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「赤ちゃんよ永遠に」 [映画]

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〔1972年/アメリカ〕


近未来。
人類は、環境汚染と人口増加に悩み、
ついに全世界に、「出産禁止令」が発令される。
この法律を破った者は、即日死刑。


人々は、赤ちゃんを産む代わりに、
人間そっくりのロボットを支給され、
それを子供の代わりに可愛がるしかない。
隠れて子供を産んだ夫婦が、
泣き叫びながら連行されていく場面に
遭遇する事もある。


そんな中、
ラス・マクニール(オリバー・リード)の
妻のキャロル(ジェラルディン・チャップリン)は、
現在、妊娠4か月である事を
ラスに告げた。
子供を欲していたラスたちは、
お腹の子を出産しようと決意する。


月が満ち、生まれた男の子は大変に愛らしく、
夫妻は夢中になるが、
ある日、隣家の夫妻・ジョージとエドナに見つかってしまう。


ジョージたちは、密告はせずに、
赤ちゃんを可愛がってくれていたが、
その執着は次第にエスカレートし、
この子は4人の子供として育てよう、
さもなくば密告すると脅してくる・・・。





少子化に悩み、
なんとか出生率を上げたいと躍起になっている
今の日本では考えられないようなSF。


70年代では、
まさか、少子化なんて未来が来るとは想像もしなかったのだろう。
むしろ、このまま人間は増え続け、
それによる食糧難が、大変な不安材料としてあったのだと思う。
まぁ、少子化がどこの国にも当てはまるわけでは
ないだろうけれど。


誰も彼もが赤ちゃんを欲しているわけではないけれど、
赤ちゃんが欲しいと思っている夫婦にとっては、
この映画の法律は、地獄の苦しみだ。
法律は30年続けられるという。


この期間が、出産適齢期に当たってしまった女性は、
我が身の不運を嘆き、
泣くしかないわけで、
その気持ちを思うと胸が痛い。


そんな中、子供を産んでしまったラスとキャロル夫妻。
彼らが、我が子を愛する気持ちは当然分かるとして、


印象深いのは、隣家のジョージとエドナ夫妻。


彼らの、赤ちゃんに対する執着は、
常軌を逸していて、
観ていてイライラするのだけれど、
一方で、彼らを責められないという思いも、どこかにある。


だって、本物の赤ちゃんの可愛さったら、
それはもう、政府から支給された人形なんかの比ではなく、
ふわふわなのに強い存在感、
喃語の愛らしさ、
全ての希望が、小さな体に詰まっているような感じで、
他人の子とはいえ、手放せなくなるのは当然の事と察する。


しっかし、この政策、
当然だけど、大変な愚策よね。
30年間も、ポッカリとある世代の人間が一人もいなかったら、
社会は一体どうなっちゃうんだって話で。
大学を出て社会に出た22歳の若者のすぐ上は、52歳という事になる。
そんな歪な人間構成で、
社会が円滑に回っていくとは思えない。
まぁ、架空の話だからいいけど。


人の出生に、政府は口を出すものではないと私は思う。
戦前・戦中の「産めよ増やせよ」の政策が、
今の高齢化を招いたとも聞く。
不自然な事をすれば、不自然な結果を招くだけ。
産むも産まないも個人の自由に任せれば、
それで良いのでは。


評価 ★★★☆☆

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