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「天才スピヴェット」 [映画]

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〔2013年/フランス〕


モンタナ州で暮らす、
10歳のT・S・スピヴェット(カイル・キャトレット)は、
科学が大好きな天才少年。


お父さん(カラム・キース・レニー)は、昔気質のカウボーイ。
お母さん(ヘレナ・ボナム・カーター)は昆虫学者。
お姉ちゃん(ニーアム・ウィルソン)は、アイドルを夢見ている。


スピヴェットには双子の弟・レイトンがいたが、
ある事故のせいで死んでしまう。
彼は、レイトンを溺愛していたお父さんの為に、
自分が死んだ方が良かったのかも、と思うのだった。


そんなある日、スミソニアン博物館から、
スピヴェットの発明品が、
権威あるベアード賞を受賞したとの連絡が入る。


その授賞式に出掛けるため、
彼は家族に内緒で、家を出、
アメリカ大陸横断の旅に出る・・・。





大好きな映画「アメリ」のジャン・ピエール・ジュネ監督の、
もしかしたら初めての3D映画?
という事で楽しみにしていたけれど、
これは期待以上の良い出来だった。


まず冒頭から「3Dで観て良かった」、と心から思う映像が出てくる。
それは飛び出す絵本。
それが立体的に目の前で開かれるなんて、
それだけで胸のワクワクが止まらない。


そんな童話のような物語が、
可愛く、かつ、少しブラックに描かれてゆく。
監督で映画を語れるほど詳しくはないけれど、
ジュネ監督っぽいというのは、私にも分かる。


主人公の少年・スピヴェットが、
大陸横断に出発してから、
体験する様々な出来事が
たまらなく好き。


貨物列車に乗った彼は、
列車に積まれている、
キャンピングカーの中で寝泊まりする。
まるで自分のお部屋みたいに。


もし自分が子供だったら、
きっと本気でしてみたいと思うであろうシチュエーション。
列車に乗せられて走るお家!
想像するだけでウキウキしない?(笑)


家出してきた彼は、
時々、不審に思った警備員やお巡りさんに追いかけられるけど、
それがまた、結構ハラハラさせられて。
その度に、少年らしい機転やすばしっこさで切り抜ける様子も見もの。


それから、彼を取り巻く家族の問題も重要。


スピヴェットは、自分より死んだ双子の弟の方が、
父から愛されていたと、
勝手に思い込んでいるけれど、
もう絶対、そんな事はないのよ、と言ってあげたくなる。


実はスピヴェットは、
家族から深く愛されていたと分かるラスト。
本当に童話のような良い映画だった。


評価 ★★★★☆

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「ショート・ターム」 [映画]

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〔2014年/アメリカ〕


私生活や心に、
何らかの問題を抱えるティーンを
短期間保護する施設・「ショート・ターム」。


女性職員のグレイス(ブリー・ラーマン)は、
子供たちの気持ちに寄り添い、
明るく接する、
皆の姉のような存在。


グレイスは、同僚のメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と
同棲しているが、
ある日、妊娠している事に気付く。
医者からの、「妊娠は初めてか」との質問に、
彼女は答えた。
「2度目です」、と。


施設に、新しくジェイデン(ケイトリン・デヴァー)という少女が
入所してくる。
どこかひねくれた目をしたこの少女の中に、
深刻な問題を見い出したグレイスは、
父親からの虐待を察知する。


グレイスはそれを所長に伝えるが、
本人の口から訴えが無い限り、
施設はどうする事もできず、
ジェイデンは父親の家へ帰されてしまう。


ジェイデンの身に起こっている事は、
グレイスの過去にも繋がる事。
彼女はジェイデンの家に勝手に押し掛けるが・・・。





親からの、子供への虐待は、
昔よりは世間から認知されるようにはなってきたけれど、
それでも、この映画のような子供が出てくるってのは、
何故なんだろう。


私は専門家ではないし、
「ショート・ターム」のような施設で働いた事もないので、
月並みな事しか言えない。
別に自分を良い人間とも、優しい人間とも思ってはいない。
でも、これだけは言える。
親から辛い思いをさせられた子供に、
「あなたに罪はない、自分を責めないで」、と。


ここに出てくる子供たちは、
非力で、まだ自分で食べていけるだけの
生活力はない。
帰る場所は、結局親元だけ。
一体どうすればいいんだ、と、
八方塞な現状に、身悶えしたくなるような気持ち。


グレイスの父親は、
彼女が虐待を訴えた事で、
刑務所に入っているけれど、
それが近々出所するとの連絡を受ける。


激しく動揺し、不安定になる彼女を誰が責められよう。
世間にとって、父親は、
何でもない一人の男かもしれないが、
彼女にとっては、
猛獣を野に放たれたのと同じ。


余談だけど、
このような親を拒否したり、
その憎しみを口に出したりすると、
「親なんだから」と、知ったような事を言う、
お花畑のような人がいる。
なんだかなぁ、と思うわ。


