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「小野寺の弟・小野寺の姉」 [映画]

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〔2014年/日本〕


40歳の小野寺より子(片桐はいり)と、
33歳の小野寺進(向井理)は、
仲の良い姉弟。


両親を早くに亡くした2人は、
ずっと一つ屋根の下で暮らしている。


しっかり者のより子は、
どこか頼りない進をさりげなくサポートし、
進もまた、より子を常に気にかけ、
幸せになってほしいと願っている。


ある日、小野寺家に、
郵便の誤配達があり、
2人して、正しい家に届けに行くと、
出てきたのは、
進が好みそうな可愛い絵本作家・岡野薫(山本美月)。


なんとか2人を結び付けたいと、
より子は奮闘するが、
前の失恋を忘れられない進は、
中々一歩が踏み出せない。


より子はより子で、
勤務先のメガネ店に営業にくる浅野(及川光博)に
激しく片思いしている。
ある日、浅野から食事に誘われて舞い上がり、
そそくさと出掛けてゆくが・・・。





めちゃくちゃ楽しみにしていた本作。


なぜなら、
まず、原作がとても好きで。
2人暮らしの姉と弟の、
ユルーい生活を描いた小説が、
何だか妙に心に残っていて、
映像化されるのなら観てみたいと、
ずっと思ってきたから。


もう1つは、
私は、片桐はいりさんが大好きなんだ。
2年前のレビューで、
キネカ大森に、「コミック雑誌なんかいらない!」を観に行ったら、
片桐さんが、もぎり嬢をしていて驚いた、と書いた。


その時の内容と重複してしまうけれど、
片桐さんは映画で観るよりずっと素敵で、
何より、「真っ当」という言葉がピッタリ合う方のように思えた。


それから、あの時は書かなかったけれど、
「一緒に写真を撮っていただいていいですか?」という
私のワガママなお願いにも
快く応じてくださり、
さらに、チビの私に合わせて、
膝を折り曲げるようにして並んで下さった事にも感動した。


後で知ったのだけれど、
片桐さんは映画好きが高じて、
お時間があると、映画館のお手伝いをされているのだそうだ。
本当に、他の館員さんと全く変わらない様子だったし、
必要があれば、お手洗いの掃除までしてしまいそうなくらい、
場に馴染んでおられた。
なんだかとてもカッコ良かった。


で、映画。


原作の雰囲気がよく出ている、と思ったら、
作者の西田征史さんが、
監督も、脚本も担当されているそうで、
なるほど、と思った次第。


劇場内は笑いがいっぱいで、
とても和やかな雰囲気。
そして悲しい場面になるとシーンとして、
皆さんが感情移入されているのが伝わってくる。


以前にも書いた事があるけど、
私には男の兄弟がいないせいか、
きょうだいの組み合わせで、一番好きなのが姉と弟。
向井君みたいな弟がいたら、と想像すると、
それだけでニコニコしてしまう(馬鹿だ(笑))。


決してハッピーエンドではないけれど、
観て、どこか幸せな気持ちになれる事、間違いない。


一つだけ、向井君演じる進に感じた事。


進は、前の恋人・好美(麻生久美子)から
「一緒に暮らしたい」と言われ、
「僕の家に引っ越してくればいい」と答えて、揉める。


それはないよ、進君。
好美にしたら、
誰の目も憚る事なく、進とイチャイチャしたいよね。


進は、「姉さんを1人にしたら可哀相だ」と思っているようだけれど、
それは違う気がして。
弟にせよ、我が子にせよ、
深く愛して面倒みていたとしても、
「いつか解放されたい」、「1人になりたい」と思っている人だって、
沢山いるはず。


より子が、「1人は絶対に嫌」とでも言っていない限り、
進が家を出る事に、
私は何の問題も感じないんだけど、違うのかなぁ。
1人暮らし=「可哀相」とか「淋しい」とかって、決め付けは良くない。


弟がそんな事で、
自分の人生を狭めているとしたら、
それこそ、より子は悲しいと思うんだけど。


評価 ★★★★☆

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「地球は女で回ってる」 [映画]

