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「隣の八重ちゃん」 [映画]

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〔1934年/日本〕


帝大生の恵太郎は、
甲子園を目指す弟・精二の為に、
キャッチボールの相手をしている。
すると、精二のコントロールが乱れ、
ボールが隣家に飛び、窓ガラスが割れる。


それは日常茶飯事のようで、
隣の娘・八重子はまるで動じない。
八重子の母・浜子も、
「キャッチボールが始まると、奥の部屋に避難する」と笑う。


そんなのどかな日々の中、
ある日、八重子の姉・京子が、
突然、婚家から戻ってくる。
素行の悪い夫に愛想を尽かして出てきたのだと言う。


京子はなぜか恵太郎に急接近し始め、
恵太郎に仄かな思いを寄せる八重子は、
心穏やかではいられなくなり・・・。





昭和9年に作られたという、
古い古い映画。


のどかだ。
家の縁側の窓は常に開かれ、
普通に隣の息子がやって来る。
「母が留守なんだ」と。
そして、「お腹空いた」と(笑)。


主婦も当たり前のように
ご飯を出し、
買い物に行ってしまう。
古い日本の近所づきあいの様子が
手に取るように分かる。
それは微笑ましくもあり、
でも、今の自分に同じ事ができるのかと言えば、
ちょっと難しいかもと思ったり。


八重ちゃんと女友達が、
自分たちの胸の大きさを比べ合い、
そして、その会話を聞き入る恵太郎が可笑しい。
時代が変わっても、
女子高生の悩みだけは同じらしい(笑)。
そして、男の子の興味も。


しかし、そんなのどかな人々にも、
悩みは突然やって来る。


婚家から戻ってきた長女。
その理由を聞くと、
飛び出してくるのも無理はないかな、と思われるけれども、
それでも当時は、
女が離婚し、
一人で生きていくって、
きっと今よりずっと大変だっただろうと察する。


今後、どうやって生きていこうか、
半ば親を脅すようにも見える長女の相談。
まぁ、現代も、
若いシングルマザーの働き場所が少ない、なんて話をたまに聞くから、
現状はそう変わってはいないのかな。


ラストが可愛い。
「そうきたか」という終わり。
ここにも、古い日本の助け合いの心が
上手く表されている。


このような古い映画を観る度に、
この後、日本は激しい戦争で
こういったのんびりした生活は
一度リセットされてしまうんだよな、といつも思う。
当たり前の事だけど、
築いてきたものを全て無にしてしまう戦争に、
私は絶対に反対だ。


評価 ★★★☆☆

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