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「紙の月」 [映画]

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〔2014年/日本〕


専業主婦から銀行へ働き始めた宮沢りえは、
パートから契約社員に昇格し、
気分が少しだけ盛り上がる。


営業担当の彼女は、顧客・石橋蓮司宅で、
石橋の孫で大学生の池松壮亮と出会い、
その後、偶然、再会した2回目の駅で、
そのままラブホテルに行き、一線を越える。


池松との情事に溺れる宮沢は、
池松にサラ金からの借金150万円がある事を知り、
石橋から預かった定期預金の金を、
書類や証書を操作し、池松に渡してしまう。


歯止めがきかなくなった彼女は、
顧客から預かった金を着服し、
池松との豪遊や、プレゼントに使いまくる。
ついには池松に部屋まで借りてやり、
その総額は、宮沢自身も分からないほどに膨らんでゆく・・・。





角田光代さんの原作を読んだ時、
こんな事が本当に可能なのかどうか、
銀行に勤務している友人に聞いてみた。


彼女曰く、
自分の働いている銀行は、
チェック機能が厳しいから、
ちょっと考えづらいけど、
他の銀行の事はどうなんだろう、との事。


時代設定は1994年。
今から20年前、
銀行は既にオンライン化していたと思うけど、
宮沢りえの横領のやり方は、
実にアナログで、
それが逆に、彼女の罪の発見を遅らせたようにも思える。


彼女は、顧客から預かった金を着服し、
代わりに、偽の証書を作成し、それを渡すのだけれど、
その方法ってのが、
証書の原紙のコピーから、
金額の印字まで、
全て自宅での手作業(笑)。


印章の偽造なんて、
トレースした後、
プリントゴッコみたいな機械で、ポン、って(笑)。
原作では、証書に金額を印字する際、
枠の中にうまく納めるようにするのに、
四苦八苦する様子が描かれていたけれど、
映画では、そこまでのシーンがなくて残念。
それに比べたら、
年賀状の印刷で郵便番号がズレるなんて、
可愛いものだわ(笑)。



なぜ宮沢さんが、池松君と不倫する気になったのかが、
私にはよく分からなかった。
2人が一線を越えるまでに、
会話らしい会話は殆どしていなくて、
それがいきなり、
宮沢さんの方から誘ったような形で描かれる、
その根拠がちょっと希薄。


やっぱり、夫との生活に不満があったのかな。
夫は悪い人間ではないけれど、
どこか無神経で、物事を深く考えないタイプ。
数日前、宮沢さんがペアの腕時計をプレゼントしたってのに、
海外出張のお土産にと、
もっと高価な腕時計を買ってきたりとか。


それじゃまるで、
「お前のセンスが悪いから、買い直してやった」みたいな風に
取られても仕方ない。
現に宮沢さんは、「なぜ腕時計・・・」と、
ポツンとつぶやく。


銀行のお局・小林聡美さんがいい。
彼女は仕事にとっても厳しくて、
上司からも、後輩からも煙たがられているという役を、
安定の演技で見せてくれる。


唯一の不安材料だった大島優子も、
思っていたほど悪くはなかった。
銀行に勤めてて、さらに不倫までしている今時の女の子の役を
それなりにこなしているように見えた。


出だしは、グレーのスーツを着て、
地味だった宮沢りえが、
着服した金と比例して、
どんどん綺麗になってゆくのが見もの。


まぁ、空しいのは、
こんな話だから仕方がない。
彼女のしている事は、
砂上の楼閣ではしゃいでいるようなものだもの。


評価 ★★★☆☆

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