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〔1997年/アメリカ〕


私小説家として人気のハリー(ウディ・アレン)の所に、
別れた3番目の妻ジェーン(エイミー・アーヴィング)の
妹・ルーシー(ジュディ・デイヴィス)が
怒鳴り込んでくる。


ハリーとルーシーは以前、
ジェーンの目を盗んでは、肉体関係を持っており、
その事をハリーが小説にして出版したのだ。


その後、ハリーは、
母校の大学で行われる、
自分の表彰式に息子を連れて行きたいと思い、
息子を引き取って育てている
2番目の妻で、精神分析医のジョーン(カースティ・アレイ)に頼み込むが、
断られてしまう。


仕方なく、半ば誘拐のような形で息子を連れ出したハリーは、
親友のリチャードと娼婦のクッキーの4人で、
車で母校へ向かう。


ところが、車内でとんでもない出来事が起こり、
さらに、ハリーは誘拐容疑で、
クッキーは麻薬所持で、
それぞれ逮捕されてしまい・・・。





中学の時、深夜に放送されていた、
ウディ・アレン主演の映画、
「ボギー!俺も男だ」を観た時、
その面白さに笑い転げた。


ウディ・アレンという人はなんて面白いんだろうと、
その後も、テレビで放送された彼の映画を何本か観た。
「ボギー~」ほどには笑えなかったけれど、
それでも、とても面白くて、笑った。


で、この間、何年ぶりかで
「ボギー~」のビデオを観てみたのだけれど、
なぜだ?
全く笑えなかった。
何があんなに面白かったのかと不思議なくらいで、
悲しかったけれど、
でも、分かっていたような気もするし。


大人になる過程で、
アレンが映画の世界では少し変わった立ち位置にいる事を知り、
そして、
「日本人には、彼の映画は十分の一も理解できないだろう」
などという、どこかに書かれた文章を読んだ私は、
アレンの映画というだけで、
いつの間にか、どこか構えるようになってしまってるんだ。


中学生の頃の、「無」だった自分が羨ましい。
昔に戻りたいなんて、
これっぽっちも思った事はないけれど、
「ボギー~」を観て、お腹の底から笑えた感性だけは、
本気で取り戻したいと願う。


ただ、それとは逆に、
アレンの、「笑い」とは別のジャンル、
しっとりとした内容の映画は、
大人になった今、とても心に沁みる。
(「セプテンバー」や「私の中のもうひとりの私」、「インテリア」など)。
感性が鈍ったのではなく、
感動のポイントが変わってきたのかもしれないな。
(と思いたい(笑))


それから、2005年の「マッチポイント」(大傑作!)以降の
アレンの作品には、
なぜかあまり構えずに、楽しんで観られる。
舞台がヨーロッパに変わって、
こちらの気分も気楽になったのだろうか。


で、この映画。
いつものようなアレン節(笑)。
神経衰弱気味で、
常にグズグズ悩んでいて、
でも女にモテるというおっさんの役を、
アレンがいつも通りに演じている。


つまらなくはない。
時折、クスクスと笑ってしまうし、
特に、車の中でのハプニングには、
声をあげて笑ってしまった。
お腹を抱える、というほどではなかったけれども(笑)


評価 ★★★☆☆

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「京化粧」 [映画]

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〔1961年/日本〕


東京から祇園に遊びにきていた佐田啓二は、
芸妓・山本富士子が自分の部屋に飛び込んできた事に驚く。
彼女は、売れない画家の佐藤慶に貢いでいるのだが、
それがパトロンの田中に見つかってしまい、
逃げてきたのだ。


