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「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」 [映画]

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〔2014年/フランス・アメリカ〕


ハリウッドの大スターという立場を捨て、
グレース・ケリー(ニコール・キッドマン)が
モナコ大公レーニエ三世(ティム・ロス)と結婚して5年。


2人の子供に恵まれてはいるが、
王室の空気に馴染めず、
孤立感を深めていた彼女の元に、
アルフレッド・ヒッチコック監督(ロジャー・アシュトン=グリフィス)が
やって来る。


グレースに、映画「マーニー」の脚本を手渡した監督は、
出演を依頼、
グレースの心は、自分の立場と、女優への未練の2つの間で逡巡する。


そんな中、モナコに大きな問題が起こる。
企業に税金をかけないモナコに対して、
フランスが課税を要求、
従わない場合は、モナコをフランス領にすると言うのだ。


レーニエの頭はその事でいっぱいになり、
グレースの気持ちを慮る余裕がない。
ますます孤立感を深めたグレースは、
結婚式のフィルムを見ながら涙ぐみ、
自分の進退を考えるまでになる。


さらに、絶対に極秘のはずだった、
「マーニー」への出演の話が、
どこからか漏れ、
新聞に書き立てられてしまう・・・。





ニコール・キッドマンが演じるグレース・ケリー。
かなり賛否が分かれているようだ。


この映画に関しては、
私はキッドマンが、
グレースに特別似ていなくても、
それはそれでいいと思った。


「ダイアナ」の時は、
ダイアナ妃に似てないナオミ・ワッツに
「なんか違う」と思ったものだけれど、
「ダイアナ」と本作の、意識の違いは何なのだろう。
あのグレース・ケリーに似せる事ができる人なんて、
そもそも誰もいないのだから、いいやという思いなのか、
単に好き嫌いの問題なのか。


本作の最大のテーマは、
モナコの危機なんだろうけど、
正直、私は、そこの所にそれほど興味はなかった。


それよりも、
ヒッチコック監督が、
グレースに「マーニー」の出演依頼をしていたという
映画の裏話の方が興味深くて、
胸をときめかせながら観てしまった。


「マーニー」をグレースが演じていたら、
どんな映画になっていたんだろう。
ティッピ・ヘドレンとは、
違う雰囲気の「マーニー」だっただろうと思うと、
結果的に出演を断ったその決断を
少し惜しいと感じてしまう。


もちろん、モナコの危機がなくても、
出演は難しかっただろうし、
出演していたら、離婚していたとも考えられる。
でも、そうしたら、
あの事故死は起こらなかったし・・・。
結局、全ては「人間万事塞翁が馬」という事なのね。


グレースの伝記本を読むと、
彼女の父は、
数人いる兄妹の中で、
なぜか彼女だけを嫌って、
そのせいで、彼女は、
父に認められたいという気持ちが、
異様に強かったと書かれている。


それが事実とするなら、嫌な話だ。
我が子を好き嫌いで区別するなんて、
その子の一生まで左右しかねない。


そういえば、この映画の中でも、
グレースがアメリカにいる母に電話で相談を持ち掛けても、
自分の事しか考えない母に疲れ、
話しの途中で受話器を置いてしまう場面が描かれていた。
千の言葉を尽くすより、
彼女と家族の関係が一目で分かるシーンだった。


評価 ★★★☆☆

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「猫と庄造と二人のをんな」 [映画]

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〔1956年/日本〕


庄造(森繁久彌)は、荒物屋を営む母・おりん(浪花千栄子)と、
妻・品子(山田五十鈴)と三人暮らしの男。


庄造はおりんに頭が上がらず、常に言いなり。
おりんと品子は折り合いが悪いが、
喧嘩の仲裁をする事もできず、
とうとう品子は家を追い出されてしまう。


おりんは、次の嫁として、福子(香川京子)を庄造にあてがう。
福子は若く、尻の軽い不良娘だが、
実家が金持ちで、たっぷりの持参金が魅力。
おりんはそれが目的なのだ。


庄造は、飼い猫リリーを、誰よりも愛しており、
目の中に入れても痛くないような可愛がりよう。
ところが、そのリリーを、
品子が欲しいと言ってきた。
リリーを盾に、
庄造と復縁しようという目論みだ。


当然、庄造は断るが、
リリーをめぐって、福子との喧嘩が絶えず、
ついに品子に譲る事になってしまう。


庄造を取り合う2人の女+母親+猫。
この結末は・・・。





森繁さんの魅力全開。
優柔不断で、
何があっても怒らずに、
それでいて、大の女好き。
あぁ、イメージぴったり(笑)。


毎日をのらりくらりと暮らしていて、
荒物屋の長男とはいえ、
商売は全て母親まかせ。
この母親がまた曲者で(笑)。
古い嫁を追い出して、
持参金目的で、新しい嫁・福子を迎えるんだけど、
福子が家事をしないもんだから、
まるで下女のように、彼女に仕える。
そんな生活、私だったら嫌だわ(笑)。


