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「初春狸御殿」 [映画]

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〔1959年/日本〕


村の酒屋に可愛い女の子が酒を買いにきた。
酒屋の親父(左卜全)は大サービス。
けれど、女の子を見送ったあと、
彼女が払った金を見てビックリ。
なんと、親父は木の葉を握っていたのだ・・・。


そう、この女の子は狸の娘・お黒(若尾文子)。
飲んだくれの父親狸を支える、
健気な女の子。
そして彼女は現在、人間の薬売り・栗助(勝新太郎)に
片思い中。


一方、狸御殿では、
今日はきぬた姫(若尾文子・二役)の見合いの日。
でも姫は、見合いなんて古臭い事は大嫌い。
私は人間と結婚するんだと、御殿を飛び出して行方不明。


困り果てた家老は、
ひょんな事から御殿に入り込んだお黒が、
きぬた姫にソックリな事に目を付け、
身代わりに見合いの席へ。


すると、見合い相手の狸吉郎(市川雷蔵)は、
可憐なお黒に一目惚れ。
その後はもう、
何がなにやら、てんやわんやの大騒ぎ・・・。





何これ!
圧倒的な可愛さ。
雷蔵さんも、若尾さんも、勝さんも、
他の登場人物の皆さんも、
生き生きと楽しそうに演じておられる。


ストーリーは、有って無いようなもので(笑)、
映画の半分は、
雷蔵さんと若尾さんの踊りで占められているような印象。


「朱雀門」のレビューでも書いたけれど、
若尾さんはトークショーで、
この映画での若尾さんの日本舞踊を、
「まるでデンマーク踊りだ」と、
雷蔵さんからからかわれたと話されていた。


いやいや、若尾さん、
ちゃんと踊っていますよ(笑)。
雷蔵さんとの息もピッタリ。
そもそも、歌舞伎出身の雷蔵さんと
比べるのが間違ってる。
(若尾さんは自分の踊りに自信がなくて、
 この映画を観る事ができなかったそうなのだけれど、
 テレビで放映された時、初めて観て、
 そう悪くないと、ご自分で思われたそうだ)


私も日本舞踊の素養などまるで無い人間だけれど、
それでも、雷蔵さんの踊りにはウットリしてしまう。
なんというか、
フワッとした、とても優しい踊りで、
相手をリードするのも、とても上手い。
やっぱり彼は何でもできる人なのね。


これは時代劇ミュージカルというジャンルだそうで、
狸御殿の中の階段を踏むと、
ドレミファソラシドを音が鳴るなんて趣向も可愛い。


調べてみると、
この映画の公開日は、
昭和34年12月27日。
お正月映画だったと分かるけど、
こんなのんきで楽しい映画をお正月に観たら、
一年間、気持ち良く過ごせそうな気がするわ(笑)。


「狸御殿」シリーズとしては、
5作目なのだそうだ。
1作目は昭和14年に作られたというのだから、
驚いてしまう。
(フィルムは現存していないそうだ。残念)
映画の世界は奥が深い。


評価 ★★★☆☆

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