「誘惑」 [映画]
〔1948年/日本〕
女子医大に通う原節子は、
父の墓参りに行った際、
父の教え子で代議士の佐分利信と行き合わせる。
父を亡くし一人ぼっちになった原に佐分利は、
自分の家に下宿すれば、と言ってくれ、
原はその申し出を受ける。
佐分利の妻・杉村春子は、
肺を患い、鎌倉の療養所にいる為、
家事や子供たちの世話を原がするようになる。
子供たちも原に大変に懐いているようだ。
ある日、佐分利が出張先で過労で倒れたとの連絡が入り、
駆け付ける原。
幸い、症状は軽く、
その夜、ダンスホールに行った2人は、
踊っているうちに、自分の気持ちに気付く。
東京に帰り、
佐分利は自分の気持ちを原にぶつけるが、
そんな最中、突然杉村が帰宅し・・・。
原節子さんが、
妻子ある佐分利信への思いに苦しむ物語なんだけど、
冒頭からビックリ。
父の墓参りの帰り、
原さんと佐分利さんは終電車に乗れず、
変な旅館に泊まる。
空いている部屋が1つしかなく、
さらに仲居さんに、「生憎お布団が1つしかない」と言われるんだけど、
なんと2人は、
その1つの布団に入っちゃうのよ。
うーん、考えられん(笑)。
その後、佐分利さんのお家で暮らす事になった原さんは、
療養所にいる杉村春子さんのお見舞いに、
一緒に行くんだけど、
やっぱり杉村さんの演技は凄い。
原さんの溌剌とした様子をじっと見る杉村さんは、
「羨ましい」と小声で言う。
原さんの、
健康と、若さと、美しさへの嫉妬で、
心の中に嵐が吹き荒れているのが分かる。
その時、原さんがしているのは大縄跳び(笑)。
しかも、飛んでいるシーンが異様に長い。
足元の不安定な砂浜で
あんなに飛んだら疲れるよーってくらい、何度も何度も(笑)。
ちょっと変わった演出かも。
そして極めつけは、
佐分利さんに愛の告白をされて、
焦って部屋のドアの開けた所に立っている杉村さん。
これはホラー以上にホラーなシーンだった。
杉村さんの演技が鬼気迫っていて、
背筋がゾッとなるくらい怖くて。
全体には、原さんと佐分利さんに都合のいいように
話が展開してゆく。
どこかのサイトで、
「トンデモ映画」と書かれている方がおられたけど、
そう言いたくなる気持ちもちょっと分かる(笑)。
評価 ★★★☆☆