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「薮の中の黒猫」 [映画]

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〔1968年/日本〕


戦乱に明け暮れる平安時代。
竹藪の中にある、一軒の貧しい家に
多数の落武者が乱入、
住んでいた母(乙羽信子)と、息子の嫁(太地喜和子)は凌辱された挙句、
火を放たれ、殺される。


焼け跡では、2人の遺体の周りを、
黒猫がうろついていた。


それからすぐ、
羅城門に女の物の怪が現れるようになる。
彼女は毎夜、侍を自分の家に誘っては、
体をまかせるフリをしながら、
喉を食いちぎるという行為を繰り返す。


そんな中、
百姓から侍になり、
手柄を立てた、薮の銀時(中村吉右衛門)が故郷に帰ってきた。
しかし、戻った家は焼け爛れ、
母と妻は行方が分からず呆然とする。


将軍・頼光(佐藤慶)は、
銀時に、物の怪を退治するよう命じ、
羅城門に出向くが、
出会った物の怪は、
母と妻にソックリで・・・。





何とも不条理で納得できん。


だって、可哀相すぎる。
ただ家に居ただけの母と嫁が、
いきなり男たちに襲われて、
焼き殺されるなんて、
そりゃあ、物の怪にでもなりたくなるってもんだ。


しかも彼女たちは、
自分の息子(嫁にとっては夫)の帰りを
心から待ちわびている。
息子は農作業中、いきなり拉致され、
侍にさせられたのよ。


つまり、この3人の運命は、
全てが他人の意志によって動いている。
自分で選んだんだから仕方あるまいという、
理屈は成り立たない。
100%の被害者。


母と嫁が物の怪になった理由は、
自分たちを不幸にした侍という存在が憎いからというもので、
特定の誰かを恨むというより、
侍という存在そのものに
成敗を与えるという意味合いだ。


その心情は、洋画でいえば、
チャールズ・ブロンソンの「狼よさらば」や、
ジョディ・フォスターの「ブレイブ ワン」にも似ていて、
殺人はもちろん悪い事だけれど、
殺す側に感情移入してしまう。


ラスト近く、銀時が、何度も大きな声で、
「お母さーん!」と叫ぶその姿に、
涙が出た。
最愛の母、
最愛の妻を失った彼の心情を思うとたまらない。


もっと勧善懲悪なお話だったら、
スッキリするんだろうけど。
まぁ、怪談だから、
そんなに真剣に考える事もないんだけどさ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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