SSブログ

「秘密と嘘」 [映画]

himitsutouso.jpg
〔1996年/イギリス〕


ロンドンで暮らす中年女・シンシア(ブレンダ・ブレッシン)は、
結婚歴はないが、一人娘ロクサンヌ(クレア・ラシュブルック)を育てている。
ロクサンヌは反抗的で、子育てに成功したとは言えず、
また、近所に住む弟モーリス(ティモシー・スポール)は、
大きな家を新築したというのに、
招待もしてくれない。


一方、義理の母を亡くした、
黒人女性・ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バティスト)は
産みの母に会うために、
福祉事務所に行き、
自分の出生の関する書類を見る。
すると、実母が白人だという記述があり、驚く。


ホーテンスは、実母に会うべきか逡巡し、
やっとの思いで電話をする。
なんとか会う約束を取り付け、
約束の場所に行くと、
母・シンシアが待っていた。


ホーテンスが黒人である事に驚いたシンシア。
15歳で出産した彼女は、
一度も子供の顔を見ずに、養子に出したと言う。
2人は気が合い、しょっちゅう会うようになる。


モーリスと彼の妻から連絡があり、
ロクサンヌの誕生日パーティを、
新しい自分たちの家でしないかと言われる。
シンシアは、
「私の『友人』のホーテンスも招いていいか」と言い・・・。





素晴らしい映画だ。
142分と長くて、飽きたらどうしようと不安だったけれど、
最後まであっと言う間。


ここにはヒーローもヒロインも出てこない。
毎日の生活に、そう楽しい事もなく、
孤独に苦しみ、
それでも何とか日々を過ごしている、
そんな市井の人々の人生が描かれる。


主人公のシンシアは、
甲高い声で話す中年女で、
娘のロクサンヌの生活に干渉する。
特に、避妊に関して口出しする様は、
無神経で、観ているこちらが辟易する。


しかし、一方で彼女の孤独を強く感じ、
胸が締め付けられる思いがする。
そうやって口を出せば出すほど、
娘は離れてゆくのに、
それに気付かない淋しさ。
誰も自分を必要としてくれない一人な感じに、
誰もが抱える孤独を思い、
胸が詰まる。


そんなシンシアが見つけた、
心の拠り所、
それが、もう一人の娘・ホーテンス。
彼女はロクサンヌよりずっと知的で、
それなりの暮らしをしている。
シンシアが時に発する、とんでもない発言にも耳を傾けてくれる優しさもあり、
シンシアが夢中になるのも仕方ないと思われる。


シンシアがホーテンスを
どんな経緯で妊娠したのかについては描かれていないので分からない。
けれど、娘の肌の色さえ知らなかった事、
そして、ホーテンスに父の事を尋ねられた時の、
取り乱した感じからすると、
相当、辛い目にあったのだと想像される。
ロクサンヌに、
避妊の事を口やかましく言っているのも、
ここで話が繋がる。


そしてクライマックスの、
モーリスの家でのパーティ。
最初は穏やかに過ごしていた人々の
感情が剥き出しになる場面は圧巻。
当然パーティは修羅場と化し、
最後まで目が離せない。


人間の素晴らしさ、
滑稽さ、
哀しさ、
全てが詰まった映画。


評価 ★★★★★

nice!(46)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画