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◆「二重生活」と「いちど尾行をしてみたかった」◆ [本]


二重生活 (角川文庫)

二重生活 (角川文庫)

  • 作者: 小池 真理子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/11/25
  • メディア: 文庫


6月25日に公開される映画、「二重生活」。
観に行くかどうかは分からないけど、
いい機会なので、小池真理子さんの原作小説を読んでみようと
借りてきた。


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主人公の大学院生・白石珠は、
大学で、「他者のあとを付け、自分と他者を置き換える」という文章を読み、
強い興奮を覚える。
それは、「文学的・哲学的尾行」というもので、
対象者は誰でもいいという


ある日、珠は、
自宅マンションの向かいの一軒家に住む、
一点の曇りもなさそうな幸せそうな家庭の若い主人・石坂が、
駅に妻の運転する車で送られてきた場面に遭遇する。
「石坂を尾行してみよう」
咄嗟に思い付いた珠が彼のあとをつけてゆくと、
表参道駅で下車した石坂は、あるカフェに入る。
すると、やって来たのは、彼の恋人らしき女。
2人は人の目をさして気にする風でもなくイチャイチャし、
クリスマスに泊まるホテルの相談をし始める・・・。


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小説としての深みはないけれど、
映像にしたら、なんとも面白そう。
登場人物たちの絵が頭の中に浮かぶ。


珠はその後、
2度ほど、石坂のあとを付けるのだけれど、
彼に気付かれて、
詰め寄られ、
仕方なく、
「文学的・哲学的尾行」の事を
石坂に説明する。


しかし、どうやら彼は、
他人を尾行する、という行為から得られる興奮を
1%も理解できないらしく、
読んでいる私は、軽く失望してしまった(笑)。


いや、石坂の感覚が普通なのは分かっている。
誰だって、自分を尾行する人間がいたら、
不気味で、そして怖く思うのは当然だ。


私が珠に共感を覚えるのは、
過去に、
「いちど尾行をしてみたかった」というルポ本を読んでいる事が
とても大きいと思う。

いちど尾行をしてみたかった (講談社文庫)

いちど尾行をしてみたかった (講談社文庫)

  • 作者: 桝田 武宗
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/02
  • メディア: 文庫


ずいぶん前に読んだので、
細部は忘れてしまったけれど、
著者は、街で出会った見知らぬ一人をターゲットに定め、
その人間のあとを付いてゆく。
目的はない。
興味を引かれた人物がこれからどこへ行くのか、
どんな生活をしているのか、
それを見届けるだけ。


これを読んだ時は、
「面白そう、やってみたい」と思ったものだ。
もちろん思っただけで、実行した事はないけれど、
世の中は、
こういう事に興味を覚える人間と、
全く理解できない人間の2種類に分かれるのだという気がする。
どちらが正しいというのは決してなく、
それはもう感覚の違いとしか言いようがない。


こんな事を書くと、
私がとても危ない人間に思われそうな気もするけど、
決してそんな事はないです(と思います(笑))。
ただ、今後もしも、
本当に尾行を実行したとしても、
それをここには書けないかなぁ。
本物の危ない人と認定されてしまう(笑)。

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