決して暗い映画ではない。
出てくる人たちは、
みんな一所懸命だ。
本当は、こんな施設が必要なくなるような
世の中になるのが、
一番いいんだろうけど。


評価 ★★★★☆

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「無宿(やどなし)」 [映画]

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〔1974年/日本〕


同じ日に刑務所を出所した高倉健と勝新太郎。


勝は、恋人・藤間紫の所へ行き、
彼女に預けてあった地図を受け取る。
高倉は、兄貴分の恋人が働いている女郎屋へ行くが、
彼女は既に死んでいた。
同じ女郎屋で働く梶芽衣子から、
「あんな風に死にたくない」と泣かれ、
彼女を連れ出し、列車に乗る。


ある町に辿り着いた高倉と梶だったが、
祭りの人ごみに紛れて、
高倉は姿を消す。
途方にくれた彼女だったが、
偶然、勝に会い彼と行動を共にするようになる。


一方、高倉は、兄貴分を殺した相手を見つけ、
仇を討つが、
そのせいで命を狙われるようになる。


勝と梶は、山陰に行き、
地図をたよりに、海中にある宝を探し当てようとする。
そこへ高倉がやって来て、
浜辺での、奇妙な3人の生活が始まるが・・・。





昨日に引き続き、高倉健さん。
この映画は、勝新太郎さんとの共演という事で、
前から気になっていたのを、
高倉さんの訃報を機に、
観ようと決めた。


高倉さんと勝さんが同じスクリーンに納まるって、
もうそれだけで凄くて、
溜息が出てしまう。
他にお二人が共演した映画ってあるんだろうかと
調べてみたけれど、
これが最初で最後の1本らしく、
それを知ると、さらにお宝感が増す。


二人の対比が面白い。
長身で細身で寡黙な高倉さんと、
ずんぐりとして饒舌な勝さん。
高倉さんだけだったら、
シリアスな物語になっていただろうが、
勝さんのおかげで、
コミカルな味付けが加わって面白い。


これはヤクザ物というより、
お二人プラス梶芽衣子さんの、
海辺での、
短く儚い数日間がメインの映画だと思う。


宝探しをする男2人を、
浜辺で日傘を差しながら、
優雅に見守る梶さん。
宝を見つけたら、
勝さんは、「家を買いたい」、
高倉さんは、「海外に行きたい」と言うけれど、
梶さんは、「この時間が永遠に続いた方がいい」と言う。
それは観ている私も同じ気持ち。


高倉さんが海岸に来るまで、
勝さんは、梶さんを助手(?)のようにして、
宝物を探すんだけど、
梶さんの鈍臭い事ったら(笑)。


勝さんが海に潜っている間、
梶さんが、船上で色々操作するんだけど、
それが中々上手くできず、
勝さんは、「俺を殺す気か!?」って(笑)。


私が梶さんと同じ事をさせられたら、
きっと梶さん以上に鈍臭いはずで、
勝さんからめっちゃ怒られそう。
私には、宝探しなんて無理だわ(笑)。


この、
男2人、女1人の宝探しの物語は、
アラン・ドロン主演の名画、「冒険者たち」をベースにしているそうだ。
私はそちらは未見。
近いうちに観てみたい。


評価 ★★★☆☆

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「現代任侠史」 [映画]

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〔1973年/日本〕


飛行機のタラップから、着物姿で降りてくる高倉健。
彼は、元はヤクザであったが、
現在は足を洗い、寿司屋の主人に納まっている。


同じ頃、東京のホテルの会議室では、
東京と大阪の、主だったヤクザの若頭がズラリと並び、
協議していた。
大阪からの提案で、
縄張競争を廃止し、
連合会を結成するか否かの話し合いだ。


関東と関西が手を組めば、
いつか、関西に乗っ取られると読んだ松田組の郷えい冶は反対し、
系列の組も、それに倣う。


松田組が反対派にまわった事で、
ヤクザ同士の対立が激化し、
血なまぐさい事件が次々起こる。


一方、高倉健は、
ルポライター・梶芽衣子と恋仲となり、
結婚の日取りを決めるまでになるのだが・・・。





今月10日に亡くなられた高倉健さん。


ご存命中は、高倉さんの事を特別に意識した事は
なかったけれど、
高倉さんはもういないんだ・・・と思うと、
やはり淋しい。


高倉さんは、生涯205本の映画に出演されたという。
自分はそのうち、何本を観ているだろうと数えてみたら
たったの19本。
「何となく観た、観た気がする」というのが4本。


私は普段、映画の事を考える時、
沢山の作品が埋もれている事を思うと、
勿体なくて勿体なくて、
その辺を走り回りたくなってしまうのだけれど、
高倉さんの205本の出演作全てのタイトルを眺めていても、
その衝動が起こったのは同じ。


