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「悪魔の手毬唄」 [映画]

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〔1961年/日本〕


大スター・和泉須磨子(八代万智子)が、
故郷の鬼首村に帰ってくる途中で、
何者かに殺害される。


須磨子は、村一番の有力者・仁礼剛造(永田靖)の娘で、
剛造には常に悪い噂がつきまとっており、
犯人の目星は付きそうにもない。


葬儀の最中、彼女の最新曲「鬼首村手毬唄」が
テレビで放映され、
参列者たちは、生前の須磨子の元気な姿に見入るが、
剛造はなぜか、恐怖に怯えたような顔をする。


そんな村に、
若い男が現れる。
金田一耕助(高倉健)と名乗る男は、
鋭い洞察力で、
事件の解決へと動き出す・・・。





観たかったの、これ!
高倉健さんが金田一耕助を演じていた過去があると知ったのは、
ずいぶん前だけれど、
ソフト化はされていないようで、
観る事は殆ど諦めていたから。
今回、名画座にかかったので、
会社を休んで行っちゃった(すみません(笑))。


金田一耕助というと、
おそらく一般的に、
ヨレヨレの服に、ボサボサの頭というのが、
イメージされると思うのだけれど、
この映画で高倉さんが演じる金田一は、
全然違う。


オープンカーに乗って、
短髪で、
シャレたジャケットを着て颯爽と現れるその様子は、
これが金田一?という感じで、
かっちょいい(笑)。


けれど、物語が進むにつれて違和感。
「悪魔の手毬唄」って、こんな話だったっけ?って。


横溝正史は大好きだけど、
「悪魔の~」はずいぶん前に一度読んだきりで、
細部は忘れてしまっていたので、
私の記憶違いか、とも思ったり。


でも、家に帰ってネットで調べたら、
やっぱり全然違ってた。
なんとこれ、
脚本家の方が、原作を読まずに書かれたそうで、
横溝の小説のタイトルだけを借りた、
全く別物の、
トンデモ映画と思った方がいいようだ(笑)。


謎解きも、全然面白くなく、
伏線もない。
それから、登場人物たちが
言い争いを始めると、
物凄いがなり合いで、うるさくてたまらない(笑)。
もう少し冷静に話し合えないものかね、って。


まぁ、観たかった作品を観られただけで満足。
近いうちに、市川崑監督・石坂浩二主演の、
本物の(?)方を観てみようと思う。


評価 ★★★☆☆

「江戸っ子祭」 [映画]

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〔1958年/日本〕


二代目将軍・秀忠のお世継ぎ・竹千代(川口浩)は、
お城での窮屈な生活に辟易する日々。


竹千代が、外の世界を見てみたいと言い出したため、
旗奉行・大久保彦左衛門(中村鴈治郎)は、
知り合いの魚屋・一心太助(長谷川一夫)に、
竹千代の身を預ける。


彦左衛門から、「竹千代は貧乏旗本の三男で変わり者」と聞かされた太助は、
町人の日常生活から、魚のさばき方まで
ビシビシ教え、
竹千代は次第に魚屋としての生活に慣れ親しんでゆく。


また竹千代は、近所の八百屋の娘・お豊(野添ひとみ)と
互いに仄かな恋心を抱くようになり、
お豊に片思いする大家の庄吉に、
喧嘩を吹っ掛けられたりもするようになる。


竹千代の浮世離れした様子を不審に思った太助は、
彦左衛門に詰め寄り、
彼が、将軍の跡取りだと知って驚く・・・。





威勢のいいタイトルとは裏腹に、
なんだか切ない物語。


というのも、
一心太助は、預かった竹千代の、
あまりに世間知らずな様子に、
最初は戸惑うけれども、
もともと素直で可愛い彼を次第に気に入り、
本当の弟のような気持ちを抱くようになるんだな。


竹千代も、太助を慕って、
鰻を手際よくさばけるようになったりして、
すっかり魚屋の小僧風情になってゆく。


でも、どんなに2人が心を通わせるようになっても、
所詮は身分違い。
竹千代は将軍家の跡取りで、
いつかはお城に帰らねばならぬ身。
二人の別れの場面は、
観ているこちらも辛い、見せ場であった。


とはいえ、そこに行き着くまでは、
何度も声をあげて笑う。
特に、竹千代の、
世間知らずで、何もできない様子が可笑しくて。


川口浩様の映画を観たのは久し振りだけど、
やっぱり素敵♪
将軍家の跡取りといえば、
いわば王子。
浩様の王子のお姿は、
それはそれは可愛く、美しく、
私の理想にピッタリだと再確認(馬鹿~(笑))。


