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「雪崩」 [映画]

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〔1937年/日本〕


日下五郎・(佐伯秀男)と蕗子・(霧立のぼる)は、
新婚1年目の夫婦。
蕗子は幸せそうに1年前の事を思い出していた・・・。


その日、駆け落ち同然に名古屋のホテルに着いた、
五郎と蕗子。
しかし五郎は、「これは駆け落ちではない」と言い、
父に電報を打ち、自分たちの居場所を伝える。
翌日やって来た父は、大変な紳士で、
二人を叱る事なく、結婚に至ったのだ。


ところが現在の幸せそうな蕗子と裏腹に、
五郎は秘かに、幼馴染の弥生(江戸川蘭子)と会っていた。
五郎曰く、自分が本当に好きだったのは弥生で、
しかし、弥生の態度がハッキリしないせいで、
蕗子と結婚したのだと言う。


弥生はそんな五郎を、
「今更何を言うか」と受け付けず、
蕗子が可哀相だと、
他人の気持ちを慮る優しさを持っている。


その後、五郎は、
自分の気持ちを父に相談するが、
人格者の父は、
五郎の勝手な言い分を責め、
「そんな事は許されない」と突っぱねる・・・。





「雪崩」というタイトルから、
雪山の話かと思ったけれど、
そうではなかった(笑)。


「雪崩」というより、「砂上の楼閣」みたいなお話。
とにかく主人公の五郎が身勝手な男で、
ここまで手前勝手だと、
逆にお見事だと言いたくなるくらい(笑)。


1年前に駆け落ち同然で連れ出した妻は五郎を信じ、
心の底から愛してくれているというのに、
彼は1年でもう妻に飽きたのか、
恋仲だったらしい幼馴染に再び言い寄るという勝手っぷり。


これは浮気というより、
元々は妻の方が浮気相手で、
本命に戻ったというのが本当のところであろうか。


彼の家はどうやら古い時代の日本の金持ちらしい。
経済的な裏付けがあるから、
そんな勝手ができるようで、
我儘なドラ息子と言っていい。


父親は立派なんだけどなぁ。
立派な親の子が、必ずしも立派ではないという
典型的な例であろうか。


こんなアホな男でも、
取り巻く女たちがしっかりしているから、
物語が成り立つ。


まず彼の妻は、
性格の大人しい女で、
(それゆえ、五郎は物足りないのであろうが)
しかし、一度結婚したら、
夫には絶対に従うという、ある種の強さがある。


そして弥生は、
五郎の勝手な求愛を撥ね退ける常識を持った女だ。
彼女が彼の申し出を受けていたら、
話の流れは変わっていただろう。
弥生の真っ当さにホッとする。


五郎のような男に、
こんな素敵な2人の女、勿体無いよ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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