数日後、佐田は偶然山本と再会するが、
その美しさと可哀相な身の上話に心惹かれ、
数年後には必ず迎えに来るからと約束、
一夜を共にする。


それから佐田は、わずかではあるが山本に金を送り続けた。
しかし山本の母・浪花千栄子は、
彼女にもっと金を稼いで楽をさせろ、
お前は男運が悪いと愚痴ばかり。


そんな中、佐藤が交通事故で死に、
田中も病死。
一人身になった山本の世話をしたいと、
鉄問屋の主人から申し出がある。


浪花にせっつかれ、
その話を受けるしかなくなった山本。
そこへ、東京から佐田がやって来て・・・。





私は祇園のしきたりなどまるで
知らない人間だけれど、


この映画の佐田啓二さんの振る舞いは、
やっぱり無粋というものじゃないかなぁと、
素人ながらにも思う。


山本富士子さんが美しくて、
心惹かれるのは分かるけれども、
彼女は芸妓。
男はんを喜ばせる会話やその他諸々のテクニックは、
一般の女より長けておろう。
身の上話にしたって、
話半分どころか、話十分の一くらいに聞いていないと。


それに、芸妓を身請けしたいのなら、
毎月少しずつ金を送るなどという、
そんなローンみたいな事では無理でしょ(笑)。
数年後、ではなく、今、彼女をもらい受けるだけの
財力がなければ。


新しいパトロンができて、
身を隠した山本さんを、
佐田さんは必死で探し回る。
それはもう、ストーカーに近いような状態。
観ているこちらにしたら、
もう、察してよ~ってな気持ち(笑)。


山本さんも、佐田さんを愛してはいるし、
東京で奥さん生活がしたいのは、観ていて分かる。
でも、そう簡単にはいかないのよね。


彼女は、母親の浪花千栄子さんを
どうしても捨てる事ができない。
浪花さんは、山本さんを、
より金持ちのパトロンにつかせて、
自分が楽をしたいとそれしか考えていない。


そんな業突く張りの浪花さんを、
「猫と庄造と二人のをんな」に続いて、
またまた観てしまった(笑)。


山本さんに、金持ちから身請けの話があった時、
「田中はんも、佐藤慶も、
 うまい具合に死んでくれはった」と
置屋の女将・清川虹子さんと会話する浪花さん。
不謹慎なセリフだけれど、
その2人の言い回しが可笑しくて、笑ってしまった。
いつも脇役だけど、
やっぱり凄い女優さんだと思う。


評価 ★★★☆☆

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「アバウト・タイム 愛おしい時間について」 [映画]

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〔2013年/イギリス〕


イギリスの田舎町で、
両親・妹・伯父と暮らすドーナル・グリーソンは、
21歳の誕生日に、
父から驚愕の事実を知らされる。


その内容とは、一族の男たちは全員、
タイムトラベルの能力が備わっているというもので、
暗がりで両手を握りしめ、
行きたい時間を思い浮かべれば、
すぐにそこに行けると言う。
ただし、行けるのは過去のみで、
未来は無理だと。


以来、彼は、
タイムトラベルを繰り返しながら、
過去の小さなミスを修正するようになる。


弁護士になるべく、ロンドンで暮らすようになったグリーソンは、
ある場所で魅力的な女性・レイチェル・マクアダムスと出会う。
しかし、タイムトラベルで知人の危機を救ったせいで、
マクアダムスとは出会っていない事になってしまい、
思案に暮れる。


何とか彼女との再会を果たした彼は、
今度こそと、何度かミスを修正しながら、
やっと恋人同士になれたのだが・・・。





タイムトラベルの能力が備わった主人公、という、
一見、荒唐無稽な設定でありながら、
とても自然で、
涙が滲んでくる物語。


ドーナル・グリーソンの
真面目で誠実な感じが大変にいい。
彼は、自身の能力を、
決して金儲けに使ったりはしない。
とにかく、レイチェル・マクアダムス一筋。


それは、他の女からの誘惑される場面でも顕著で、
もうギリギリ、このまま進めば浮気確実って所でも、
相手を振り切って、マクアダムスの所へ帰る。
女にしたら、理想の相手だわ(笑)。


笑える場面も多く、
劇場内は、クスクスとした声が聞こえる。
私も何度か、声を出して笑っちゃった。
観た方なら分かるけれど、
グリーソンがマクアダムスの両親に会う場面なんか、最高。


