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「悼む人」 [映画]

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〔2015年/日本〕


週刊誌の記者・蒔野(椎名桔平)は、
ある事故の現場で、
何かを祈るような、不思議な動きをしている
青年と出会う。


その後、青年と再会した蒔野は、
彼が坂築静人(高良健吾)という名前で、
不慮の事件や事故で亡くなった人の為に、
全国を歩きながら、「悼んでいる」のだと知らされる。


一方、静人の実家では、
そんな静人の行動のせいで、
妹・美汐(貫地谷しほり)の結婚が破断となり、
また、母(大竹しのぶ)は、
末期癌で、いつ亡くなってもおかしくない状況となっている。


ある理由で夫を刺し殺した奈義倖世(石田ゆり子)は、
刑期を終え、出所するが、
どこにも行き場がないうえに、
いつまでも夫の呪縛から逃れられず、
苦しんでいる。
そんな中、静人と出会った彼女は、
いつしか行動を共にするようになり・・・。





天童荒太さんの原作小説を読んだのは
2009年だと記憶している。


今まで小説でも読んだことがなければ、
現実でも出会った事も、聞いた事もない主人公・静人の行動に、
とても戸惑った事を覚えている。


私の友人の一人は、この小説をハッキリと、
「嫌いだ」と言った。
私は、「嫌い」とまでは思わないけれど、
賛否が分かれる内容なのは想像がつく。


静人という青年が、
なぜ、会った事もない赤の他人の死を「悼む」ために、
自費で全国を行脚しているのか、
本を読んで理解できなかったけど、
映画を観ても、
まだ理解できない。


もし、現実にこのような人に出会ったとしたら、
おそらく一番最初に思うのは、
「何かの宗教の人」という事だろう。
怪しげな新興宗教なら、近寄らない方がいい、
そう判断してしまう。


けれど、彼は宗教とは何の関係もなく、
ただ自分の意志だけで「悼んで」いる。
よく分からないけれど、
彼は人の死に対して、
一般的な常識の範疇を越えて、
ものすごく過敏なのではないかと思う。
そうせずにはいられない衝動が、
彼を「悼む」事に駆り立てる。


一つ清々しいと思うのは、
静人が、「悼む」行為を、
パフォーマンス的に行っているのではないという事。
もし彼が、
他人の目やマスコミなどを意識しているとしたら、
それはもう、とてつもなく嫌らしい行為に感じられるだろうが、
そういった感覚はまるでなく、
むしろ放っておいてほしいと考えているようだ。
それが彼を最後まで「嫌い」と思えない理由なのかもと思う。


石田ゆり子演じる倖世と夫の夫婦関係や、
夫殺害に至る経緯も実に独特で、
世間の狭い私には、
会った事もないような人たちだ。
この夫婦の関係も、私には理解ができない。
そんなのばっか(笑)。


考えさせられるような、
何も考えられないような(笑)、
何とも言いようのない物語。
これを機会に、続編のような「静人日記」を読んでみようと思う。
もう少し踏み込んでみるためにも。


評価 ★★★☆☆

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