それから、今更だけど、
長谷川一夫さんって上手いのねぇ。
男気のある一心太助の役がピッタリはまってて、
カッコよかった。
まだ若い浩様は、
長谷川さんの胸を借りてるって感じだったな。


野添ひとみさんも可愛い。
やっぱり彼女と浩様が並んでる姿はいい!
なんて素敵なカップルなんでしょう。


評価 ★★★★☆


「クロサワ映画」 [映画]

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〔2010年/日本〕


女性3人組のお笑いグループ・森三中は、
メンバーのうち、大島美幸と村上知子が結婚し、
独身者は黒沢かずこだけとなってしまった。


幸せそうな大島と村上に、
「女芸人は恋をしたら面白くなくなる」と心で毒づきながらも、
実は淋しくてたまらない黒沢。


ある日、大島の結婚8周年記念パーティに出席した黒沢は、
会場で、イケメン俳優・渋江譲二と知り合い、
心ときめく。


翌日、テレビ局で渋江と再会した黒沢は運命を感じ、
また、渋江も黒沢に好意を寄せてくれている様子で、
デートの約束をする。
初めての恋の予感に有頂天になった黒沢は、
友人のお笑い芸人・椿鬼奴、大久保佳代子、光浦靖子らから、
恋愛の手ほどきを受けるのだが・・・。





まず、このタイトルがいいな。
友人に、「クロサワ映画」って知ってる?と聞いたら、
「黒澤明の映画?」と逆に尋ねられた。
そりゃあ、誰だってそう思うだろう(笑)。


映画自体は、黒澤作品とはほど遠い、
2時間ドラマの域は出ていないけれども、
森三中の黒沢かずこを主人公に、
吉本の芸人さんが多数本人役で出ていて、
お笑い芸人の私生活が垣間見られ、
ミーハーな私の心は大いに満足。


特に、メイク室での、
芸人さんたちの会話が可笑しくてたまらない。
庄司智春が自分の体験を踏まえて、
黒沢の恋愛相談に乗ってやったり、
その話に割り込んで、陣内智則が口を出すと、
「彼の話は参考にならん」とばかりに、
全員が無視したりで大笑い。


陣内は、私の好みのルックス、ナンバーワンの芸人さん。
たまにテレビを点けて、彼が出ていると、
ニコニコしながら観てしまう。
この映画に出ているとは思わなかったので、
そのお姿が出てきた時は、
「あ!」と声が出てしまったよ(馬鹿だ(笑))。


陣内なら、浮気したって、
私は許しちゃうわ(笑)。
「芸のためなら女房も泣かす」、だ。
あんな可愛い夫、
私ならもっと大切にするけどな。
勿体ない(笑)。


話が逸れた(笑)。


恋愛相談といえば、
黒沢と仲良しらしい、
鬼奴、大久保、光浦のお三方の会話も、
めっちゃ可笑しい。
もちろんセリフなんだろうけど、
素でもあんな風にお喋りしているような気がして、
これまた、ミーハー心が満たされる。


黒沢は、痩せたら絶対綺麗だと、
私の周囲の女性たちはみんな言う。
この映画の彼女は、
初めての恋をした女性を、
とっても可愛く演じていて、
なんとか成就してほしいなぁと願うばかり。


まぁ、結ばれてしまったら、
現在の本物の黒沢と結びつかなくなるので、
結果は想像が付くのだけれど。


評価 ★★★☆☆

「ひかりごけ」 [映画]

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〔1992年/日本〕


昭和18年。
真冬の北海道の荒海で船が座礁し、
4人の漁師がある洞窟に泳ぎ着いた。


激しい吹雪の酷寒の地で、
4人は焚火で何とか寒さをしのぐが、
食べ物は1つもない。


ついに4人のうちの1人・五助(杉本哲太)が死んだ。
すると船長(三國連太郎)は、
五助の屍肉を食らい、
西川(奥田瑛二)もそれに従った。
ただ、五助と親しい八蔵(田中邦衛)は、
どうしてもそれを口にできずにいた。


空腹に耐えきれず、
八蔵が死んだ。
船長と西川は、また八蔵の屍肉を食らった。


八蔵の屍肉が尽きた頃、
西川と争いになった船長は、
太い氷柱で彼を刺し殺してしまった。
彼は西川の屍肉を食らって命をつなぎ、
ついに生還するが・・・。





ホラー映画ではなく、
「生きる為」に人の屍肉を食べるという映画では、
私が一番最初に思い出すのは、
「生きてこそ」。


アンデスの雪山に飛行機が墜落し、
生き残った若者たちが、
死んだ仲間の肉を食べて、
命を長らえたという物語。


この「ひかりごけ」も「生きてこそ」も、
実話がベースという事だけれど、
やはりこういった物語は、
人の発想を超えているというか、
頭の中だけでは、中々描けない物語なのかもしれない。


