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「流転の王妃」 [映画]

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〔1960年/日本〕

明治時代。
侯爵令嬢・竜子(京マチ子)は、
日本の軍部の思惑により、
満州の皇帝の弟・溥哲(船越英二)と
半ば強引に結婚させられる。


誰も知る人のいない中国での生活は、
不安そのものであったが、
溥哲はとても優しく、
竜子はこの地で幸せを見出してゆく。


長女・英生も生まれ、
何も問題のない生活が続いたが、
第二次世界大戦が始まり、
日本が負けると、
溥哲は、竜子たちを残して、
先に日本へ行くことになってしまう。


大混乱の中、残された竜子たちは、
日本へ帰る為、中国大陸をひたすら歩き続けるが、
ついに刑務所に入れられ・・・。





中国の「ラストエンペラー」の弟に嫁ぎ、
数奇な運命を辿った
日本人女性の物語。


そう遠くない昔に、
日本と中国は、このような密接な関係があったのだなぁと、
今の中国との関係を思うと、
その違いを考えずにはいられない。


国が、軍事の為に、
他国の皇帝の弟と日本人を結婚させる事自体、
今は考えられない事だけれど、
時代が時代だったのだろう。


言葉もまるでできない他国へいきなり嫁ぐなど、
どれだけ心つぶれるような思いであったか、
竜子の想像すると涙が出そうな話だけれど、
溥哲の優しさにホッとする。
これで彼が暴君だったら、
気がおかしくなる所だっただろう。
溥哲は日本語も話せるので、
それも竜子には慰めになったに違いない。


そして、終戦直後の大混乱期。
この時、中国や朝鮮にいた日本人が、
どれほどの思いをして日本に引き揚げてきたかは、
様々な映像や本で知る事ができるけれど、
特に竜子は、皇帝の弟の妻。
一般人とはまた違う苦労がある。


しかも彼女は、皇帝の妻・婉容を連れているのよ。
婉容は病気で、他の者のように行動するのは難しく、
けれど責任感から、彼女を支える竜子の強さったら。
これぞ日本の女。


この婉容の人生も、
ちょっと検索しただけで、本当に色々あった事が分かる。
映画では病気とされているけれど、
実際は重度の阿片中毒であったらしいし、
中毒者になった理由も哀しいものがある。
もう一度、「ラストエンペラー」を観たくなる。


監督は田中絹代さん。
田中さんが京マチ子さんを主演に据えて、
このような映画を撮るとは、
その組み合わせだけでワクワクしてしまう。


評価 ★★★☆☆


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