この母を演じる浪花千栄子さん、大好き。
古い邦画を観るようになって、
浪花さんの事を知ったのだけれど、
意識するようになると、
本当に、驚くくらい沢山の映画に出ている。
真っ当な役の時もあれば、
この映画のような、トンデモ婆さんの時もあって、
どんな役をしても、素晴らしくハマっている。


それから、驚いたのが香川京子さん。
こんな蓮っ葉な役は初めて観たわ。
香川さんの事はずっと、
清純派一筋だと思っていたから、
その演技力にはビックリ。
ワガママでヒステリーで、
庄造は振り回されっぱなし(笑)。


しかも彼女は、
3回も男と出奔した過去があるそうで、
そのうち1回は新聞に載ったという(笑)。
若い娘が家出しただけで新聞に載るって、
昔は呑気というか、なんというか。


関西弁っていいなぁと、
こういった作品を観るといつも思う。
しかも、メインの4人は全て、
関西出身の方で(香川さんも幼い頃、関西に住まわれていたらしい)、
つまり、真似ではない本物。
関東育ちの私が聞いても、
自然なセリフ回しが耳に心地いい。


原作は谷崎潤一郎。


評価 ★★★☆☆

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「まほろ駅前狂騒曲」 [映画]

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〔2014年/日本〕


東京郊外のまほろ市で便利屋を営む多田啓介(瑛太)と、
多田の家に転がり込んで以来3年、
助手を務める行天春彦(松田龍平)。


仕事の依頼は相変わらず雑多で多種多様。
特に、路線バスの間引き運転を疑う老人・岡(麿赤兒)からの、
運行チェックの仕事は本当に面倒臭い(笑)。


最近、駅前で無農薬野菜の販売ビラを配る
怪しげな「HHFA」という団体がいる。
ここの代表の小林(永瀬正敏)は、
ヤクザと手を組みたがっており、
組員・星(高良健吾)は多田に、
HHFAの実態調査を依頼してくる。


そんなある日、多田を大いに悩ませる依頼が来る。
行天の元妻の凪子(本上まなみ)が、
アメリカ出張の間の1か月間、娘・はるを預かってほしいと言うのだ。


はるは行天の娘に間違いはないが、
精子を提供しただけで、
凪子とは形だけの夫婦だった関係。
行天は、ある特異な生育歴から、
子供嫌いを自認し、
子供を虐待してしまうかもしれない自分を恐れているのだ。


多田は、行天にこの依頼の話が中々切り出せず、
一人悩む・・・。





いいコンビだなぁ、
このシリーズでの瑛太と松田龍平。


どちらがいいとか、そういった事ではなく、
どちらにも味があって、面白い。
一緒に仕事をしているし、互いの事は好きだけれど、
ある距離感はきちんと守られてる気がして、
観ていて安心できる。


松田龍平の、決して感情を露わにしない、
ボソボソとした感じが、
今回の物語のツボ。
彼の子供の頃の環境が、
今回明らかになるんだけど、
そうか、そうだったのかとフィクションながら、
少し驚く。


1作目の原作や映画に、
そんな事を仄めかす場面はあったっけ?と思う。
おそらくあったのだろうが、
細部をよく覚えていないのが残念。


私は専門家ではないので、
そう安易な事は言えないけれども、
子供時代の辛い出来事が、
その後の人生にどれだけ影響してくるか、
自分の体験も踏まえて、分かっているつもりだし、
だから行天の気持ちも分かる。
ただ、行天はちゃんと過去と決別できている。
辛かった過去の自分を客観的に振り返る
セリフもある。


行天は何も悪くない。
だから、子供を殴ってしまうかも、なんて心配はしないでほしい、
と思わず声を掛けたくなるような気持ち。


現に彼は、無理矢理はると2人きりにさせられると、
結構うまくやっている(笑)。
2人のやり取りは、微笑ましく可愛い。
そして、そんな時間を意識して作ってくれた
多田に感謝したくなる。


クライマックスは、ある人物が起こすバスジャックと、
その車内で起こった大変な出来事なんだけど、
わたし的に、それはないんじゃない?と思った(笑)。


ジャックする動機も弱いし、
それから、行天がバス内で大怪我を負ったというのに、
パトカーがあれだけいるのに、
救急車が1台もいないというのが本当に変。
「行天、死なないで」と本気で思っちゃったよ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「悪童日記」 [映画]

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〔2013年/ハンガリー〕


第二次大戦中のハンガリー。


双子の兄弟・(アンドラーシュ・ジェーマント、ラースロー・ジェーマント)は、
疎開するため、
田舎にある祖母の家に連れてこられた。


母と祖母は実の親子だが仲が悪く、
20年も音信不通。
祖母は双子たちを「メス犬の子」と呼び、
タダ飯は食わせないと、
薪割りなどの仕事でこき使う。


ある日、双子は、
森の中で死んだ脱走兵の武器を持ち去り、隠す。
また、なかなか迎えに来ない母を忘れる為、
心と体を鍛えようと決め、
互いの肉体を傷つけ合う。


脱走兵から持ち去った武器で、
ある人物を傷つけた双子は、
警察に捕まり、拷問を受けるが、
祖母の家の離れに住む、外国人将校に助けられる。


そんなある日、母が迎えにやって来た。
しかし、なぜか彼女は赤ん坊を抱いており、
「お前たちの妹だ」と言う。
双子は母を拒み、
祖母の家にいると宣言するが・・・。





戦争、ヨーロッパ、子供が主人公、とくると、
ユダヤ人の物語かと想像するけれど、
これは違う。


むしろ、この双子たちは、
ユダヤ人の強制連行の列を眺める立場で、
さらに、一緒に列を眺めていた若い女の、
ユダヤ人に対する振る舞いの
意地の悪さったらない。
戦争は人を狂気に変える。


