SSブログ

「名もなく貧しく美しく」 [映画]

namonakumazusshiku.jpg
〔1961年/日本〕


聾唖者の秋子(高峰秀子)は、
寺の息子・真悦と結婚していたが、
終戦後、真悦が死んでしまうと、
体よく実家に帰される。


実家の母は受け入れてくれたが、
姉・信子(草笛光子)と、弟・弘一は冷たい。
そんなある日、秋子は、
聾学校の同窓会で、
同じく聾唖者の片山道夫(小林桂樹)と再会し、
道夫と人生をやり直そうと,
彼のプロポーズを受け入れる。


やがて、2人の間に可愛い男の子が生まれたが、
夫婦の耳が聞こえないせいで、
その子を死なせてしまう。


失意のどん底にあった秋子だが、
再び、妊娠。
そんな時、グレた弘一が勝手に家を売り払ってしまい、
行き場を失った母がやって来る。
母がいれば、育児も不安はないと、
秋子たちは喜ぶ。


生まれた子供は一郎と名付けられ、
夫婦は懸命に子育てをするが、
学校に行く頃になると、
両親の耳が聞こえない事を友達にからかわれる一郎は、
次第にひねくれた態度を見せるようになり・・・。





耳の聞こえない夫婦が、
力を合わせて懸命に生きる様子を描く秀作。


終戦直後のモラルは、
こんなものだったのかと思うほど、
人々は、聾唖者に対して、
あからさまな差別の色を隠さない。


どちらかというと、
辛い場面の方が多い。
子供を亡くしてしまったり、
ぐれた弟が、
生活の命綱とも言える秋子のミシンを、
トラックに乗せて、
運び去ってしまったり。


秋子は、弟を殺して自分も死のうと、
電車に乗るのだけれど、
彼女を追いかけて同じ電車に乗った道夫と、
隣同士の車両の窓越しに、
手話で会話する場面が、
この映画の一番の見どころだろう。


変な言い方だけど、
私はその場面が少し羨ましかった。
彼らは、耳が聞こえないというハンデを持ってはいるけれど、
耳を介さなくても、
相手と会話できるなんて、
すごい事ではないか、と。


子育ての場面も、
考えさせられる事が多い。
ひねくれてしまった一郎に、
秋子は、自分を責め、
「子供なんて生まなければよかった」とまで思い詰める。


けれど、子供だって、
いつまでも子供じゃない。
小学校の高学年になった頃の一郎は、
とても頼もしい様子を見せる。
心からホッとした場面。


ラストは、
「そうきたか」って感じ。
詳しくは書かないけれど。


評価 ★★★★☆

nice!(62)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画