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「ハナ子さん」 [映画]

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〔1943年/日本〕


ハナ子さん(轟夕起子)は、
お年頃の明るい女性。


ハナ子さんは、ご近所の五郎さん(灰田勝彦)と
結婚の約束をしている。
早く一緒になりたいな。
お父さん、いいでしょ?


晴れて夫婦となった2人は、
ボーナスの日に、
お父さんたちをお食事に招待するが、
お邪魔でしょうと断られる。


やがて、ハナ子さんは、
可愛い男の子を産む。
その子が歩き始めた頃、
五郎さんに、召集令状が届く。
ハナ子さんは、五郎さんを明るく送り出すように、
陽気にはしゃぐ・・・。





この映画の事は知っていた。
戦時中に、戦意高揚のために作られた映画だと。


もし、その事を知らずに観たとしたら、
ヘンテコな映画だなぁ、と思っただけで終わっていただろう。


なにせ、これはミュージカル。
登場人物たちが、何かというと歌ったり、
ダンサーさんたちのレビューが挟まっていたり、
めっちゃテンション高い。


この映画は、捉え方も人それぞれのようだ。


・わざと明るい内容にして、人々の気持ちを洗脳している。
・軍の要請で作られたけど、精一杯の抵抗でわざと明るく作られた。
・そこまで深読みする必要はない。単なるミュージカル
などなど


私は、「そこまで深読みしない」派かなぁ。


だって、むしろホッとするのよ。
現代の、日本の戦争映画に辟易する作品が多いから。
今、作られる戦争映画は、
登場人物たちが、ただひたすらしゃっちょこばって、
家族に対しても敬語、
背中に物差しでも入ってるんじゃないかってくらい、
直立不動で、
笑う事さえ許されない感じ。


いくらなんだって、それはないだろうといつも思う。
親に軽口叩いたり、
笑ったり、
当時だって、みんなしていただろう。
戦争って、
そんな市井の人々が巻き込まれたからこそ、
悲しいものなんじゃないのかなって。


私がこの映画で、一番好きなのはお父さん。
婚約しているハナ子さんに、
「そんなにすぐに結婚しなくても。婚約時代とはいいものだよ」
みたいな事を言う。


これは、かなりショックだった。
私は戦時中は、
「産めよ、増やせよ」のスローガンのもと、
とにかく早く結婚して、子供を産めと、
皆が言っていたのだと思っていたから。


そんなお父さんに、
なんとか結婚OKの言質を取りたいハナ子さんは、
お父さんの背中に、熱いお灸をしてあげて、
どさくさに紛れて、結婚の許可を。
そこに、お父さんの威厳などは微塵もない(笑)。


さらに、お父さんが、子供たちと一緒になってかくれんぼしたり、
新婚の五郎さんが、お掃除をする場面まである。
私が今まで聞いてきた、
戦時中の男性像とは、全然違う。
やっぱり今と大差ないじゃないか。


まぁ、このような映画でも検閲が入ったらしく、
ラストは、ある場面がカットされたらしく、
意味合いが変わってしまったらしいけど。
戦争がなかったら、
この平和な家族は、
平和なままだったんだろうなぁ。


評価 ★★★☆☆

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