これを観ていると、
過去をどんなに修正しても、
結局は、自分が得られるもの以上のものは得られないと分かるし、
それから、2つのものは得られないと分かる。


2つのものを得られないとするなら、
それを得る為には、努力するしかないわけで、
そこで、真面目なグリーソンのキャラが生きてくるというわけだ。


これって、一族の男性にだけ、
その能力が備わってるって設定だけど、
グリーソンの子供が女の子ばかりだとして、
で、孫が生まれる前にグリーソンが亡くなったとしたら、
どうなるの?
能力の事は知らされないままになってしまうのかなぁ。
娘に伝えてあればいいけど、
事故や突然死って事も有り得るし。
そうなったら、勿体ないな(笑)。


それから、もし私に過去に戻れる能力があったとしたら、
どのあたりに戻って、
どこを修正するかなぁと考えたけど、
私には戻りたいような過去はない、
というより、修正したい事だらけで、きりがない(笑)。
それに、本当に修正するなら、
私が生まれる前にまで遡らなければならない気がするし。
(確かユーミンもそんなような事を書いていたような)


私の隣に座っていた、
中学生らしき3人の女の子たちから、
「今まで観た映画の中で一番好き」という
声が聞こえてきた。


まだ若い、可愛い子たち、
そんな風に良い映画を観て、
いっぱい感動して、
その感動をずっと胸に留めておいてほしい、と、
思ってしまった出来事。


評価 ★★★★☆

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「色ぼけ欲ぼけ物語」 [映画]

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〔1963年/日本〕


ホステスの引き抜き業をする伴淳三郎、
そして、彼の戦友、
藤原釜足、石井均、大泉滉らは、
軍隊時代の上官・伊藤雄之助から、
「部隊長だった有島一郎が、
 戦地から時価3億円のダイヤを持ち帰り隠匿した。
 有島を探し出し、山分けしよう」と持ち掛けられる。


実は有島は既に死んでおり、
それは伊藤が考え出した詐欺であったが、
金が欲しい伴らは、
騙されているとも知らず、すぐ話に乗った。


伊藤は、「有島を探す元手が必要。株を買え」と言い、
伴らは、なけなしの金をはたいて、それを購入する。


ところが、ある日、伴は、
屋台のラーメン屋をする有島と再会する。
有島は死んではいなかったのだ。
さらに伴は、
高潔で人格者の有島が、
ダイヤの隠匿などするはずがない事を知り、
自分たちが騙されていた事に気付く。


警察が動き出した。
伴らが出資した金は戻るのか・・・。





すごいタイトルだわ(笑)。
(嫌いじゃないけど)
(むしろ好き(笑))
でも、「欲」の方はともかく、
「色」の方の場面は殆どない。


それに、いかにもふざけたタイトルに反して、
意外と深い人情物で、
結構グッとくる。


部隊長が戦地から持ち帰ったという、
3億円のダイヤモンド(M資金みたいなものか?)を
山分けするという話は
現代より昔の方が、
断然リアルな物語だったんだろうなぁと感じる。


なぜなら、
騙される人たちは全員が、
戦地で戦った元兵隊たちで、
戦中戦後の混乱を、
体で覚えている人たちばかり。
隠匿物資があっても不思議ではないという思いは、
誰もが持っていたのだろうと察する。


そんな話だから、
戦地での様子が回想シーンとして、
時折挟まれる。


ダイヤを持ち去ったという
部隊長の有島一郎は、
大変な人格者で、
とてもそんな事をする悪人とは思えない。
それは兵隊たちも、
よーく知っているはずなのに。


やっぱり金が絡むと、
そんな思い出さえ、消え去ってしまうのね。


もちろん、その後、
有島の素晴らしさを思い出した彼らは、
有島の為に一肌脱ぐという流れになるのは
誰にでも読めるところで、
安心して観ていられる。


戦友というのは、
戦争を知らない私などが想像する以上に
強い絆があるのかなぁと感じる事がある。


私の親類で、
実際に戦地で戦った経験のある男性が亡くなった時、
葬儀には沢山の戦友が来ていた。


毎日が、生きるか死ぬかの瀬戸際を共に過ごした仲間同士というのは、
やはり何か強い結び付きがあるのだろう。
そういえば、
「兵隊やくざ」の大宮と有田の絆も、
めっちゃ強かったものね。


評価 ★★★☆☆

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