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「気違い部落」 [映画]

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〔1957年/日本〕


東京都下にある、
貧しい集落、
通称、「気違い部落」では、
人々は、国の法律より、
部落の掟を優先にして生きている。


特に、親分格の野村良介(山形勲)の権力は強く、
誰も逆らえない。


そんな中、野村に楯突く男が現れた。
百姓の村田鉄次(伊藤雄之助)だ。
鉄次は、祖父が残してくれた土地を、
法律上は自分の物だと言い、
杭などを打ち込むが、
それが野村の逆鱗に触れ、
村八分にされてしまう。


実は、鉄次の娘・お光(水野久美)と、
野村の息子・次郎(石浜朗)は恋仲で、
しょっちゅう逢引を重ねていたが、
お光が肺病を発症し・・・。





このタイトルがもう。


「気違い」と「部落」という、
差別用語? 放送禁止用語?が
2つ重なっちゃってるという、強烈さ。


名画座の但し書きには、
「ソフト化も、放送化も難しいので、
この機会に、劇場鑑賞をどうぞ」、とある。
私はどちらの言葉も、
特に差別とも感じないけれど、
機会を逃すのが嫌なので、観に行った。


観る前の想像では、
凡人の私などには考えもつかない
愉快で、可愛い人々が、
それこそ、「気違い沙汰」のように、
面白い事を繰り広げてくれるのだろうかと、
ワクワクしていたのだけれど、


そういった事は、
最初のほんの数場面。
あとは、辛く悲しい村八分のお話で、
こんな事が、そう遠くもない過去の日本に
あったのだとしたら、
それは本当の、「気違い」じゃないかと思ったわけで。


村八分って本来、
村にある十個の行事のうち、
八個は参加させないけど、
残りの2個、
「葬式」と「火事」にだけは手を貸すって事でしょう。


けれど、この映画では、
村人が山形勲の圧力によって、
葬式にも参列しない。


もう何も言えない。
それ自体を映画として楽しめばいいのかもしれないけれど、
私には笑えない。
人々が寄ってたかって、
一つの家族だけを徹底的に排除するって、
それを笑える人なんているんだろうか。


しかし、これは、
ある意味、日本の縮図とでも言おうか、
人間の本能とでも言おうか、
そういう面もあるのだろうか。
強い者に従ってしまう、弱い自分。
誰かを排除する事で、強まる絆。
やだやだ。
でも、やだとは思うけど、
自分も、そんな社会を構成する一員。
あまり強い事は言えないのかもしれないし。


それでも、主人公は強い。
決して負けないラストに、
希望が持てる思い。
できれば勧善懲悪なラストが観たかったけど、
現実は、そうは甘くないって事か。


評価 ★★★★☆

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