映画を観ると、
「もしも自分だったら」と考える事が多い私だけれど、
これは簡単に答えの出せる問題ではないかなぁ。
ここまでの極限状態に追い込まれるって、
想像するにも限界があるくらい難しい。


とりあえず、今の私は、
「食べない」と思っているのだけれど、
でも、そのような状態になったら、
誰より先に食べたりして(笑)。
それは神様しか分からない。


映画自体は、そうめちゃくちゃ面白い、というほどではないように
感じられた。
狭い洞窟の中での4人劇で、
お話の広がりようがないし。
そして、後半は船長の裁判の場面となる。


この船長の罪って、なんだろう。
法律的には、西川殺害って事だけで、
屍肉を食べて、生き抜いた事は、
誰にも裁けない気がするのだけれど、
どうなんだろう。
私にはよく分からない。


裁判の途中で、
死んだ西川たちが出てきたりして、
なんだか訳が分からなくなってくる。


どうでもいいけど、
あの極限状態の中で、
奥田瑛二の髪型だけが、
常にブローしているかのように
最後まで整いすぎているのが可笑しかった。


評価 ★★★☆☆

「フォックスキャッチャー」 [映画]

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〔2014年/アメリカ〕


マーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は、
1984年のロス五輪でレスリングの金メダリストだったが、
生活は苦しく、練習環境にも恵まれていない。


マークと共に金メダルを獲得した兄のデイヴ(マーク・ラファロ)だけが、
頼りの存在だったが、
妻子を大切にするデイヴに寄り掛かってもいられない状況。


そんなマークに、財閥の御曹司・ジョン・デュポン(スティーブ・カレル)が
声を掛けてきた。
デュポンが運営するレスリングチーム「フォックスキャッチャー」に
参加しないか、と言われたのだ。


その申し出は、マークにとって夢のような話であり、
目指していた次のソウル五輪にも出場できる。
マークはデュポンの大邸宅に移り住み、
最新のトレーニングセンターで、練習をするようになる。


デュポンとも気が合い、
2ショットの写真がマスコミに載るなど、
最初は上手くいっていた2人だが、
少しづつ、関係にズレが生じ、
マークは精神的に追い詰められてゆく。


またデュポン自身に、おかしな言動が見られるようになり・・・。





アメリカで実際に起こった、
大財閥の御曹司による、
オリンピック金メダリスト殺害事件を映画化した作品。


そう古くはない、
このような事件を映画化できて、
しかもそれが色物扱いされず、
デュポン役のスティーブ・カレルは今年のアカデミー賞の、
主演男優賞の候補になるなんて、
アメリカの映画界は、やっぱり羨ましい。


この映画の面白い所は、
殺されたデイヴ・シュルツではなく、
弟のマーク・シュルツの目線で、
物語が進行してゆく所。


私はこの事件にそう詳しかったわけではないので、
お話の流れから、
殺されるのはてっきりマークの方だと思いながら観ていた。


今、人間関係で悩んでいる人は観ない方がいいかもと思うくらい、
途中からのマークが苦しそうで辛い。
自分に目をかけてくれていたデュポンと
少しずつ齟齬が生まれて、
しまいには顔を合わせるのも苦痛になる、あの感じ。


チャニング・テイタムが
そんなノイローゼ寸前の役を、
とても上手く演じていると思ったな。


彼の特徴でもある、あの凄いガタイが、
レスリングの選手役に説得力を与えていて、
全く違和感なく観ていられる。
なにせ、首の太さが顔の大きさと同じ(笑)。
そんな筋肉馬鹿(言葉が悪くてごめんなさい。あくまでも役柄です)な男に、
すっかりなりきっている様子がリアル。


勿論スティーブ・カレルも上手い。
デュポンが抱える、
何らかの心の病のような物を
微妙な見せ方で演じていて、
この先どうなるのか目が離せない。


デュポンは母親の事は嫌いではないようだけれど、
何か確執を抱えているようでもある。
その事は、アメリカ人なら、誰でも知っている事なのだろうか。
突然横入りのように、事件を知った日本人の私には、
映画を観ただけでは分からない事が沢山ある。


評価 ★★★★☆