛獣使いの少女 (1952)
★死の街を脱れて (1952)

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「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」 [映画]

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〔2017年/チェコ〕


1939年。ポーランド。
ヤン(ヨハン・ヘンデンブルグ)と
アントニーナ(ジェシカ・チャスティン)は、
ワルシャワ動物園を経営している夫婦。
2人は動物を深く愛し、
献身的に世話をしている。


しかし、ドイツがポーランドに侵攻し、
世界は戦争への道を歩み出す。
動物たちは殺され、
そして、夫妻のユダヤ人の友人たちは、
収容所へ連行されてしまう。


ヤンがアントニーナに、
「この動物園の地下にユダヤ人を匿い、
安全な場所に逃がそう」
と提案し、
アントニーナは快諾する。


しかし、そんな事がドイツ側に知られれば、
匿っている人たちはもちろんの事、
ヤンとアントニーナ、
そして、一人息子までが殺されるのは必至・・・。





試写会で観た。


実話だそうだ。


戦争中、ユダヤ人の救出に
尽力を尽くした人といえば、
オスカー・シンドラーや、
杉原千畝を思い出すけれど、
他にもそのような活動をしていた方々がいたのだなぁと、知る。


大っぴらに行動していたわけではないので、
知らないだけで、
調べれば、もっともっといるのだろう。


ヤンが、
一人でも多くのユダヤ人を収容所から助け出そうと
考え出した、その案が素晴らしい。


彼は、動物園の動物がいなくなった檻で、
「豚を飼いたい」と、
ドイツ軍に願い出る。
そして、豚の餌として、
ユダヤ人収容所から出る残飯を貰い受けたいので、
通行証が欲しい、と。


豚を飼っていれば、
食料にも困らないし、
収容所には出入り自由。
二重にも三重にも、上手い考えだと感心する。


ドイツ軍の将校・ヘックは、
アントニーナに、
何やら特別な感情を持ったらしく、
しょっちゅう、動物園にやって来る。


こやつが来る度に、
ユダヤ人たちが見つかりゃしないかと、
アントニーナは緊張し、
観ているこちらもヒヤヒヤするのだが、
ある時、こやつに秘密を気付かれそうになった瞬間、
アントニーナは、
軽い色仕掛けで、なんとか気を逸らす。


すると、それを勘違いしてしまったヘックが、
アントニーナにミョーなスキンシップを
するようになり、
それを見たヤンが嫉妬で怒り・・・


という、
男女問題を織り込むところなどは、
さすが、向こうの映画。
そういう意味では、
「動物が出てくる、親子で観られる映画です」とは、
胸を張っては言えない感じ(笑)。


ユダヤ人を連れ出すヤンと、
自宅で必死に彼らを匿うアントニーナが、
互いに、
「自分がどんなに苦労しているか」と
ちょっと言い争う場面がある。


観ているこちらは、
どちらの大変さも分かるので、
そんな事で、喧嘩しないでほしいと思ってしまう。


人は時に、
自分ばかりが苦労していると思ってしまう事があるけど、
そんな事はなく、
相手の苦労を知らないだけなんだ、
自分も気を付けようと、思わされた場面。


評価 ★★★☆☆

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「ナラタージュ」 [映画]

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〔2017年/日本〕


大学2年生の泉(有村架純)に、
高校時代の演劇部の顧問・葉山(松本潤)から
ある日、連絡が来た。
部員が少ないので、
卒業公演を手伝ってくれないか、と。


泉は、高校時代の自分を思い出す。
葉山に恋していた、
あの切ない日々を。


母校で葉山と再会した泉は、
胸の奥にしまっていた恋心が、
再び動き出したのを感じる。


そんな中、彼女は、
大学の同級生・小野(坂口健太郎)から
愛を告白され、
葉山への思いを断ち切るように、
交際を始めるが・・・。





懸賞でいただいたチケットで観た。
そんな事でもなかったら、
劇場で観ようとは思わなかっただろうけど、
私はどんな映画でも、
観られれば嬉しいので、
とてもありがたい。


それに、松潤の映画のチケットって、
相当な倍率だったのではないかと想像する。
ジャニーズが絡むのイベントの懸賞は、
ほぼ当たらないと考えた方がいい。
なので、とてもラッキーだ。
当選させていただけた事に感謝します。


で、映画。


出てくる人出てくる人、
みんなが苦しそうで、
辛い。


全員が、報われない恋に悩んでいる。
全員が、両思いのようで、片思いのようで。


でも、どんな恋でも、
しないよりはマシだと、
私は、いつもそう思ってる。


たとえ報われなくても、
その恋が、
一瞬でも人生に彩りを与えてくれたのなら、
それはとても幸せではないかと。


まして、この映画のキャッチコピー、
「壊れるくらい、あなたが好きでした」
という経験は、
誰もができるわけじゃない。


色々、思うところはあるけど、
無粋な事は言うまい。
「壊れるくらい、あなたが好きでした」
とまで言う恋に、
他人が口出しできるわけがない。


評価 ★★★☆☆

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「怪談おとし穴」 [映画]

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〔1968/日本〕


倉本治夫(成田三樹夫)は、
貿易会社の社長秘書。
頭脳明晰で、行動力も度胸もある彼は、
社長から、全幅の信頼を寄せられている。


社長の娘・みどりは、
そんな倉本に惚れ、
社長に、倉本をねだる。
娘を溺愛する社長は言った。
「みどりと結婚して、いずれは会社を継いでほしい」と。


巨万の富。
約束された未来。
貧乏だった自分にとって、
これは千載一遇のチャンスだ。
今まで自分を馬鹿にしてきた者を見返してやる。


しかし、倉本には秘密があった。
彼は、会社のタイピスト・悦子と、
肉体関係にあるのだ。
しかも、彼女は妊娠したと言う。


倉本とみどりの噂を聞いた悦子は逆上。
全てを社長に言い付けると言い出した。
そんな事をされては身の破滅。
倉本は悦子の首を絞め・・・。





男が出世のために、
今まで尽くしてくれた女を捨てる。
確かにそれはよくある話だ。


例えば、
モンゴメリー・クリフトとエリザベス・テーラーの
「陽のあたる場所」などは、
この映画のストーリーとほぼ同じだし、
四谷怪談だって、
そんなものだろう。


そして、どれも面白い。
なんだろう、
男の見る夢と、
女の見る夢の違いなのか。


特にこの映画、
成田三樹夫の、
冷徹で、打算的な演技が、
めっちゃ生きている。


彼は、タイピスト・悦子の体を、
思うままにしている。
どう見ても、そこに愛はない。
いわば、性欲の解消の道具と言っていい。


けれど、悦子は彼に惚れている。
もちろん、多少の計算はあろうが、
彼と結婚したいと思ってる。


しかもだ。


悦子は、成田に頼まれ、
外国人バイヤーと一夜を共にし、
成田は、そのおかげで契約が取れ、
社長から、その実力を認められたという経緯がある。
社長は言う。
「どんな手を使ったのかは分からぬが、凄い男だ」と。


成田は、悦子を殺すしかないと、
何度も頭の中でシミュレーションする。


で、その計画通りに殺される悦子。
あとはもう・・・怖い怖い。


評価 ★★★★☆

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