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「讃歌」 [映画]

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〔1972年/日本〕


鵙屋春琴の生涯について書かれた本を持った老人(新藤兼人)は、
本を書いた老女・鴫沢てる(乙羽信子)を探し当て、
インタビューを試みる。


最初は渋っていたてるだが、
次第に口を開き、
その本は、春琴の弟子・佐助が話した事を
口述筆記したものだと語り始める・・・。


9歳で全盲になった春琴(渡辺督子)は、
丁稚の佐助(河原崎次郎)を介助人に、
我儘いっぱいの生活をしている。


佐助は、春琴の琴の稽古に付き添ううちに、
三味線を覚え、
春琴から稽古をつけてもらうようになるが、
その指導は常軌を逸するほど、厳しいものだった。


やがて春琴は、誰の子とも分からない子を
お腹に宿し・・・。





「春琴抄」の映画化作は6本あるらしいけれど、
そのうちの5本を
5日連続で観てしまった(笑)。


この作品は、
他の映画とは少し違った出だしで、
春琴と佐助亡き後、
2人について調べる老人と、
インタビューに答える老女という形で始まる。


とても面白い。
乙羽信子さん演じる老女は、
むかし春琴たちが暮らす家で女中をしていたという設定で、
彼女の客観的な言葉で2人の様子が語られる。


新藤兼人監督本人が、インタビュアを演じているのだけれど、
彼は、この物語に関する、誰もが思う疑問を、
乙羽さんに投げかけ、
それを乙羽さんが答えてくれるので、
大変に分かり易く、痒い所に手が届く感じ(笑)。


今まで私は、「春琴抄」の感想で、
佐助は、春琴の手水場の後始末までしていると書いたけれど、
正直、その姿までは想像が出来ずにいた。


この映画は、その様子を
ちゃんと見せてくれる。
なるほど、こうするわけか、と興味深く見る。


以前、山崎豊子さんの「華麗なる一族」で、
公家の娘は、風呂に入っても、
女中に全身を洗ってもらい、
自分では何もしない、と書かれた文章を読んだ事があるけれど、
感覚的には、それと変わりないんだろうと思う。


それから、他の映画では、
佐助との閨房の様子は描かれず、
子供は父親は誰か、明確には分からず仕舞いだったけれど、
本作では、2人の性交のシーンがあり、
考える必要もないようになっている。


5作を観てきて、
ずっと感じてきた疑問がある。
なぜ春琴は、「事件」後、
佐助にだけ、自分の顔を見せるのを、
あれほど拒んだんだろう。


風呂から、手水場まで、
普通なら、絶対他人に見せない所まで、
佐助に晒しているのだから、
何も今更、顔を隠す事でもあるまい、と、
私の感覚なら、思ってしまうのだけれど。
どちらが恥ずかしいかと言ったら、
私なら断然、手水場の方が恥ずかしいし。


それにしても、
これだけハマれて、
これだけ考えさせられるなんて、
なんて深いんだ、「春琴抄」(笑)。


これで、私の「春琴抄」週間は終った。
濃かった(笑)。
まだ観ていない、最後の1本は、
大好きな京マチ子さんが春琴を演じているという。
これだけが、ソフト化されていないらしい。
もう絶対、いつか名画座にかかってほしい。
その時は、会社を休んででも観にいくわ(笑)。


評価 ★★★★☆

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