「京化粧」 [映画]
〔1961年/日本〕
東京から祇園に遊びにきていた佐田啓二は、
芸妓・山本富士子が自分の部屋に飛び込んできた事に驚く。
彼女は、売れない画家の佐藤慶に貢いでいるのだが、
それがパトロンの田中に見つかってしまい、
逃げてきたのだ。
数日後、佐田は偶然山本と再会するが、
その美しさと可哀相な身の上話に心惹かれ、
数年後には必ず迎えに来るからと約束、
一夜を共にする。
それから佐田は、わずかではあるが山本に金を送り続けた。
しかし山本の母・浪花千栄子は、
彼女にもっと金を稼いで楽をさせろ、
お前は男運が悪いと愚痴ばかり。
そんな中、佐藤が交通事故で死に、
田中も病死。
一人身になった山本の世話をしたいと、
鉄問屋の主人から申し出がある。
浪花にせっつかれ、
その話を受けるしかなくなった山本。
そこへ、東京から佐田がやって来て・・・。
私は祇園のしきたりなどまるで
知らない人間だけれど、
この映画の佐田啓二さんの振る舞いは、
やっぱり無粋というものじゃないかなぁと、
素人ながらにも思う。
山本富士子さんが美しくて、
心惹かれるのは分かるけれども、
彼女は芸妓。
男はんを喜ばせる会話やその他諸々のテクニックは、
一般の女より長けておろう。
身の上話にしたって、
話半分どころか、話十分の一くらいに聞いていないと。
それに、芸妓を身請けしたいのなら、
毎月少しずつ金を送るなどという、
そんなローンみたいな事では無理でしょ(笑)。
数年後、ではなく、今、彼女をもらい受けるだけの
財力がなければ。
新しいパトロンができて、
身を隠した山本さんを、
佐田さんは必死で探し回る。
それはもう、ストーカーに近いような状態。
観ているこちらにしたら、
もう、察してよ~ってな気持ち(笑)。
山本さんも、佐田さんを愛してはいるし、
東京で奥さん生活がしたいのは、観ていて分かる。
でも、そう簡単にはいかないのよね。
彼女は、母親の浪花千栄子さんを
どうしても捨てる事ができない。
浪花さんは、山本さんを、
より金持ちのパトロンにつかせて、
自分が楽をしたいとそれしか考えていない。
そんな業突く張りの浪花さんを、
「猫と庄造と二人のをんな」に続いて、
またまた観てしまった(笑)。
山本さんに、金持ちから身請けの話があった時、
「田中はんも、佐藤慶も、
うまい具合に死んでくれはった」と
置屋の女将・清川虹子さんと会話する浪花さん。
不謹慎なセリフだけれど、
その2人の言い回しが可笑しくて、笑ってしまった。
いつも脇役だけど、
やっぱり凄い女優さんだと思う。
評価 ★★★☆☆