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「一粒の麦」 [映画]

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〔1958年/日本〕


高度成長期。
福島駅は、中学を卒業して集団就職をする少年少女と、
彼らを見送る家族たちでごった返していた。
引率の教師・菅原謙二も、
婚約者・若尾文子に見送られ、列車に乗り込んだ。


翌朝、生徒たちは職安の職員に仕事場を振り分けられ、
散らばっていった。
自動車修理工場、ガラス工場、
蕎麦屋、病院の家政婦などなど、
行先は多種多様。


希望に胸を膨らませていた彼らだったが、
現実は甘くない。
給料や待遇が、約束と違う職場、
経営が上手くいっていない職場などで、
逃げ出したり、
仕事を変える生徒も出てくる。


菅原は若尾との挙式の晩、
職場を逃げ出した生徒の為に、
東京へ向かうハメになる。


菅原は、
そんな生徒たちの面倒をみる事に疑問を持ち、
来年の就職担当からは外してほしいと、
校長に願い出る・・・。





リアル「三丁目の夕日」。
「三丁目~」は1958年が舞台という事なので、
この映画の公開年と全く同じ。


こういう書き方をしては申し訳ないけれど、
「三丁目~」が作られた綺麗ごとの幻想なら、
こちらは大変にシビアで、
八方塞。
堀北真希のように大切に扱われる生徒はいないし、
堤真一のように男気溢れる経営者もいなければ、
薬師丸ひろ子のような優しいおかみさんもいない。


(「三丁目~」を貶めるとか、
そういった気持ちで書いているのではないです。
過ぎ去った昭和という時代を美しく描きたいという気持ちも分かるし、
あの映画は映画で大好きです)。


なんというか、この映画には、
結末という事がない。


集団就職した生徒たちが、
様々な困難を乗り越えて、
全員がハッピーな結末を迎えるなんて事は、
まず現実に有り得ない。


そして、翌年の福島駅もまた、
同じような生徒たちが故郷を旅立つだけ。


高度成長期というのは、
もっと世の中全体がバラ色に潤い、
求人過多の売り手市場なのだと、
私は一人勝手にそう思っていたけれど、
全然違ってた。


中小企業の経営は苦しいようだし、
経営者はイライラギスギスして、
その気持ちは集団就職者たちにぶつけられる。
待遇の悪い職場を辞めて、
次を探そうとしても、なかなか見つからず、
女の子の中には、怪しげな旅館の女中になってしまう子もいる。


若尾さん目当てで観たけれど、
出番はそう多くはなかった。


ただ、多くない出番の中で、
花嫁姿を見る事ができる。
とっても可愛い。


けれど、そんな幸せな場で、
酒を飲んで不機嫌な若尾さんの兄が最悪で。


この兄は、
若尾さんを菅原でなく、
別の男と結婚させたかったようで、
相当に荒れている。
なんでも、その別の男と若尾さんが結婚すれば、
何か自分にとって都合の良い事があるらしい。


で、花嫁の若尾さんは、
こやつに殴られる。
結婚式の夜に、妹を殴る兄って。
最悪。
しかも、このエピソード、
話の本筋とはまるで関係がなく、
なんで挟み込まれたのかは不明(笑)。


評価 ★★★☆☆

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