そんな情勢の中、
双子たちは日々を過ごすわけだけれど、
彼らも、そして登場人物たちも名前は無く、
互いを呼び合う事はない。
そのせいなのか、
どんな残酷な場面も、どこか淡々として、
乾いている、といった印象。


双子の祖母を、
最初はなんて嫌な奴だろうと思ったけれど、
意外とそうでもない事が分かってくるし、
それに反して、母が本当に、
祖母が言う所の、「メス犬」だったショック。


戦争から帰った父は、
母の「メス犬」ぶりを、
自らのある行動で知るのだけれど、
それもショックな場面だった。
人は知らない方がいい事もある。


私の文章力ではこの映画の雰囲気を
描けないのがもどかしい。
実に様々なエピソードがあり、
ラストも衝撃的。


双子の少年たちが美しく、
映画の雰囲気にピッタリ。
原作もかなり衝撃的で、面白いらしく、
すぐに読んでみようと、
図書館に予約を入れた。


評価 ★★★☆☆

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「大佛開眼」 [映画]

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〔1952年/日本〕


天平十七年。


河原の砂地で大きな菩薩の絵を描く、楯戸ノ国人(長谷川一夫)という男。
その絵を踏んでしまった麻夜賣(京マチ子)と争いになるが、
2人はそれをきっかけに、愛し合うようになる・・・。


同じ頃、時の帝・聖武天皇は、平和な世の中を願い、
大仏の建立を宮廷に命じた。
責任者として国中ノ公麿呂(小沢栄)が任命されるが、
公麿呂は過去に一度、大仏建立に失敗しており、
不安を隠し切れない。
彼は、天才的な能力を持つ国人の存在を知り、
助手に迎え入れる。


大仏の制作が始まり、
国人は、持てる力の全てをそこに注ぎ込む。
しかし麻夜賣は、自分との時間を取れなくなった
国人の態度に苛立ち、
国人の才能に激しく嫉妬する新城ノ小楠にそそのかされ、
大仏の右手が落ちるような工作の
片棒を担いでしまう。


公麿呂を失脚させようとする橘の奈良麿呂は、
この失態を喜び、
公麿呂と国人を、責任者から外す事を決める。
失意のどん底に落ちた国人を見た麻夜賣は、
自分のした事を後悔し、
大勢の人の前で懺悔し、新城ノ小楠を告発する。


責任者に戻った公麿呂は、
建立を着々と進めてゆくが、
橘の奈良麿呂は、新城ノ小楠を密かに脱獄させ、
あらたな失敗工作を命じる・・・。





奈良の大仏様建立の、
計画から完成までを描いた物語。
古い時代のお話だけれど、
別に小難しい事はなく、
楽しめる内容。


とにかく登場人物たちの嫉妬心が凄い。
嫉妬で成り立つ物語と言ってもいいくらい。


特に麻夜賣の嫉妬は激しい。
彼女の性格は、直情的とでもいうのか、
後先考えずに行動するタイプらしい(笑)。
自分が淋しい時は、
他人の敷地に入ってでも、国人を探すし、
彼の描いた絵に泥を塗り付けたり、
やりたい放題(笑)。
観ているこちらにしたら、
そんな事をしたら、国人が困るよと言いたくなるけれど、
そういう性格なのだから仕方がない(笑)。


そして、京マチ子さんが、
そういう激しい女の役にピッタリで。
京さん以上に、この役にハマれる女優さんって
いるんだろうかってくらい。
好きだなぁ。


男の嫉妬も凄い。
新城ノ小楠は、どんなに頑張っても
国人と同じような作品が作れず、苛立つ。
それはもう、国人が天才すぎるだけで、
新城ノ小楠に才能が無いわけじゃない。
真似しようったって、できるもんじゃないというだけ。


あんな古い時代に、
大きな大仏を作るって、
どれだけ大変だったのかと、その苦労を思う。
今なら、コンピュータで設計してしまいそうだけど、
全ては手作業。
それでも、銅にに混ぜる鉛の量だとか、
重さに耐えられるような手の形だとかが、
ちゃんと研究されている。
本当に凄い事だと思う。


奈良の大仏様は、
中学の修学旅行以来、
行っていない。
これを観ると、直接この目で見たくなる。
特に国人が工夫したという手の形を、
確認したくなる。


評価 ★★★☆☆

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