映画好きの端くれとして、
やはり何か観たい、高倉さんのお元気だった頃のお姿に接したいと思い、
どれにしようかと、検索した中から、
本作を選んだ。


何と言っても、DVDのジャケット写真が素晴らしい。
高倉さんご自身も、めっちゃカッコよく撮れているし、
飛行機のタラップを、日本刀を持って降りてくるなんて、
「キル・ビル」を同じ匂いの、トンデモ映画の予感がして、
ワクワクする。
別に高倉さんを軽んじているのではない。
これが私の最大の見送り方なんだ。


で、映画を観てみると、
ジャケット写真ほどには、トンデモ映画ではなかった。
高倉さんの持っている日本刀は、
戦死した彼のお父さんの持ち物を、
戦地から持ち帰ったという設定で、
機内では預けていた物を、出口で受け取ったようだ。


高倉さんと恋仲になる梶芽衣子さん。
彼女は、父の遺品を戦地まで引き取りに行った高倉さんを
取材してゆくうちに、相思相愛になる。
2人で夜店を歩く様子が可愛い。
高倉さんが綿菓子を食べたりして。


そうそう、梶さんがいるってのに、
高倉さんが夜店で、エロ雑誌を大量買いするシーンがある。
「なるべく激しいのを」とか言って(笑)。
梶さんは嫌がるけど、
高倉さんは、
「これは、寿司屋の店員・田中邦衛さんへのお土産だ」と言い訳。
他の男がしたら気持ち悪いと思われる行為も、
高倉さんがすると、カッコいいんだよなぁ。


本筋の、
ヤクザ的な物語は、ほぼ他人任せ(笑)。
高倉さんと関係のない所で話が進む。
高倉さんはどこまでも、寿司屋の親父(笑)。


高倉さんが、本気でヤクザ魂を炸裂させるのは、
最後の10分のみ。
そちらを期待した方には、
物足りない内容かもしれない。
私は、高倉さんと梶さんの恋愛が見られて満足だったけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ラスト・ターゲット」 [映画]

lasttarget.jpg
〔2010年/アメリカ〕


雪深いスウェーデンの山小屋で暮らす
暗殺者・ジョージ・クルーニーは、
自分の命を狙ってきた何者かを射殺する。


身の危険を感じた彼は、
組織の連絡係・ヨハン・レイセンの指示で
イタリアの美しい町・カステル・デル・モンテで
暮らす事になる。


クルーニーへの次の指令は、
減音器付き狙撃ライフルの作成。
大まかな部品は取り寄せたが、
それ以外は現地調達。
自動車修理工場から、小さな金属を貰い受け、
銃作りにいそしむ。


娼館に行ったクルーニーは、
娼婦・ヴィオランテ・プラシドを気に入り、
彼女以外は指名しないようになる。
プラシドも、クルーニーに何らかの思いを抱いているようだ。


プラシドと、外で会うようになった彼は、
稼業から足を洗い、
彼女との生活を夢見るようになる。
今度のライフル作成を最後の仕事にしたいと、
レイセンに伝えるが・・・。





ジョージ・クルーニーが
かっちょいい暗殺者、というのは分かるのだけれど、
暗殺のお仕事の場面は一つもない(笑)。


人を殺す場面はあるけれど、
それはあくまで、彼を狙ってきた相手に対してだけで、
ゴルゴ13のようなお話とは全く違う。


映画の中で彼が唯一した、
お仕事らしいお仕事は、ライフルを作成した事だけ。
これでは、暗殺者というより、
技術屋さんだわ(笑)。


まぁ、これは、現役バリバリの暗殺者でなく、
そろそろ人生の終わりについて考え出した
男の物語なのでしょうけれど。


クルーニーは職業柄、
相手を信用はせず、
常にピリピリしている。
それは娼婦・ヴィオランテ・プラシドに対しても同じ。


で、親しくなった彼女とピクニックに行った時も、
彼女に何かされるんじゃないかと、
一度は拳銃を彼女に向ける。
しっかし、一番の緊迫場面の舞台がピクニックて(笑)。


そもそも彼は、カステル・デル・モンテに行く前、
組織から、周囲の者とは口をきくな、付き合うなと、
厳命されているはず。
何で娼館なんかに行ったかなぁ。
淋しかったのか?(笑)


茶化してばかりだけれど、
雰囲気は悪くない。
深く考えなければ楽しめる。


それから忘れちゃいけないのが、
カステル・デル・モンテの町並み。
本当に美しい。
細い道が入り組んでいて、
歩けば、迷路に迷い込んだような気持ちになるだろうなぁと想像する。
世界には行ってみたい場所が無数にあるけど、
ここもその一つに加わった。
おそらく一度も行けずに終わるんだろうけど・・・。


評価 ★★★☆☆

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