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「暖流」 [映画]

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〔1939年/日本〕


志摩医院の院長・志摩泰英は、
傾きかけた病院の経営立て直しを、
日疋祐三(佐分利信)に依頼する。


日疋は早速、仕事に取り掛かる。
まずは看護婦の石渡ぎん(水戸光子)を取り込み、
病院の内情を全て自分に報告するようにと
約束させる。


日疋は、志摩院長の娘・啓子(高峰三枝子)に、
思いを寄せるが、
啓子は外科の医師・笹島と婚約する。


笹島の女癖の悪さを知っているぎんは、
それを日疋に報告、
婚約は解消されるが・・・。





先日、劇場で観た、
増村保造監督の「暖流」。


それより18年も前の作品である、
同じ内容のこの映画。
これはもう、記憶の新しいうちに観て、
味わいの違いを確認せねば、という事で、
早速、借りてきた。


何という事だ。
増村監督とは、まるで違う。
ストーリーは同じなのに、
演出の仕方で、ここまで雰囲気が変わるものかと
思うくらい。
増村監督は大好きだけれど、
この作品に関しては、
内容と、演出がマッチしていないような気がする。
こちらの方が、断然いい。


増村監督が得意とする、
登場人物たち全員が、「どこか変」なのに対して、
こちらは、至極真っ当。
メロドラマだけど、
感動できる。


特にぎんの存在が素晴らしい。
彼女は、日疋に熱烈な片思いをするも、
その気持ちを、どこへ持っていっていいのか分からない。
なにせ彼は、
自分をスパイの手先にくらいしか思っていないし、
さらに、彼が啓子に恋しているのが
明らかに分かるから。


日疋は日疋で、
啓子が笹島と婚約するのを、
黙って耐えなければならず、
こちらも辛い。


啓子とぎんは、女学校時代の友達で、
仲が良い。
この2人が、カフェでする会話が絶妙。
何度かある、山場の一つだと思う。


こちらを観て、本当に良かった。
増村監督版だけだったら、
なんだか奇妙な話という印象だけが残ってしまったと思う。
文春文庫の、
「日本映画ベスト150」でも、
49位にランクインしている。
納得の順位。


本当は、
「暖流 前篇 啓子の巻」
「暖流 後篇 ぎんの巻」
という、2本に分かれた、とても長い映画だったらしいけど、
現存するのは、この124分の、
「再編集版」だけのようだ。
まぁ、再編集だとしても、
観られたのはとても幸せ。


あと1本、
啓子を岩下志麻さんが演じている作品があるようだけれど、
こちらはソフト化されていないようだ。
いつか名画座にかかるといいなぁ。


評価 ★★★★☆

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