SSブログ

「足摺岬」 [映画]

ashizurimisaki.jpg
〔1954年/日本〕


昭和9年。
「アカ」の疑いで投獄されていた、苦学生・木村功は、
上京した母のおかげで、なんとか釈放され、
下宿に戻ってきた。


本郷菊坂の下宿には、
美しい娘・津島恵子とその弟、
学友、
同じく「アカ」の疑いで刑事に張られている学者などが住んでおり、
皆、貧乏に喘いでいる。


ある日、界隈を荒らしている強盗犯として、
津島の弟が連行される。


疑いが晴れ、弟は釈放されたが、
結局自殺、
津島は、東京にいるのが嫌になり、
故郷の足摺岬に帰った。


木村は、電報で母の死を知り、
また、自身も喀血し、
絶望の中で、
津島に会いに、足摺岬まで行く・・・。





暗く、救いようのない物語。
しかし、暗ければ駄目なのかと言えば、
そのような事は絶対になく、
昭和初期の日本人の暮らしがよく分かるという意味でも、
悪い映画ではない。


当時の人々の貧しさが辛い。
主人公の木村功は、
学生ではあるけれど、
学費も、食費も、下宿代も滞りがちで、
バイトをしていても、中々追いつかない。


田舎の母は後妻で、
義理の父は木村を嫌っている。
頼れる者などいはしない。


それは津島恵子と弟にしても同じ。
彼女たちの兄は、
戦争で捕虜となり、殺されているが、
「気合が足りないから捕虜になった」などと
酷い言いがかりを付けられ、
弟は学校でいじめられている。


さらに弟が
強盗犯として逮捕された理由が凄い。
「新聞配達などして、貧乏だからお前が犯人だ」、って、
そんな馬鹿な事あるかい、と言いたくなるけれど、
当時はそんな事もあったのだろうか。


誰も彼もが八方塞。


足摺岬に帰った津島を、
木村は訪ねて行くが、
そこでも、ショックな出来事が。


もう、何もやっても、
裏目か、後手にまわるかで、
本当にどうしようもないのだけれど、
それでも、ほんの少しだけ、
希望の光を抱いて、木村は生きていこうと決意する。
なんとか頑張ってほしいと願わずにはいられなかった。


足摺岬って、
私はなんとなく、東北なのだと思っていたけれど、
高知県なのだと、初めて知った。
なんで東北だと思い込んでいたんだろう。
理由はないけど、
「岬」と聞いただけで、勝手に東北のイメージだと
決め付けてしまっていたのかもしれないな。


評価 ★★★☆☆

nice!(61)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画