「ハクソー・リッジ」 [映画]
〔2016年/オーストラリア〕
バージニア州で生まれ育った、
デズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、
父が母に暴力を振るうのを見て育ち、
また自身も、幼い頃、
喧嘩した弟に怪我をさせた経験から、
さらに、「汝、殺すなかれ」というキリスト教の教えから、
暴力は決して振るうまい、と思い決めていた。
大人になったデズモンドは、
美しい看護師・ドロシーと恋に落ちるも、
世間は戦争が激化、
自分も衛生兵として、
国の役に立ちたいと、陸軍に志願する。
地を這い、障害物を越える訓練は、
簡単にこなせるデズモンドだが、
銃の訓練になると、
頑なにそれを拒否。
自分は衛生兵として志願した。
人は殺せない、と。
銃を持てない兵士は必要ない。
上官や同僚からの嫌がらせに遭い、
除隊を迫られるデズモンドだが、
信念は揺るがず、
軍法会議では、
彼の意思が認められる。
1945年5月。
沖縄のハクソー・リッジでの、
激しい銃撃戦の中、
デズモンドは負傷した兵士たちを助けるために・・・。
試写会で観た。
実話だそうだ。
まず驚いたのが、
何度も予告で観ていたこの映画の、
「ハクソー・リッジ」という地名が、
沖縄だったという事。
物知らずな私は、
どこか遠い外国での出来事だと、
他人事のように考えていたから。
戦争中、
沖縄で、大変な激戦があったというのは、
知識では知っていたけれど、
まさかこれほど、
阿鼻叫喚を極めていたとは。
戦争って、何のため、誰のためにするんだろう。
みんな、目の前にいる、
「敵」を殺すために必死だけど、
相手に対して、
個人的な憎しみがあるわけでなし、
ただただ、殺人マシンのように、
感情無しに、相手の息の根を止めるだけ。
そこから得られるものなど、何もありはしない。
そんな中、
自分は絶対銃は持たない、という青年・デズモンド。
正直、最初、私は彼を、
「何て変わり者なんだ。戦争で銃に触れないとは、
いる意味ないでしょ」と思った。
けれど、銃を持つ事が、
本当の強さでも、男らしさでもないことが、
ハクソー・リッジでの激戦後に分かってくる。
彼は、
切り立ったハクソー・リッジの崖の上から、
ロープを使って、
負傷兵を下してゆく。
たった一人で。
この映画での敵は、日本人だけれど、
この際、誰が敵とか味方とか、
そのような事は問題ではなく、
戦場で、
銃を持たずに戦った男がいたというのが重要。
ラストに、
デズモンド・ドスさんご本人のインタビュー映像がある。
本当にいたんだ、という感慨無量な気持ちになる。
評価 ★★★☆☆