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「東京のえくぼ」 [映画]

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〔1952年/日本〕


丸の内の大手商事会社・紀ノ国屋商事の
入社試験を受けに行く途中の伸子(丹阿弥谷津子)は、
バスの中でスリに財布の盗まれてしまう。


乗り合わせた乗客全員が、警察に連れていかれ、
荷物検査を受けると、
一人の青年紳士のポケットの中から、
伸子の財布が出てくる。


その後、
高倍率を勝ち抜き、試験に合格した伸子は、
入社一日目に、初めて社長・紀ノ国屋文太郎と対面して驚く。
この社長こそ、
スリの疑いを掛けられ、留置された男だったからだ。


社長秘書として働く事になった伸子は、
文太郎の苦悩を知る。
彼の毎日は、分刻みでスケジュールが詰まっており、
あとは、書類にめくら判を押すだけ。
好きなホルンを吹く時間も無い、と。


伸子は、そんな文太郎を、
自分の家に連れてゆき、二階に下宿させる。
伸子の両親(柳家金語楼・清川虹子)は、
伸子が恋人を連れてきたと思い込むが、
会社では、社長が失踪したと大騒ぎになり・・・。





昔の少女マンガによくある、
「痴漢だと思った男が転校生(もしくは新任教師)だった」みたいな出だし(笑)。


もちろん、それは後で間違いだったと分かるのだけれど、
スリで捕まった、上原謙演じる社長は、
お育ちがいいのか、ぼんやりなのか、
疑いを強く否定する事もなく、
留置所では、お行儀よく正座している(笑)。


彼はもう、人生に疲れてしまっているように見える。
だって、凄いスケジュールなのよ。
人の結婚式でスピーチしたと思ったら、
30分後に今度はお葬式に、
その後、また別のパーティへ、みたいな感じで。


その辺りをテンポのいい演出で見せてくれて、
可笑しい。
朦朧としている社長は、
お祝いの席で、
「ご愁傷様」みたいな紙をを読んじゃって、
人々を驚かせる。
今ならコントでもしないような事だけど、
当時は面白かったんでしょうね。


で、秘書になった丹阿弥谷津子演じる伸子が、
自分の家に連れていくんだけど、
ここからは、「王子と乞食」の物語っぽい。


伸子の父は、
文太郎を社長とは思わず、
自分の勤める町工場(紀ノ国屋商事の子会社よ(笑))で、
文太郎を働かせる。
空しいと思っていた自分の人生が、
実は、自分の押した印鑑一つにも、
とっても重要な意味があると気付く文太郎ってオチで。


昔の東京の牧歌的な様子がいい。
スリがいると訴えられたバスの運転手は、
「よしきた!」と、
路線を変更して、
交番に横付けして、
乗客たちも、文句も言わずに、
荷物検査を受ける、のんきぶり(笑)。


そこで働く婦人警官を
高峰秀子がチョイ役で出ているのも見どころ。


評価 ★★★☆☆

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